風天道人の詩歌、歴史を酒の肴に

短歌や俳句の鑑賞を楽しみ、歴史上のエピソード等を楽しみます。
比べて面白い 比べて響き合う 比べて新しい発見がある

山深み 大江嘉言(比歌句 22 右)

2018年04月09日 | 和歌

山深み落ちて積もれる紅葉葉(もみぢは)の乾(かは)ける上に時雨(しぐれ)降るなり  大江嘉言(おおえのよしとき)

この歌とは、『コレクション日本歌人選 能因』 高重久美 笠間書院 を読んでいる時に出逢った。

能因が歌の師、藤原長能(ながとう)に手本とすべき歌を尋ねたところ示された歌だという。

とても分かり易く情感溢れた歌だ。「山奥に紅葉の落葉が乾いて積もっている。」という情景がまずある。そして、時雨(秋の末から冬の初めごろに、降ったりやんだりする小雨。)が降ってくるという動きが歌われている。文字では、歌を詠んでいる人の姿は直接的には表現されていないが、「降るなり」で作者が直接その情景を見ていることが察せられる。

三十一文字をフルに活用し、静から動へと続く秋の美しさを描いた叙景歌だ。

秋の歌を何故、今?

それはあしたのお楽しみ。