中山道ひとり歩る記(旧中山道を歩く)

旧中山道に沿って忠実に歩いたつもりです。

・芭蕉の道を歩く
・旧日光街道を歩く

太平記の名場面(旧中山道を歩く 67)

2005年10月15日 22時49分00秒 | 3上州(群馬県)の.旧中山道を歩く(66~10
(八坂神社)



(新町宿2)
旧中山道は「見透し灯篭」を右に入ると、すぐに
八坂神社がある。
赤い鳥居に土蔵作りの社殿は、気をつけなければ
通り過ぎてしまいそうな小さな神社である。

今は大きなケヤキの木と、その脇に子供用の滑り台があり、
その滑り台に大きなトカゲが昇ろうとしているので、一瞬驚く。


(オオトカゲ)

先年、カンボジアに旅をして、初日にレストランの
屋外で夜食をとったが、見上げるとレストランの壁に、
横綱の太ももほどもあろうかと思われるほどの大トカゲが
二匹へばり付いていた。
たまたま、ボクが見上げたところにいたので、
ドキリとしたのを、思い出す。
カミさんは、背を向けていたので、知らないまま
舌鼓みを打っていた。

八坂神社のトカゲは、よく見ると作り物であるが、
それにしてもよく出来ている。

そのトカゲの後ろに、芭蕉の句碑がある。

・傘(からかさ)におしわけ見たる柳かな

昔は大きな柳の木と茶屋で知られたと言うが、
その昔を、芭蕉が僅か十七文字でよく表現している。

(芭蕉の句碑)

ここからしばらく中山道を行くと、右側に諏訪神社がある。
本殿の三方に太平記にある名場面-楠木正成・正行、新田義貞、児島高徳など、
南北朝時代の南朝方主要人物の有名な史実を彫刻にしてある。

(諏訪神社)

楠木正成・正行は
「桜井の別れ」場面が刻まれている。
太平記には、
正成が湊川へと死を決した悲壮な出陣をする。
父子の永遠の別れの場面を物語っている。
「今度の合戦、天下の安否と思う間、今生にて汝が顔を見んこと、
これを限りと思うなり。正成すでに討死すとき来なば、
天下は必ず将軍(足利尊氏)の代になりぬと心得べし。
然れといえども、いったん身命を助からんるに、
多年の忠烈を失いて隣人に出ること有るべからず。」とある。
元弘元年(1331)楠木正成は後醍醐天皇の命を受け、
倒幕の兵を挙げ、時の執権 北条氏の大軍と戦い、北条氏を倒した。
これを「建武の中興」という。
しかし間もなく、足利尊氏が背き、一度は楠木正成に破れ、
九州へ敗走するが、勢力を盛り返し京都へ進攻してきた。
延元元年(1336)正成は湊川に出陣し、足利軍の大軍と
戦ったが、ついに全滅した。
この時の父子の別れの図が彫られている。

(楠木正成・正行の菊水の別れの場面)

新田義貞は、
戦勝を祈願して竜神に刀をささげる場面が刻まれている。
義貞は、鎌倉攻めの際、北条軍の強固な守りにより、
鎌倉を攻めあぐんでいた。稲村ガ崎に至りて岩頭に立ち、
戦勝を竜神に祈り刀を捧げた。義貞は潮の引いたのを見て、
6万騎を率いて稲村ガ崎の岸壁沿いに鎌倉へ攻め込み、
頼朝以来150年間続いた鎌倉幕府を滅亡に追いやった。
この図は竜神に刀を捧げる義貞を彫っている。

(戦勝を祈願する新田義貞の図)

児島高徳は
太平記によれば、
「然るべき隙も無ければ、君の御座ある御宿の庭に
大なる桜木ありけるを、押し削りて大文字に、
一句の詩をぞ書付たる。

天莫空勾践 
時非無范蠡

と二行に書き記した」とある。

元弘の乱の時、南朝方の忠臣 児島高徳は、後醍醐天皇が
北条方に破れて隠岐の島に流される途中、その身を奪い返そうと
行列を追い、今の岡山県の院ノ庄で行在所(あんざいしょ)に
潜んだものの、近づくことが出来ず、庭の桜の木を削って

天莫空勾践 
時非無范蠡

の十文字を二行に書き記したという。

十文字は
『天 勾践(こうせん)を空(むな)しゅうする莫(なか)れ、
時 范蠡(はんれい)無きにしも非(あら)ず』と読み、

勾践(こうせん)は、中国の越の国王で、
呉の国王閘閭(こうりょ)を破ったが、
その息子夫差(ふさ)に敗れて降伏しました。
雌伏する勾践に仕え、呉王夫差を討ち取って
「会稽の恥」をそそぐことが出来たのは、
ひとえに忠臣 范蠡(はんれい)がいたからによる。
と漢の史書は彼の名とその忠節を伝えていた。

この中国の故事に児島高徳自身をなぞらえて、自分の気持ちを
後醍醐天皇に伝えようとした。兵隊には読めないし、
意味も通じないが、天皇はご理解されるのを期待して・・・
この木彫はその児島高徳が桜の木を刻み十文字を記入する
姿を刻んでいます。

(児島高徳が文字を記入する姿を刻む)

上州に入ってから、筆が止まってしまった。
それは、平家物語や太平記、そして慣れない一茶の「七番日記」などを
読んだからだ。ボクはどんな本を読むにしても、精読を心がけるから
時間がいくらあっても足りない。
勢い旧中山道を歩くのが疎かになっていく。

今度は筆が止まるのではなく、足が止まってしまう。
2005.4月に高崎に着いたのに、それ以降は、
高崎から一歩も進んでいない。すこし焦り気味である。
もたもたしていると冬が来てしまう。紅葉のうちに軽井沢を越えて、
下諏訪まで足を伸ばしたいと思っているが、山越えでもあるし、どうなることか。
すこしずつ、ゆったりと進めよう。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
滑り台とトカゲのとりあわせ?ちょっと怖い。 (salasala)
2005-10-24 11:35:51
滑り台とトカゲのとりあわせ?ちょっと怖い。
カンボジアのトカゲ、奥様は後で仰天?(^。^)
返信する
爬虫類はどうゆうわけか、カミさんは怖がりません。 (HIDE-SAN)
2005-10-27 16:45:38
爬虫類はどうゆうわけか、カミさんは怖がりません。
ニュージーランドでコアラやカンガルーの子供を
抱っこしたり、トカゲの長さ60cmくらいのを、
平気で抱っこしますが、
ボクは動物が苦手です。人間以外はどうも駄目です・・・
返信する

コメントを投稿