ツルノリヒロの生活と推理

アーティスト、ツルノリヒロの気ままな発信基地。

ソンソフィさんとのレコーディング

2019-05-18 12:30:39 | 最近

今年も早、上半期が過ぎようとしている。

その間に韓国公演が4回、にっぽん丸等のクルーズに2回、ベリーダンスとのコラボライブや細坪基佳さん、スリハンのコンサート、

そして韓国国楽歌手ソンソフィさんとのコラボレコーディングがあり、なかなかの慌ただしさだった。

 

ソンソフィさんはまだ23歳、幼い頃から国楽(韓国民謡)の世界で活躍されて来た歌手である。

とても美しい方で、前々回の冬季オリンピック、ソチパラリンピックの閉会式に次回開催国のプレゼンテーターとして登場し、独唱している。

Acoustic Caféとコラボレーションの話が来た時には、民謡? と戸惑いを感じたが、YouTubeで聴いてみるとその圧倒的な歌唱力に驚き、

さらには現代的な編成でのアプローチの映像もあり、僕らのファンであると言う報告も受け、それならば、と引き受けることにした。

 

彼女から送られて来た候補曲は4曲、いずれも民謡で、その中から2曲を選んで欲しいと言われたのだが、リズムもメロディも独特で、いきなり行き詰まった。

ともかくメロディーを譜面に起こそうと採譜を始めたのだが、一番ごとにメロディが変わったりするので採りにくい。

その訳は、決まったリズムパターンや音列の伴奏に乗り、感情の抑揚で、自由に基本となるメロディを変えて歌うのだろうと結論付け、とにかく細かく採譜することにした。

同じ曲なのに、ソンソフィさんとチョーヨンピルのメロディはまったく違っていたし、

実際にソフィさんとのレコーディング中にも、最後の部分はどちらの歌い方が良いだろう? と歌って聴かせてくれたメロディは、歌い回しがかなり違っていた。

 

(これはハンガンスタリョンと言う曲で、資料として送られて来た映像 https://youtu.be/GnS7RbqISZU )

 

たくさんの採譜した楽譜に囲まれ、アレンジ作業を開始。

ソフィさんからは、Acoustic Caféの具体的な曲名をあげ、あの曲のようにメロディとメロディの間に別なアプローチを持って来て繋げてゆくのも良いかもしれませんね、

と言うメールをもらう。

後から分かったのだが、彼女は民謡を勉強すると同時に、西洋音楽の勉強もされていたそうだ。

とても聡明なアーティストだと感じる。

 

そうだね、僕らが演奏するのだから、僕ららしいサウンドでやらないと・・・

 

ずっとピアノの前に座り、延々メロディを弾き続け、たくさんのコード進行をメモしてゆく。

途中ソンソフィさんとのやり取りの中で、メロディーがどうしても分からないところがあったのだが、

自身がアカペラで歌った録音と、キーボードで弾いた録音を送って来てくれて、その歌がまたうまかった。

アカペラなのにピッチもリズムも素晴らしい。

コラボレーションするのが楽しみに思えて来る。

 

普段レコーディングの時には、アレンジデモを作ることが多い。

もちろん本番の時のように制作費をかけることはできないから、打ち込みと言ってコンピューターでシンセサイザー等をコントロールし一人でデモを作るのだが、

今回はメンバーに集まってもらい、アレンジデモから本番のレコーディングの時のように制作をした。

 

二曲選んだ曲は事前にソフィさんに伝え、了解を得ている。

一曲は「ハンガンスタリョン(漢江節)」

もう一曲は「ハンオーベンニョン(およそ五百年と言う意味)」

 

ハンガンスタリョンの方は、漢江と言うカンウォン道を流れる河での舟遊びを歌った歌で、牧歌的雰囲気に慕わしい人を思う寂しさ、

そして世の中の全ての憂いを舟遊びしつつすべてを忘れたいと言う内容の曲で、

ハンオーベンニョンは、100年も生きることができない、人の短い人生に対するやるせなさ、 あっという間に過ぎてしまった青春に対しての悲しさとやるせなさ、

その表現として、愛する人と500年ぐらい、一緒に暮らしたい(生きて いきたい)という思いを歌った曲だ、と教えてもらう。

 

