2022-0930-man4499
万葉短歌4499 我が背子し4170
我が背子し かくし聞こさば 天地の
神を祈ひ祷み 長くとぞ思ふ 中臣清麻呂
4170 万葉短歌4499 ShuJ783 2022-0930-man4499
□わがせこし かくしきこさば あめつちの
かみをこひのみ ながくとぞおもふ
〇中臣清麻呂(なかとみの きよまろ)=20-4497歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第207首。「二月於式部大輔…歌十五首」の第4首。左注に、「右一首主人中臣清麻呂朝臣」。
【訓注】我が背子(わがせこ=和我勢故)。天地(あめつち=安米都知)。神(かみ=可未)。祈ひ祷み(こひのみ=許比能美)[「<祈(こ)ふ>は神に願う、<祷(の)む>は神に祈る」]。
2022-0929-man4498
万葉短歌4498 はしきよし4169
はしきよし 今日の主人は 磯松の
常にいまさね 今も見るごと 大伴家持
4169 万葉短歌4498 ShuJ783 2022-0929-man4498
□はしきよし けふのあろじは いそまつの
つねにいまさね いまもみるごと
〇大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第206首。「二月於式部大輔…歌十五首」の第3首。左注に、「右一首右中弁大伴宿祢家持」。
【訓注】はしきよし(波之伎余之)。主人(あろじ=安路自)。
2022-0928-man4497
万葉短歌4497 見むと言はば4168
見むと言はば いなと言はめや 梅の花
散り過ぐるまで 君が来まさぬ 中臣清麻呂
4168 万葉短歌4497 ShuJ783 2022-0928-man4497
□みむといはば いなといはめや うめのはな
ちりすぐるまで きみがきまさぬ
〇中臣清麻呂(なかとみの きよまろ)=「中納言兼神祇伯意美麻呂(おみまろ)の第九男」。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第206首。「二月於式部大輔…歌十五首」の第2首。左注に、「右一首主人中臣清麻呂朝臣」。
【訓注】君(きみ=伎美)[今城]。
2022-0927-man4496
万葉短歌4496 恨めしく4167
恨めしく 君はもあるか やどの梅の
散り過ぐるまで 見しめずありける 大原今城
4167 万葉短歌4496 ShuJ783 2022-0927-man4496
□うらめしく きみはもあるか やどのうめの
ちりすぐるまで みしめずありける
〇大原今城(おほはらの いまき)=20-4442歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第204首。題詞に、「〔天平宝字二年(758)〕二月於式部大輔(しきぶのだいふ。「文官の人事、養成、行賞などを掌る式部省の次官」)中臣清麻呂朝臣之宅宴歌十五首」。その第1首。左注に、「右一首治部少輔大原今城真人」。
【訓注】君(きみ=伎美)[清麻呂]。見しめずありける(みしめずありける=美之米受安利家流)[「見せて下さらなかったとは」]。
2022-0926-man4495
万葉短歌4495 うち靡く4166
うち靡く 春ともしるく うぐひすは
植木の木間を 鳴き渡らなむ 大伴家持
4166 万葉短歌4495 ShuJ780 2022-0926-man4495
□うちなびく はるともしるく うぐひすは
うゑきのこまを なきわたらなむ
〇大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第203首。題詞に、「六日内庭(うちのにはに)仮(かりに)植樹木以作林帷而(りんゐ〔(「林のとばり」)〕となして)為肆宴(とよのあかりを なしたまふ)歌」、左注に、「右一首右中弁大伴宿祢家持 不奏〔(「政務に追われて参加できず」)〕」。
【訓注】春(はる=波流)。うぐひす(宇具比須)。
2022-0925-man4494
万葉短歌4494 水鳥の4165
水鳥の 鴨の羽色の 青馬を
今日見る人は 限りなしといふ 大伴家持
4165 万葉短歌4494 ShuJ778 2022-0925-man4494
□みづとりの かものはいろの あをうまを
けふみるひとは かぎりなしといふ
〇大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第202首。左注に、「右一首為七日侍宴〔(朝廷での青馬節会(あおうまのせちゑ)、七日節会)〕右中弁大伴宿祢家持預(あらかじめ)作此歌…」。
