人が何かを「極めたい」と言う事は何なのだろうか?「極める」とは極限の状態までつきつめる事だから、例えば、位を極める、頂上を極める、もっと言えば命を極める、と言う事もある。人類をここまで進化させた原動力の一つでもある。いずれにしても「楽」な事ではない。
「沼津アルプス全山縦走」等と言うのも「極める」事の一つだろう。一体、誰が最初に考えついたのか?余計な事を考えた物だ。ついこの間まで、「全山縦走」とは香貫山から大平山までを言ったのだが、今ではそれが大嵐山まで伸びてしまった。人の「極め心」は尽きないものだ。
この「全山縦走」は一般的に前泊し、早朝の出発が普通だが、今回は「日帰り」で敢行した。これも、「極める」部類の話かも知れない。沼津の駅に集合して、タクシーで登山口へ。車の通行量の多い幹線道路にその登山口はある。手短に歩き始める体勢を整えると8:27、最初の一歩。目指すは第一座「香貫山・193m」。この山域は全体が都市公園の様に整備され「市民の憩いの場」となっていて、頂上近くまで立派な舗装道路が通じている。30分程で頂上。素晴しい「指導標」が立っている。この道標に、作者のコースを愛する気持ちを感じない訳には行かない。ここは「全山」が見渡せる唯一の場所。今日は予報に反し、青空だったので「全山」がくっきり。すぐ下山に掛かり20分程で林道に下り、第二座目の「横山・182m」の登山口に向かう。9:37、八重坂峠の登山口から登り始める。暫くして「沼ア」名物のトラロープの滑り易い急登に。登っている時は長く感じる時間も、頂上まではほんの20分程度。横山峠まで下ってからの「徳倉山・256m」への登りもきつい。「クサリ」と称していても、実際はクサリのついた階段。それが、一直線に頂上辺りまで伸びているのが見える。コース上で一番の絶景ポイントの頂上から、今日は富士山が見えない。ちょっと、残念。携帯で「去年はこう見えた」と写真を見せる人も。わ~、綺麗、と携帯の画面に。そして、羽衣伝説で有名な三保の松原の美しい砂浜の曲線にうっとり。でも、長居は無用、先を急ぐ。香貫台分岐を通過して「フユノハナワラビ」が数本、その先に木肌の素敵な「鹿子の木」の群生、そして千金岩のある急坂を下る。ここも、うっとりする景色の一つ。淡島や伊豆の山並みがうっすらと浮かぶ。志下坂峠から5分で「大トカゲ場。 順調に来たので、ここでトカゲの様に日を浴び、海を見ながら短いお昼に。そして「志下山・214m」から馬込峠、「中将宮」へ。ここは、以前脇道だった所、ルートが変わりメインルートの一部になった。さて、その後がいよいよ、急登の本番。木の根っこをこれ程有難く感じる所は他にはないかも。そして、「小鷲頭山・330m」。大勢の人が景色を眺めている。そこから10分でルート上の最高峰「鷲頭山・392m」に。地元の人か、シートを広げて宴会の最中の人達も居て、賑やか。一休みして多比峠に下る。何時もの事ながら、水っぽく、滑り易い下り。峠を越えると「うばめがし」の純林。そして全員無事「肥満度測定木」を通過。このコースの素晴しさは、コースに変化があって飽きさせない事。ここからは、岩っぽい所が続き、変化がある。13:31、多比峠を通過して、一気に「大平山(おおべらやま)・356m」の登りに掛かる。ここまで、何度上り下りを繰り返しただろうか。頂上から先が「奥沼津アルプス」と呼ばれる山域に。昭文社の地図では今でも破線のエリア。暫く前までは極少数の人が歩いていたのだろう、が、今では立派な道が開かれている。頂上にカンバンが出ている「奥アルプス大平会」の人達の尽力に拠ったのかも知れない。13:51、いよいよ「極め」始める。が、いきなりの急降下。正しく、落ちる、と言った方が適当かも。それも、長い。雨の日じゃなくて良かった!下った先に7段のハシゴ。何も書いていない山口峠を通過、蛙岩の先に「展望台」の岩。確かに景色はいい。そこから5~6分で分岐に。直進するコースは「ベテラン・コース」だそうだ。勿論「ベテラン・コース」に、と言えば格好はいいが、私の見立てでは難易度は変わらない。途中、「新城」に下る分岐で一休みした後、14:33、いよいよ「大嵐山(おおぞれやま)・191m」に向かう。疲れが溜まってくる頃の登りはつらい。やっと頂上近くなると石の柵が見える。ここは、地元の人の「憩いの場」、散歩気分で登ってくる人がいる。この山は、地元の「日守」に因んで「日守山」とも呼ばれ親しまれ、三角点もある。実の所、コース上の三角点は「徳倉山」とここだけだ。ここからは箱根の山々が目の前に広がる。さて、極める為にはまだ先がある。ちょっと判りにくい分岐から下り始める。ここまで、読むだけで疲れるのだから、歩いたら・・・。「大嵐山」が最後の山、と思ったら大間違い、まだ「茶臼山・128m」がある。でも、先が見えれば力は出る。黙々と歩き、ピークを越え、下山口に16:27、これでぴったり8時間、累積の標高差は約1200m。疲労感と充実感で一杯になった。目出度し目出度し。