ここからは落語のネタですが、スマホでは読みにくいかもしれません。あしからず。
清八 さあ、きーやん、こっちおいで。
喜六 せーやん、腹へった。朝、藤井寺の観音さんお参りして、巡礼街道を南へ南へ、あれからなんにも食べてーへん。
清八 情けない声出すな。もうちょっと行ったら富田林や。南河内の大都市や。
喜六 えっ、こんな田舎に、そんなんあるんかいな?
清八 さあ、ここが富田林寺内町の入り口や。念西口というねん。
喜六 地蔵さんがあるで。
清八 町の北の入り口にあるんで北口地蔵。赤ちゃんの夜泣き・疳の虫にごりやくがあるいうな。
喜六 ほな拝んでいこ。
清八 おまえ一人もんやろ。
喜六 わい、たまに夜泣きするねん。
清八 子供かいな。
喜六 こんなとこに墓があるで?
清八 あほ 墓やないがな、道しるべや。
喜六 なんて、書いたーるねん? わい、字ー読めんがな。
清八 「左ふじいでら、右まきのおてら」と書いたある。
喜六 「まきのおてら」てなんや。
清八 和泉にある槙尾山施福寺や。藤井寺が、観音巡礼の第三番札所で、施福寺は第四番の札所や。
喜六 よう知ってるなあ。
清八 今、持ってる『富田林名所案内』というのに書いたーる。
喜六 なんて書いてあるねん?
清八 ええか、富田林は六筋七町とよばれていて、六筋とは南北方向の通りのことで、東筋、亀ヶ坂筋、城之門筋、富筋、市場筋、西筋の六つの通りをいう。七町とは、北から順に壱里山町、富山 町、北会所町、南会所町、堺町、御坊町、林町というなーりー。
喜六 あなかしこ、あなかしこ。
清八 『御文書』やないがな。さあ、この前のまっすぐな道を行って町中に入ろ。・・・今歩いてるのが城之門筋や。
喜六 城之門? 城みたい無いがな。
清八 後でわかるから黙って着いてこい。
喜六 わー! 大きい家がぎょうさんあるなあ。みな刑務所か?
清八 なんでやねん?
喜六 二階に、ごっつい格子の牢屋の窓があるがな。
清八 あほ、あれは牢屋の窓とちがう。虫籠窓(むしこまど)いうて、煙抜き、風通しのええようにする窓やがな。
喜六 二階の壁が突き抜けてるで?
清八 あれは「うだつ」いうて、隣が火事になったときに火の粉をよけるために作ったるねん。
喜六 ええなあ。うちの長屋にもつけよか。
清八 あんだら! うちの長屋みたい燃えても、持ち出すもんがないがな。ここらは違う。持ち出すもんがようさんあるがな。ようさん持ったはるさかいに、うだつをあげることができる。わしらは、「うだつが上がらん」ということや。
喜六 ははーん、そういうことかいな。それも御文書に書いたーる。
清八 ちゃういうねん!
喜六 しかし、ここはやっぱし刑務所ちゃうか?
清八 なんでやねん?
喜六 塀の上に、とがった竹や木をいっぱい並べて逃げられんようにしてるがな。
清八 あれは「忍び返し」いうて、盗人が入らんようにしてるねん。軒下にも竹で編んだ柵が置いたるやろ。
喜六 金持ちというのはじゃーくさいことすんねんなあ・・・、わしら「うだつが上がらん」でよかったな。
清八 まあまあ、そない思てるほうが幸せや。
わあわあと言うております。「地内町巡り」前半でございます。続きは後編へ!
【補筆】
※地図は富田林市商工課パンフレツトを加工。
※『御文書』浄土真宗の第八世蓮如上人が、浄土真宗の教えを一般門徒のために、わかりやすく書き示したものです。各文章ともに「あなかしこあなかしこ」で終わります。
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