風天道人の詩歌、歴史を酒の肴に

短歌や俳句の鑑賞を楽しみ、歴史上のエピソード等を楽しみます。
比べて面白い 比べて響き合う 比べて新しい発見がある

見渡せば 藤原定家(比歌句 25左)

2018年04月18日 | 和歌

見渡せば花も紅葉もなかりけり 浦の苫屋の秋の夕暮 藤原定家(ふじわらのていか)

 

「花も咲いていない紅葉も終わってしまった入り海の海岸に建てられた粗末な小屋だけが見える秋の夕暮れだ。」と詠う。

さあ、この殺風景な景色に何を見るのか。それは、桜が見事に咲いていた俤であり、紅葉が色づいていた時の俤だ。殺風景を殺風景と見るのではなく、美しかった過去の俤をその景色に重ねているのだ。そして、それはうらぶれた貴族階級の華やかなりし頃の旧懐でもあろう。