2019-0615-man3203
万葉短歌3203 みさご居る3015
みさご居る 洲に居る舟の 漕ぎ出なば
うら恋しけむ 後は相寝とも ○
3015 万葉短歌3203 ShuF785 2019-0615-man3203
□みさごゐる すにゐるふねの こぎでなば
うらこひしけむ のちはあひぬとも
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第24首。女。
【訓注】みさご(三沙呉)[03-0362美沙、-0363美沙、11-2739水沙児、など]。洲に居る舟(すにゐるふね=渚尓居舟)。漕ぎ出なば(こぎでなば=榜出去者)。うら恋し(うらこひし=裏恋)。
2019-0614-man3202
万葉短歌3202 熟田津に3014
熟田津に 船乗りせむと 聞きしなへ
何ぞも君が 見え来ずあるらむ ○
3014 万葉短歌3202 ShuF782 2019-0614-man3202
□にきたつに ふなのりせむと ききしなへ
なにぞもきみが みえこずあるらむ
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第23首。女。
【訓注】熟田津(にきたつ=柔田津)[「愛媛県松山市の和気町・堀江町付近の港。」 出現は、ほかに 01-0008熟田津尓 船乗世武登(にきたつに ふなのりせむと)、-0138(長歌)柔田津乃 荒礒之上尓(にきたつの ありそのうへに)、03-0323飽田津尓 船乗将為(にきたつに ふなのりしけむ)、の3か所]。
2019-0613-man3201
万葉短歌3201 時つ風3013
時つ風 吹飯の浜に 出で居つつ
贖ふ命は 妹がためこそ ○
3013 万葉短歌3201 ShuF781 2019-0613-man3201
□ときつかぜ ふけひのはまに いでゐつつ
あかふいのちは いもがためこそ
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第22首。男。
【訓注】時つ風(ときつかぜ=時風)[海岸の海陸風のうち、海風。02-0220(長歌)時風 雲居尓吹尓(ときつかぜ くもゐにふくに)、06-0958時風 応吹成奴(ときつかぜ ふくべくなりぬ)、など]。吹飯の浜(ふけひのはま=吹飯乃浜)[「大阪府の南端、〔泉南郡〕岬町深日(ふけ)の海岸」]。贖ふ命(かふいのち=贖命)[「海神に幣帛を捧げて命の加護を祈ること」]。
2019-0612-man3200
万葉短歌3200 笥飯の浦に3012
笥飯の浦に 寄する白波 しくしくに
妹が姿は 思ほゆるかも ○
3012 万葉短歌3200 ShuF781 2019-0612-man3200
□けひのうらに よするしらなみ しくしくに
いもがすがたは おもほゆるかも
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第21首。男。
【訓注】笥飯の浦(けひのうら=飼飯乃浦)[03-0256飼飯海(けひのうみ)。兵庫県南あわじ市(淡路島)慶野(けいの)海岸辺。参考:下記注]。しくしくに(敷布二)。
【編者注-笥飯浦(けひうら)】「日本海を通した海外との交流も多く,《日本書紀》には崇神朝に加羅国王子の都怒我阿羅斯等(つぬがあらしと)が笥飯(けひ)浦(敦賀市気比神社付近)に来泊したという伝承が見える。また敦賀には松原客館が置かれ、渤海との交渉の拠点となった。」(平凡社『世界大百科事典 第2版』)
2019-0611-man3199
万葉短歌3199 海の底3011
海の底 沖は畏し 磯みより
漕ぎ回みいませ 月は経ぬとも ○
3011 万葉短歌3199 ShuF781 2019-0611-man3199
□わたのそこ おきはかしこし いそみより
こぎたみいませ つきはへぬとも
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第20首。女。
【訓注】海(わた)。沖(おき=奥)。畏し(かしこし=恐)。磯み(いそみ=礒回)。漕ぎ回み(こぎたみ=水手運)[「こぎたみ」は、ほかに、01-0058榜多味、03-0273榜手回]。
2019-0610-man3198
万葉短歌3198 明日よりは3010
明日よりは いなむの川の 出でて去なば
留まれる我れは 恋ひつつやあらむ ○
3010 万葉短歌3198 ShuF781 2019-0610-man3198
□あすよりは いなむのかはの いでていなば
とまれるあれは こひつつやあらむ
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第19首。女。
【訓注】いなむの川(いなむのかは=将行乃河)[「兵庫県西南部の印南野(いなみの)を流れる加古川か・・・」]。
2019-0609-man3197
万葉短歌3197 住吉の3009
住吉の 岸に向へる 淡路島
あはれと君を 言はぬ日はなし ○
3009 万葉短歌3197 ShuF780 2019-0609-man3197
□すみのえの きしにむかへる あはぢしま
あはれときみを いはぬひはなし
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第18首。女。
【原文】12-3197 住吉乃 崖尓向有 淡路島 𪫧怜登君乎 不言日者无 作者未詳
【訓注】住吉(すみのえ)[大阪市住吉(すみよし)区辺(の海岸)]。淡路島(あはぢしま)[兵庫県所在。現在の行政区域は、淡路市・洲本市・南あわじ市]。
【編者注-𪫧怜】写本によっては「憾怜」。03-0415此旅人憾怜(このたびと あはれ)、04-0746如是憾怜(かくおもしろく)、06-1050(長歌)花開乎呼理 痛憾怜(はなさきををり あなあはれ)、など。ГЛАВНАЯ РЕДАКЦИЯ ВОСТОЧНОЙ ЛИТЕРАТУРЫ МОСКВА 1971(www.kobun.ru/btoc/manyoushuu) ほか参照。
