とうとう神宮球場に来てしまったが、イヤな予感しかしない。行きの車中ではりゅーや氏と「中盤まで互角だけど、均衡を破られたらそこからズルズル…」とか「ヨーイドンで3~4点取られて、そこから少し点取るけどまた取り返されて…」なんて、後ろ向きの試合展開予想ばかりして、「最終的には2-7か3-8」というところで意見の一致を見た。今考えると失礼極まりないが、5回も決勝戦負けを経験していると、どうしても前向きな発想が浮かばないのである。
そんなワタシをさらに落ち込ませるアクシデントが襲う。チケットを買い、おつりを財布に戻そうとした時、100円玉が手からポロリとこぼれ落ちた。100円玉は地面をコロコロと転がり、すぐそばにあったコインロッカーの下の隙間に導かれるかのように消えていった。隙間を覗いてみたが、かなり奥の方まで転がってしまったようで、100円玉の姿は見えない。
「やっぱり来るべきではなかったのか…」
そう思いつつ、100円玉は諦めて、スタンドに足を運んだ。
ちょうど、帝京の練習中だった。みんな体が大きくて、顔つきも高校生とは思えない。見ただけで圧倒されてしまいそうな迫力だ。対する二松はというと、帝京の選手たちと比べるとどうしても小さいし、線も細く映る。「ああ、もうこうなったら、せめて一方的にやられる試合さえしてくれなければ良いから…」と、祈るような気持ちで試合が始まった。
1回表の二松の攻撃は、わずか5球、1分で3アウトになってしまった。いきなりイヤな流れであったが、二松も裏の守りはキッチリ3人で終わらせた。特に、帝京の3番・中道くんのファールフライを、1年生キャッチャーの今村くんがベンチに転落しながらもナイスキャッチしたのは大きかった。
中盤までは、帝京の清水くんと二松の大黒くんの緊迫した投手戦が続く。両者とも、驚くようなスピードはない代わりに、安定した制球力で坦々と試合を作っていく。守備でも両チームに再三のファインプレーが出て、エースを盛り立てた。
5回裏、帝京の攻撃。1死から5番・安竹くんのセンター前ヒットを二松のセンター・末松くんが捕球し損ねて大きく弾いてしまい、1死二塁。続く7番・笠井くんが左中間を抜いて、1点。とうとう均衡が破れた。しかし、三塁を狙った笠井くんを刺して2死。続く8番・小幡くんの三塁線へのゴロをサード・北本くんがダイビングキャッチ&大遠投でアウトにするなど、二松も懸命のプレーで帝京に流れを渡さぬべく粘る。
6回表、ここで1点でも入れておきたい二松だったが、0点。その裏、いよいよ帝京打線が牙をむく。1死から1番・鈴木くんがライトへ二塁打を放つと、2番・郡くんの四球を挟み、3番・中道くんがライトへ二塁打を放って2点目。ここで二松は2番手として1年生左腕の大江くんをマウンドに送るが、4番・浜田くんにもライトへ二塁打を打たれて3点目を失う。さらには5番・清水くんにも四球を与えてしまい、このあたりで、ワタシは
「ああ、りゅーや氏と予想してた通りの展開になってきた…。また今年もアカンのか…」
と、早くも諦めムードになっていた。ただ、後から考えるとラッキーだったのは、浜田くんが二塁打を打った際に、二塁走者の中道くんがタッチアップの体勢を取っており、打球が抜けてからスタートしたため、本塁まで還って来なかったことだった。実は、ワタシは試合中、これに全く気付いておらず、あとで録画していた中継を見返して「あっ!」と思った。ライトの秦くんが捕れるかどうか、判断に迷うきわどい当たりだったとは言え、これが後々響くとは…。
(続く)
そんなワタシをさらに落ち込ませるアクシデントが襲う。チケットを買い、おつりを財布に戻そうとした時、100円玉が手からポロリとこぼれ落ちた。100円玉は地面をコロコロと転がり、すぐそばにあったコインロッカーの下の隙間に導かれるかのように消えていった。隙間を覗いてみたが、かなり奥の方まで転がってしまったようで、100円玉の姿は見えない。
「やっぱり来るべきではなかったのか…」
そう思いつつ、100円玉は諦めて、スタンドに足を運んだ。
ちょうど、帝京の練習中だった。みんな体が大きくて、顔つきも高校生とは思えない。見ただけで圧倒されてしまいそうな迫力だ。対する二松はというと、帝京の選手たちと比べるとどうしても小さいし、線も細く映る。「ああ、もうこうなったら、せめて一方的にやられる試合さえしてくれなければ良いから…」と、祈るような気持ちで試合が始まった。
1回表の二松の攻撃は、わずか5球、1分で3アウトになってしまった。いきなりイヤな流れであったが、二松も裏の守りはキッチリ3人で終わらせた。特に、帝京の3番・中道くんのファールフライを、1年生キャッチャーの今村くんがベンチに転落しながらもナイスキャッチしたのは大きかった。
中盤までは、帝京の清水くんと二松の大黒くんの緊迫した投手戦が続く。両者とも、驚くようなスピードはない代わりに、安定した制球力で坦々と試合を作っていく。守備でも両チームに再三のファインプレーが出て、エースを盛り立てた。
5回裏、帝京の攻撃。1死から5番・安竹くんのセンター前ヒットを二松のセンター・末松くんが捕球し損ねて大きく弾いてしまい、1死二塁。続く7番・笠井くんが左中間を抜いて、1点。とうとう均衡が破れた。しかし、三塁を狙った笠井くんを刺して2死。続く8番・小幡くんの三塁線へのゴロをサード・北本くんがダイビングキャッチ&大遠投でアウトにするなど、二松も懸命のプレーで帝京に流れを渡さぬべく粘る。
6回表、ここで1点でも入れておきたい二松だったが、0点。その裏、いよいよ帝京打線が牙をむく。1死から1番・鈴木くんがライトへ二塁打を放つと、2番・郡くんの四球を挟み、3番・中道くんがライトへ二塁打を放って2点目。ここで二松は2番手として1年生左腕の大江くんをマウンドに送るが、4番・浜田くんにもライトへ二塁打を打たれて3点目を失う。さらには5番・清水くんにも四球を与えてしまい、このあたりで、ワタシは
「ああ、りゅーや氏と予想してた通りの展開になってきた…。また今年もアカンのか…」
と、早くも諦めムードになっていた。ただ、後から考えるとラッキーだったのは、浜田くんが二塁打を打った際に、二塁走者の中道くんがタッチアップの体勢を取っており、打球が抜けてからスタートしたため、本塁まで還って来なかったことだった。実は、ワタシは試合中、これに全く気付いておらず、あとで録画していた中継を見返して「あっ!」と思った。ライトの秦くんが捕れるかどうか、判断に迷うきわどい当たりだったとは言え、これが後々響くとは…。
(続く)