阪森郁代「ランボオ連れて風の中」昨夜の驚き 2013-04-25 06:43:46 | クンストカンマー(美術収集室)短歌 獣園に獣性うすき象のゐてけもののこゑに哭けばさびしき この歌集では「こゑ」も重要なキーワードだ。いつも作者はこゑによって現実世界を脱する。しかし、この獣園の象のこゑでは駄目なのだ。獣性が薄すぎるから。私の頭の中でさびしき象の哭きこゑか虚しく響く。
阪森郁代「ランボオ連れて風の中」昨夜の驚き 2013-04-24 05:08:23 | クンストカンマー(美術収集室)短歌 喚(おら)ぶこゑわれにおよびぬ禽獣の眼(まなこ)ばかりが今宵するどく この喚ぶこゑは作者の創造世界で聴こえる。創造は確かに作者が行ったがいつしかその創造世界の禽獣のほうが呼び掛けるのだ。そして作者が現れるのを眼をするどくして待っている。
阪森郁代「ランボオ連れて風の中」蝸牛咽喉に眠らせて 2013-04-23 04:42:01 | クンストカンマー(美術収集室)短歌 呼ぶこゑのなけれど昼を目覚むれば雲押し上ぐる雲の情熱 呼ぶこゑはないが呼ばれたような気配で目が覚める。その気配の主は雲。空のより高い場所に行こうとする雲。その情熱を感じる作者の感覚の敏感さ。
詩、かなしみと電車 2013-04-22 05:53:50 | 詩 誰に頼まれるわけでもなく ひっそりと気付かれないように 世界は回る 少し揺れた電車の席で僕は 誰に頼まれるわけでもなく あなたに降りかかった悲しみについて 考えている 電車は駅を通過していく 考えている あなたの悲しみが少しだけ 僕のものになる 喪失 やがて誰でも喪失 喪失が世界の前提にある 世界は少しでも喪失から逃れるために 誰に頼まれるわけでもなく 誰にも気付かれないように 今日も回る いずれ失うあなたが怖くて 怖くて怖くて仕方がなくて 今日も回る世界に
阪森郁代「ランボオ連れて風の中」野の異類 2013-04-21 06:01:20 | クンストカンマー(美術収集室)短歌 しらじらと夜は明けそめてけものらの泪は白く乾きゆきたり 最近は山にばかり登っているが単純に日が暮れて夜に近付くと恐怖を感じる。けものも人も闇を本能的に怖れるのだ。それと同様に太陽は安堵を生む。