石破茂首相が、2024年10月4日午後、国会で所信表明演説を行なった。スカスカな演説だったと聞いていた。私も読んでみた。確かにスカスカのペラペラだ。私は安倍首相以来所信表明演説を読んできたが、石破首相の演説は、普通の日本語であり、概してわかりやすい。ところがスカスカのペラペラだ。何故だろう。彼は、国会を10月9日に解散し、総選挙に出るつもりだから、争点を隠しておきたいのだ。また、党内の権力闘争を背後に押し隠しておくことが得策と考えているからだろう。ずるい奴だ。
その上で、少々検討してみよう。章立ては以下の通り。Ⅰはじめに、Ⅱルールを守る、Ⅲ日本を守る、Ⅳ国民を守る、Ⅴ地方を守る、Ⅵ若者・女性の機会を守る、Ⅶ終わりに。
岸田政権が降板したのは、「裏金」疑惑が何も解明されず、立ち往生したからだ。多数の総裁候補を乱立させ、どさくさに紛れて、収束を図ろうとした。しかし国民の監視の目は政権が思うように低下していない。そこで、居直り選挙で多数を取れば、いいだろうという安直な姿が見えてくる。
また会期が1週間ならば、あっという間に終わるから、争点を隠しておけば、好都合なのだ。冒頭に「深い反省」とか「ルールを守る」とか述べているが、反省していれば、何を如何に反省しているのかを語るべきだ。ルールを守るならば、裏金議員の立候補の公認を全て取り下げるべきだろう。言行不一致ではお話にならない。
そして、「Ⅲ日本を守る」のは、「日本国家」を守ることだろう。次に「国民を守る」、「地方を守る」、「若者・女性の機会を守る」と並ぶのは、おかしくないか。「日本を守る」に「外交・安全保障」、「少子化対策」、「経済・財政」と並べられている。文字通り日本国家を守るための日米同盟、以下なのだ。
そして沖縄に関することが、この「日本を守る」のひとコマとして打ち出されていることに、私は強烈な違和感を抱く。曰く「先の大戦中、沖縄では、国内最大の地上戦が行なわれ、多くの県民が犠牲になられたこと、戦後27年間、米国の施政下に置かれたことなどを、私は決して忘れません。基地負担の軽減にも引き続き取り組みます。在日米軍の円滑な駐留のためには、地元を含む国民のご理解とご協力を得ることが不可欠です(後略)」。何じゃらホイ! 「犠牲」とは国家のための「犠牲」であり、「皇国の存続」のために沖縄の人々は命まで差し出されたのだ。
石破は、全く当時と同じ思想に立って、沖縄を観ているようだ。「皇国」が、戦後、日米同盟ならぬ「米日同盟」に置き換わっただけだ。沖縄の人々が、自然や文化がどうなろうが、彼らには関係ない。だから「普天間飛行場の1日も早い全面返還を目指し、辺野古への移設工事を進めます」としれっと言うのだ。米軍基地の存続・強化、自衛隊基地の建設は当たり前であり、沖縄が戦場になろうが関係ないようだ。
よって、「日米地位協定」の改訂が消えたのも、さもありなんだ。辺野古が唯一ではなく、米国が唯一だからだ。話は単純明快だ。
話は一事が万事こうだ。2011年3月11日の東日本大震災と福島原発核爆発(事故)についても(Ⅳ)「国民を守る」の末尾だし、今年正月に起きた能登半島大震災も数行のみで、先日の能登への豪雨(ダブル)被害についてもちらっとふれただけだ。当然補正予算を組み、これまでの対策の遅れを検証しなど、やるべきことが山のようにあるはずなのに…。
石破首相は、「納得と共感の政治」とか「全ての国民の皆様に笑顔を取り戻したい」などと言っているが、私たち有権者を無視して、勝手に「笑顔」をどう描いているのだろうか? しっかりと問いただしたいものだ。沖縄の闘いも大きな飛躍が求められている。