2019-0608-man3196
万葉短歌3196 春日野の3008
春日野の 浅茅が原に 後れ居て
時ぞともなし 我が恋ふらくは ○
3008 万葉短歌3196 ShuF779 2019-0608-man3196
□かすがのの あさぢがはらに おくれゐて
ときぞともなし あがこふらくは
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第17首。女。
【訓注】春日野(かすがの)[奈良県奈良市奈良公園辺]。我が恋ふらくは(あがこふらくは=我恋良苦者)。
2019-0607-man3195
万葉短歌3195 磐城山3007
磐城山 直越え来ませ 磯崎の
許奴美の浜に 我れ立ち待たむ ○
3007 万葉短歌3195 ShuF775 2019-0607-man3195
□いはきやま ただこえきませ いそさきの
こぬみのはまに われたちまたむ
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第16首。女。
【訓注】磐城山(いはきやま)[「下の<許奴美の浜>ともども所在未詳」。依拠本注に、『駿河国風土記』所収伝説との関係を詳記]。
2019-0606-man3194
万葉短歌3194 息の緒に3006
息の緒に 我が思ふ君は 鶏が鳴く
東の坂を 今日か越ゆらむ ○
3006 万葉短歌3194 ShuF774 2019-0606-man3194
□いきのをに あがおもふきみは とりがなく
あづまのさかを けふかこゆらむ
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第15首。女。
【訓注】息の緒(いきのを=気緒)。我が思ふ君(あがおもふきみ=吾念君)。鶏が(とりが=鶏)。東の坂(あづまのさか=東方重坂)[「足柄峠らしい。・・・<東方>はここのみの用例」。20-4440安之我良乃 夜敝也麻故要弖(あしがらの やへやまこえて)]。
2019-0605-man3193
万葉短歌3193 玉かつま3005
玉かつま 島熊山の 夕暮れに
ひとりか君が 山道越ゆらむ ○
3005 万葉短歌3193 ShuF774 2019-0605-man3193
□たまかつま しまくまやまの ゆふぐれに
ひとりかきみが やまぢこゆらむ
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第14首。女。左注(読下し)に、<一には「夕霧に 長恋しつつ 寐寝(いね)かてぬかも」といふ>。
【訓注】玉かつま(たまかつま=玉勝間)。島熊山(しまくまやま)[所在未詳]。夕暮れに(ゆふぐれに=夕晩)。山道(やまぢ)。長恋(ながこひ)[集中ここだけの表現]。寐寝かてぬ(いねかてぬ=寐不勝)。
2019-0604-man3192
万葉短歌3192 草陰の3004
草陰の 荒藺の崎の 笠島を
見つつか君が 山道越ゆらむ ○
3004 万葉短歌3192 ShuF774 2019-0604-man3192
□くさかげの あらゐのさきの かさしまを
みつつかきみが やまぢこゆらむ
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第13首。女。左注(読下し)に、<一には「み坂越ゆらむ」といふ>。
【訓注】荒藺の崎(あらゐのさき=荒藺之埼)[<「笠島」ともども所在未詳。東京都大田区入新井(いりあらい)あたりかと見る説がある。>]
2019-0603-man3191
万葉短歌3191 よしゑやし3003
よしゑやし 恋ひじとすれど 木綿間山
越えにし君が 思ほゆらくに ○
3003 万葉短歌3191 ShuF774 2019-0603-man3191
□よしゑやし こひじとすれど ゆふまやま こえにしきみが おもほゆらくに
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第12首。女。
【訓注】よしゑやし(不欲恵八師)。恋ひじと(こひじと=不恋登)。木綿間山(ゆふまやま)[所在未詳。14-3475遊布麻夜万 可久礼之伎美乎(ゆふまやま かくれしきみを)]。
2019-0602-man3190
万葉短歌3190 雲居なる3002
雲居なる 海山越えて い行きなば
我れは恋ひむな 後は相寝とも ○
3002 万葉短歌3190 ShuF769 2019-0602-man3190
□くもゐなる うみやまこえて いゆきなば
あれはこひむな のちはあひぬとも
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第11首。男。
【訓注】雲居なる(くもゐなる=雲居有)。海山(うみやま)。い行きなば(いゆきなば=伊徃名者)。我れは(あれは=吾者)。相寝(あひぬ=相宿)。
2019-0601-man3189
万葉短歌3189 あしひきの3001
あしひきの 山は百重に 隠すとも
妹は忘れじ 直に逢ふまでに ○
3001 万葉短歌3189 ShuF769 2019-0601-man3189
□あしひきの やまはももへに かくすとも
いもはわすれじ ただにあふまでに
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第10首。男。左注(読下し)に、「一には<隠せども 君を思はく やむ時もなし>といふ」。
【訓注】あしひきの(足桧乃)。百重に(ももへに=百重)。直に逢ふまでに(ただにあふまでに=直相左右二)。
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