ツルノリヒロの生活と推理

アーティスト、ツルノリヒロの気ままな発信基地。

ドミンゴ・モーレスとの思い出

2022-06-06 01:20:01 | 音楽
昔の写真を引っ張り出しては整理をしている。
若い時から写真が好きで、ものすごい数になってしまっているので、整理と言っても終わりは見えそうもないのだが、
これはというものをPCに取り込む作業を、空いた時間を利用して数枚ずつの単位で行なっている。
で、この写真。
20代の時にドミンゴ・モーレスという、ブエノスアイレス生まれのバンドネオン奏者率いる[ブエノスアイレス5]の来日公演に
ゲストとして参加したときのもの。
彼のすごい演奏で、僕はたちまちバンドネオンフリークにされてしまう。
さらに、なぜか彼にとても気に入られ、ブエノスアイレスに来ないか、と誘われた。
まだ20代の僕は、悩む、というところまでも行けず、お断りをするのだが、「君ならこれだけ給料を払うよ」と金額まで提示されてのお誘いだった。
もう幾らだったか覚えてはいないが、通訳の方の話では、かなりの高給だ、と言うことだった。
ブエノスアイレス5との共演よりも、そのコンサートにいらしていた、以前より面識はあったのだが、世界的なアーティスト、
アルパ奏者のルシア塩満さんから、「都留さん!なんで弾いてるの!」
と終演後の楽屋に飛び込んで来て言われ、そこからとても懇意にさせていただくようになったことの方が記憶に残っている。
さて、この写真を見つけ、懐かしさから、ネットでドミンゴ・モーレスを検索してみた。
今の時代、こういう部分では本当にネット文化はありがたいと思う。
ドミンゴ・モーレス氏はそのあと間も無くして亡くなられたと、ルシアさんから聞いていたので、当時、ソロアルバムのレコードをいただいてはいたけれど、
CD化されたものがある事がわかり、取り寄せることにした。
届いた中の一枚、アルゼンチンで発売されている「ドミンゴ・モーレスへのオマージュ」には、収録曲の部分に『1986年自己のグループでの日本でのライヴ音源も』
とあったので、ああ、この時かなあ、と思いブックレットを開いてみた。
日本でのライブ録音は、ボーナストラックとして2曲、そしてそのうちの一曲、アルバムの最後の曲にはNorihiro Tsuru (Violinista japonés invitado)の文字が。
たった一度の共演、そしてその録音が、異国の地でCD化され、30数年ぶりに聴くことができる、思わぬプレゼントに感動すると同時に、ちゃんとクレジットをしてくれているプロデュースサイドや、レコード会社にも感動。
そして、全く忘れていたのだが、その録音曲がピアソラの「Adios Nonino」だったことにさらなる感慨を受ける。
我がAcoustic Caféの一番新しいアルバムの収録曲、そして、コンサートでも最後の曲として定番となっているのが、この「Adios Nonino」なのだから。
30数年前の、存在すら知らなかった音源は、とても音がよく、20代の僕は、本場の演奏家たちに混じり、緊張はしながらも、堂々とした演奏をしていた。
ふと、あの時誘いにのり、ブエノスアイレスに渡っていたら、自分の人生はどうなっていたのだろう、と考えた。
コメント (4)
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