ハンガンスタリョンの編曲で、思い切りアコカフェらしいアレンジをしたら、まるで原曲と違ってしまったので、別アレンジとしてもう少し原曲の感じに近づけたバージョンも作り録音し、

2曲3パターンをソフィさんの元へと送った。

聴いてもらいフィードバックを受け手直しをしたいのだが、二日後には我々の方が韓国大邱でのコンサートの為訪韓しなければならず、帰国してすぐにベリーダンスとのコラボライブ、

その次の日からは、にっぽん丸での船上コンサートの為博多に向かわなければならない、そこから戻ると、ソフィさんとのレコーディング本番は4日後・・

なるべく早くフィードバックをもらいたいところだが、そううまくは行かないものだ、韓国に向かうその日の朝、返事を受け取った。

 

やはり本番と同じクオリティーでのデモレコーディングが功を奏したのだろう、とても好評価をいただいた。

驚いたのは、ハンガンスタリョンのアレンジで、思い切りアコカフェらしい編曲の方を気に入ってくれたこと。

ソフィさんからのメールには

「特に、ハンガンスタリョンは、編曲がとても素晴らしくて、とっても気に入っています。
送って頂いてから、ガイド音源で、ずっと気持ちよく練習させて頂いております」

とあり、嬉しく思う。

 

レコーディングは日本で行う事になっていて、最初はツルスタジオで録音するつもりだったのだが、僕のスタジオにはブースが無いので、どうしても全員一緒での一発録りとなる。

しかし今回は、後からの修正が出来るよう考え、ブースのあるスタジオで録音することにした。

2曲なのだから1日で十分録音出来るとは思ったが、ソフィさんの希望で2日かけることとなった。


アコカフェのレコーディングは、テンポに縛られたくないためクリック等は使わない。

だからリタルダンドやフェルマータ、アッチェレランドなど、自由にその時の感情でテンポを変化させることが出来る。

しかし、そのためには全員で同時に録音をしなければならないのだが、当日になり、ソフィさんの体調があまり良くないので、先にオケを録音しておいてもらえないか、と言う連絡が入った。

どうしてもそのオケでうまく行かなかった時には、改めて同時録音を、と言うことだった。

 

本当に大丈夫か? と思いながらオケを先に録り始める。

僕らとしても歌が有ると無いとでは、大違いだ。

普段、ツルスタでのレコーディングでも、オケを作る際には仮歌を歌ってもらう。

歌を聴くことによって、みんなも感情の抑揚が共有出来るからだ。

 

しかしここでも、デモレコーディングを生でやっていたことが功を奏した。

みんな曲の理解度が深くなっていて、歌抜きでも迷うこと無く演奏することが出来たのだ。

ソフィさんが来る前には2曲ともオケは録り終わり、待ちの状態に。

 

ソフィさんが登場した。

思っていたよりも背が高い。

まさに韓国美女だ。

 

早速オケを聴いてもらう。

先にもらっていたフィードバックで、幾つかの要望があったのだが、それを反映させた再デモ音源は作れなかったし、

遅れて来たため、オケ録音には立ち会えていないので、後から選べるよう幾つかのパターンを録音してあり、それを聴いてもらう。

すべてこちらの第一候補にソフィさんも賛同してもらえ、ほっとする。

 

歌の録音が始まった。

ハンオーベンニョンは四分音符60以下の遅い楽曲だ。

その上イントロから歌が始まるところ、間奏から戻るところ、には長いポーズがある。

歌と伴奏、同時に入るのだが、本来ならアイコンタクトで合わせるところが、先に伴奏は録音されてしまっている。

それをものともせず、見事に合わせて歌いきった。

レコーディングにも慣れているし、僕らはミキシングルームで、顔を見合わせ、すごいねえ! とつぶやくばかり。

 

結局歌い始めてから3時間ほどで2曲完成してしまった。

 

レコーディングの後は自由が丘の和食の店で食事。

翌日はスタジオに来なくて良くなったソフィさんは、帰る時間までオフが出来たと喜んでいた。

 

レコーディングの様子をマネージャーが撮影していて、それを短くまとめたものがアップされている。

https://www.youtube.com/watch?v=JMN0hO9w4us

先に流れるのがハンガンスタリョン、後からのがハンオーベンニョンだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント (2)
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