コロコロが入っているマウスを掃除するのは、耳掃除に似ていますね。
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おばちゃんの車に乗りフェリー乗り場へ。道中、こんなことをやっている人がいました。

パラグライダーとサーフィンをドッキングさせたようなスポーツみたいです。
「あ、あの建物見てみんしゃい」
おばちゃんが指差したのは5階建てくらいのビルだ。
「あれはうっとこのビルたい」
おばちゃんの家は不動産屋だ。結構地元ではブイブイ言わしているのかもしれない。
「あ、知り合いの人けんね。おーい」
おばちゃんは車を運転しながら自転車のおばはんに手を振る。
「いま東京から来た人連れてるけん、また後でな~」
おばちゃんは顔も広いようだ。道すがら何人もの知り合いに遭遇した。田舎だからなのか、おばちゃんの人徳のなせる技なのだろうか。
「ちょっと家ばよってから行きましょうね。フェリーの時間を調べてくるから、ちょっと待っとき。ばってん」
そういうとおばちゃんは車を止めて、ドアを開けながらこう言った。
「ここがウチの家ばい。うちでは米屋もやっとるきに」
井上米穀店という看板が掲げられていた。車内のゴミ箱には井上米穀店と書かれた納品書が捨てられていた。このおばちゃんは井上さんなのだろうか。おばちゃんは、まだ僕の名前を知らない。名刺を渡そうか?否、僕が一流企業に勤めていないのがばれてしまう。考えているとおばちゃんが戻ってきた。
「うちにフェリーの時刻表なかったばい。粗忽モノやけん堪忍してな」
そう言いながらおばちゃんはビニール傘を差し出した。
「雨が降ってきたき。これ使いんしゃい」
おばちゃんのやさしさは北半球を駆け巡るでホンマ。この嘘吐きのオレに。高校生の時にウソ八千。社会人になってからはウソ八那由他というありがたくないあだ名を頂いていたオレに、どうしてこんなにもやさしくしてくれるのだろうか。
その後、おばちゃんはソフトバンクホークスの屋内練習場を案内してくれた。「中に入れてもらえないけど、建物だけでも見てみんしゃい」と言って車を走らせてくれた。
ハラハラと雨が降り出した頃、車はフェリー乗り場に到着した。おばちゃんはそこでも知り合いに遭遇。
「すんましぇーん。フェリーは何時に出発かね~。東京の人がフェリー乗るんとよ~」
「フェリーはあと10分で出発よ~。急ぎんしゃーい」
「んまぁ!それはいけん。はよ降りぃ。間に合わんかったら1時間またないかんけん!ほら急いだ急いだ」
僕はビニール傘を握り締め「ありがとう」を繰り返しながら小走りで掛けて行った。おばちゃんの顔はすぐに見えなくなった。結局、僕は井上さんに名前を告げられなかった。
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おばちゃんの車に乗りフェリー乗り場へ。道中、こんなことをやっている人がいました。
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パラグライダーとサーフィンをドッキングさせたようなスポーツみたいです。
「あ、あの建物見てみんしゃい」
おばちゃんが指差したのは5階建てくらいのビルだ。
「あれはうっとこのビルたい」
おばちゃんの家は不動産屋だ。結構地元ではブイブイ言わしているのかもしれない。
「あ、知り合いの人けんね。おーい」
おばちゃんは車を運転しながら自転車のおばはんに手を振る。
「いま東京から来た人連れてるけん、また後でな~」
おばちゃんは顔も広いようだ。道すがら何人もの知り合いに遭遇した。田舎だからなのか、おばちゃんの人徳のなせる技なのだろうか。
「ちょっと家ばよってから行きましょうね。フェリーの時間を調べてくるから、ちょっと待っとき。ばってん」
そういうとおばちゃんは車を止めて、ドアを開けながらこう言った。
「ここがウチの家ばい。うちでは米屋もやっとるきに」
井上米穀店という看板が掲げられていた。車内のゴミ箱には井上米穀店と書かれた納品書が捨てられていた。このおばちゃんは井上さんなのだろうか。おばちゃんは、まだ僕の名前を知らない。名刺を渡そうか?否、僕が一流企業に勤めていないのがばれてしまう。考えているとおばちゃんが戻ってきた。
「うちにフェリーの時刻表なかったばい。粗忽モノやけん堪忍してな」
そう言いながらおばちゃんはビニール傘を差し出した。
「雨が降ってきたき。これ使いんしゃい」
おばちゃんのやさしさは北半球を駆け巡るでホンマ。この嘘吐きのオレに。高校生の時にウソ八千。社会人になってからはウソ八那由他というありがたくないあだ名を頂いていたオレに、どうしてこんなにもやさしくしてくれるのだろうか。
その後、おばちゃんはソフトバンクホークスの屋内練習場を案内してくれた。「中に入れてもらえないけど、建物だけでも見てみんしゃい」と言って車を走らせてくれた。
ハラハラと雨が降り出した頃、車はフェリー乗り場に到着した。おばちゃんはそこでも知り合いに遭遇。
「すんましぇーん。フェリーは何時に出発かね~。東京の人がフェリー乗るんとよ~」
「フェリーはあと10分で出発よ~。急ぎんしゃーい」
「んまぁ!それはいけん。はよ降りぃ。間に合わんかったら1時間またないかんけん!ほら急いだ急いだ」
僕はビニール傘を握り締め「ありがとう」を繰り返しながら小走りで掛けて行った。おばちゃんの顔はすぐに見えなくなった。結局、僕は井上さんに名前を告げられなかった。