元ライターの小説家への道

僕もまだ本気を出していません。

告白を見た

2010年06月13日 18時25分40秒 | アレコレ鑑賞
「iPad 業者が本を安く電子化」

 ヨドバシカメラで持ってみたけど、ちょっと重いな~。

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 中島哲也監督の「告白」を見た。「嫌われ松子の一生」の監督さんね。邦画を映画館で見たのは何年ぶりだろうか。学生の頃、すでに邦画を映画館でお金を払って見る価値なしなんて思っていたので、10年以上は軽く見ていない。あ、新聞屋さんにもらった無料券で見た鉄道員ぽっぽや以来かも。そんな僕が邦画を見ようと思ったのは、好きな日本人の監督ベスト3に中島監督が入るからだ。

 そして中島監督は期待を裏切らなかった。大変面白い映画だった。ぜひもう一度見たいと思える作品。ストーリーは松たか子が演じる中学教師が、自分が担任するクラスの生徒ふたりに愛娘を殺されたことを知り、復讐をするためにある行動に出るというお話。復讐と書くとナイフで刺し殺すとかバイオレンスを想像しがちだが、この教師は精神的に二人を追い詰める作戦に出る。

 人によっては鑑賞後に嫌悪感を抱くかも知れないが、僕はすっきりとした。「下妻物語」や「嫌われ松子の一生」のようなタッチはあまり見られないが、やはりストーリーと映像のテンポが良いので、106分が一瞬で過ぎ去っていく。

以下、大変ネタバレ















































































































 松たか子が演じる森口悠子先生は、生徒への復讐にエイズ感染者の血液を牛乳に混ぜるという方法を使う。森口先生の旦那がエイズウイルスのキャリアで、その血液を学校で配る牛乳パックに混入するのだ。

 そしてもう一つの復讐。二人の生徒のうち、一人は母親を溺愛しているのだが両親の離婚により母親と離れて暮らしている。この生徒は工学に強く自分で爆弾を作成するほどの頭脳があるのだが、生徒は爆弾で全校集会に集まった全校生徒を爆破しようと計画。

 しかし計画に気がついた森口先生は、その爆弾を生徒の母親(大学の教授)の教授室に移してしまう。そんなことを知らない生徒は、爆弾を爆破。当然のことながら、学校では何も起きないが、大学では校舎を吹き飛ばすほどの大爆破が起こってしまう。これが森口先生の復讐。

 だが森口先生は爆弾を作った生徒に最後の告白をする。

「なーんてね」

 この告白が何を意味するのか。これは見た人によって変わる。劇中では大学の校舎と母親が爆破されているシーンが出てくるのだが、これは少年の妄想、想像という形で描かれているので、本当に爆破しているのか分からないのだ。

 見終わった後、僕は大学を本当に爆破したと思っていた。生徒は自分勝手な理由から別の殺人も犯している。そんな生徒への復讐は最愛の人を殺してしまうという酬いが必要だと思ったからだ。だけど見終わって少ししてからあるシーンを思い出した。

 生徒の飲んでいる牛乳にエイズ入り血液を混ぜようと、森口先生は夫が寝ている隙に採血を試みるのだが、当然、そんな企てはばれてしまう。バカな真似はよせと、抜いた血液を夫に捨てられてしまう。このシーンにより森口先生は牛乳に血液を混ぜたと言ったのはハッタリ(そもそもエイズウイルスが混じった牛乳を飲んでも感染することはほとんどないらしい)だと言うことが分かる。

 そして爆弾に関しても、中学校に仕掛けられているのを森口先生が見つけた時に、起爆しないように配線の一本をニッパーで切断しているシーンが出てきている。これにより大学は爆破されていないのじゃないだろうか。と僕は考える。

 これらが意味することは大変大きく。牛乳にエイズウイルスを混入していない。爆弾を大学に仕掛けていないとなると、森口先生は罪を犯していないのだ。なにかあったとしても大変軽微な罪。「生徒二人の牛乳にエイズウイルスを混ぜました」という嘘で、どちらの生徒にも見事に復讐を果たしている。

 もちろん実際の所は映画で描かれていないから分からない。一度は捨てられたけど、エイズウイルスの血液はもっていたと想像すればその通りだし、爆弾の配線は繋ぎなおしたと考えれば大学は木端微塵になっている。そこはまぁ映画を見た人のお好みの結末で良いかと思う。

 最後にこの映画で一番怖いなーと思ったシーン。森口先生のクラスは所謂学級崩壊状態。先生が学校を辞めますと言ったら歓声が起きるようなクラス。にも関わらず、数ヵ月後、女生徒のひとりが「森口先生が可哀想でしょう」と言った。むしろ先生のことをいじめていた位の生徒だったのに、いつの間にか先生をかばう側に回っている無知な狡猾さが怖かった。
コメント
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