風天道人の詩歌、歴史を酒の肴に

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比歌句 その七 左

2018年03月05日 | 和歌

巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ思(しの)はな巨勢(せこ)の春野を

坂門人足(さかとのひとたり)

万葉集 巻一 ― 五四

 

『万葉集入門』というWEBサイトに以下のような歌の解説があります。

http://manyou.plabot.michikusa.jp/koseyamano-turatura.html

「この歌は坂門人足(さかとのひとたり)の作で、大宝元年(701年)の秋、持統天皇が文武天皇とともに紀伊国の「紀の牟婁(むろ)の湯」(白浜温泉)に行幸したとき、同行した坂門人足が詠んだ歌です。

 一見、単純に秋に訪れた巨勢山で、春に咲く椿を見てみたいものだと言っているようにも取れますが、この歌も土地誉めの要素が強く巨勢山を賛美することで土地の精霊の加護を受けて旅路の無事を祈る歌なのでしょう。」

  

巨勢山のつらつら椿つらつらに見つつ思(しの)はな巨勢(せこ)の春野を

この歌は、

<河のへのつらつら椿つらつらに見れども飽かず巨勢(せこ)の春野は>

の歌に唱和したもののように思えてならない。

 

巨勢山の艶やかな葉からこぼれるように椿が連なり咲いている春野の景色を見ながら、春日蔵首老(かすがのくらびとおゆ)さん、貴方が詠った当時を偲びましょう。

 

なお、『万葉集入門』のサイトでは、巨勢寺跡やつらつら椿の画像が見られます。