俺の父は、いつも言っていた。
「俺が支那のチンタオやハルピンで、
従軍していたころ、
夜になると、ラジオから、野坂参三の声が聞こえてきたんだ。
『日本軍よ、戦争なんか、止めなさい』ってな」
こうも言っていた。
「戦争が終わったら、
野坂参三は、凱旋将軍のように、復員してきたんだ」
俺が青年のころは、
野坂参三と言えば、
日本共産党のシンボルであり、
東京の参議院地方区の常連であった。
ところが、
野坂参三はその後、日本共産党のトップ「議長」にまでなりながら、
除名されてしまう。
ソ連のスパイ容疑ということだ。
俺は笑った。
なぜなら「優秀な党員ほど
二重スパイをしないと生きていけない」
まして戦前のソ連は、
狂ったスターリンが牛耳っていた。
海千山千の男でないと、
すぐに銃殺されていただろう。
実際、戦前のソ連で、日本共産党党員が、
10名以上、虐殺されている。
その中に、山本懸蔵がいたが、
彼は野坂の密告で殺された・・・という。
でもな、戦前って、スターリン自体が狂っていたから、
野坂も必死だったんだろうな。
その後の調査でも、
山本も、多くの党員を密告していたし、
また野坂を密告する準備を進めていた・・・というから、
わけがわからん。
要するに、生きるためには、
相手を密告することで、
キチガイ男スターリンの信頼を得ようとしたんだろうな。
そしてもうひとつ、
山本と野坂の間に、
権力闘争・・・というか、
そもそも相性の悪さもあったんだろう。
理論の前に、「アイツは、心情的に気に入らん」ってことだろう。
俺、『16の墓標』を読んだから、
その辺の心の動きはすごくわかる。
虐殺された14人の連合赤軍兵士は、
男なら「仕事を一度なまけた」とか「トップと考え方が違う」とか「優秀すぎる」・・・
女性なら、「パンタロンを履いていた」とか「指輪をしていた」とかで、
厳しくリンチされ殺されている。
支那の文化大革命では、
革命の功労者たちが、
どんどん殺された。
これも、権力闘争だ。
北朝鮮でも、
張沢民が殺された。
これも、権力闘争だ。
共産党って、何と怖いんだろう。
自民党なら、決してありえないことだ。
自民党でも除名はあるが、
相手を殺したりはしない。
俺は部外者なので、
内情をよく知らないし、
知りたくもないが、
野坂参三は、日本共産党の最大の功労者・・・
しかも、命を張って戦前戦中戦後を戦っていた・・・
と思う。
また野坂は、戦後の天皇制について、
「天皇制は必要」と助命工作をしていた。
そもそも唯物論・・・というのが、
気が狂っていると思う。
霊界の存在は、
明確に証明されているではないか!