梅雨に入り気温・湿度が上がってきました。
あわせて漆の硬化も早くなり、油断していると下画像のように、
「ちぢみ」ます。また、硬化が早いため艶も上がってます。
漆は空気中の水分と反応して硬化するため、
漆の硬化が早い状態だと
空気と接している表面だけが早く硬化し、
空気に触れない下層の硬化が遅れます。
この硬化のタイムラグでしわになってしまいます。これが「ちぢみ」。
ちぢんでもきれいに研げば問題ないのですが、
研ぐのに気をつかいます。時間もかかり、気持ちよく作業が進みません。
これを解消するために、漆全体の硬化時間をのばして、
表面と下層の硬化時間の差を少なくします。
通常の化学塗料では硬化時間を延ばすために
硬化遅延剤を混ぜたりするのですが、
漆の場合、加熱します。
漆を硬化させるのはラッカーゼという酵素で、
これは加熱によって活性を失います。
理科の時間に学習する「デンプンと消化酵素」の実験と同じです。
漆の何パーセントかを取り出し加熱、戻すことによって
ラッカーゼを減らし、硬化時間を遅らせるわけです。
下画像のように、コンロで加熱することが多いです。
何パーセント取り出して焼くのか、加熱時間はどのくらいか、
あたりが難しいところで、昔はよく失敗しました。
漆は焼くと焼チョコレートのような独特なにおいがします。
今回は約20パーセントの漆を焼いて調整しました。
もう少し暑くなったらまた調整する予定です。