風天道人の詩歌、歴史を酒の肴に

短歌や俳句の鑑賞を楽しみ、歴史上のエピソード等を楽しみます。
比べて面白い 比べて響き合う 比べて新しい発見がある

わが母の 釈超空(比歌句 26左)

2018年04月20日 | 和歌

わが母の白き歯見ゆれ―。我が哭けば、声うちあげて、笑ひたまふなり 釈超空(しゃく ちょうくう)

 

この歌だけでは、意味が判然としないかもしれない。この歌の前の一首は、

 

我が父の持てる杖して 打ちたゝくおとを 我が聞く―。骨響く音

 

今で言えば、家庭内暴力(ドメスティック・バイオレンス)だ。

子供を骨が響くまで杖で殴りつける父親。

そして、その暴力泣く子供を見て、白い歯が見えるまで大きく笑っている母親。

子供の心は荒むのだ。辛いのではない。悲しいのだ。

 

上記の歌は『倭をぐな』に載る一首。それ以前の歌集『海やまのあひだ』には、以下の一首が載っていた。

 

病む母の心 おろかになりぬらし。わが名を呼げり。幼名によび

 

幼い頃の呼び名で呼ぶことをどうして「おろか」になったと感じたのか、そのことが引っかかっていた。この頃ははっきりとは言い難かった告白を<わが母の>でしたのだ。

偉大な民俗学者(折口信夫)となった人の心の傷だ。