【訓注】水鳥の(みづとりの=水鳥乃)[「<鴨>の枕詞」]。青馬(あをうま)[「葦毛の馬。中古以来<白馬>と書く。<青>は白と黒との中間の漠然たる色」]。今日見る人(けふみるひと=家布美流比等)[「陽月陽日(陽は奇数)に見れば、一年の邪気が払われる…」]。
2022-0924-man4493
万葉短歌4493 初春の4164
初春の 初子の今日の 玉箒
手に取るからに 揺らく玉の緒 大伴家持
4164 万葉短歌4493 ShuJ772 2022-0924-man4493
□はつはるの はつねのけふの たまばはき
てにとるからに ゆらくたまのを
〇大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第201首。題詞(要旨)に、〔天平宝字二年(758)〕正月三日、諸官が召されて、自由に作歌賦詩せよとされたが、まだ入手できない。左注に、「右一首右中弁大伴宿祢家持作 但依大蔵政(おほくらの まつりごとに よりて)不堪奏之也(さうしあへず)」。
【訓注】初春(はつはる=始春)。玉箒(たまばはき=多麻婆波伎)[「玉の飾りを付けた箒(ほうき)で、蚕の床を掃く具に擬したもの。…正月の初子の日には、辛鋤(からすき)と玉箒とを宮中に飾り、天皇躬(みずか)らの耕作と皇后親(みずか)らの養蚕とを象(かたど)り、予祝とした」]。揺らく(ゆらく=由良久)[「ゆらゆらと鳴る」]。
2022-0923-man4492
万葉短歌4492 月数めば4163
月数めば いまだ冬なり しかすがに
霞たなびく 春立ちぬとか 大伴家持
4163 万葉短歌4492 ShuJ770 2022-0923-man4492
□つきよめば いまだふゆなり しかすがに
かすみたなびく はるたちぬとか
〇大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第200首。題詞に、「〔天平宝字元年(757)十二月〕廿三日於治部少輔(ぢぶのせうふ)〔「本姓、婚姻、喪葬、贈位などと掌る治部省の次官」〕大原今城真人之宅宴(いへにして うたげする)歌一首」。左注に、「右一首右中弁大伴宿祢家持作」。
【原文】20-4492 都奇余米婆 伊麻太冬奈里 之可須我尓 霞多奈婢久 波流多知奴等可 大伴家持
2022-0922-man4491
万葉短歌4491 大き海の4162
大き海の 水底深く 思ひつつ
裳引き平しし 菅原の里 大伴家持
4162 万葉短歌4491 ShuJ764 2022-0922-man4491
□おほきうみの みなそこふかく おもひつつ
もびきならしし すがはらのさと
〇大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第199首。左注に、「右一首藤原宿奈麻呂(ふじはらの すくなまろの)朝臣〔(藤原宇合の次男)〕之妻石川女郎薄愛(あいをうすくし)離別(りべつせらえ)悲恨(かなしびうらみて)作歌也 年月未詳」。下記注。
【訓注】大き海の 水底(おほきうみの みなそこ=於保吉宇美能 美奈曽己)[「心の底の深いことの譬え」]。裳引き平しし(もびきならしし=毛婢伎奈良之思)[「門前で男を待つさま」]。菅原(すがはら=須我波良)[「奈良市菅原町一帯」]。
【編者注-石川女郎】いしかはの いらつめ。左注参照。『万葉集事典』に載る同名人物(1)~(6)とは別人の(7)、この一首だけ。
2022-0921-man4490
万葉短歌4490 あらたまの4161
あらたまの 年行き返り 春立たば
まづ我がやどに うぐひすは鳴け 大伴家持
4161 万葉短歌4490 ShuJ764 2022-0921-man4490
□あらたまの としゆきかへり はるたたば
まづわがやどに うぐひすはなけ
〇大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第198首。題詞に、「十二月十八日…歌三首」の第3首。左注に、「右一首右中弁(うちゅうべん)〔「右大臣を助けて兵部、刑部、大蔵、宮内の各省を管掌する」〕大伴宿祢家持」。
【原文】20-4490 安良多末能 等之由伎我敝理 波流多々婆 末豆和我夜度尓 宇具比須波奈家 大伴家持
2022-0920-man4489
万葉短歌4489 うち靡く4160
うち靡く 春を近みか ぬばたまの
今夜の月夜 霞みたるらむ 甘南備伊香
4160 万葉短歌4489 ShuJ764 2022-0920-man4489
□うちなびく はるをちかみか ぬばたまの
こよひのつくよ かすみたるらむ
〇甘南備伊香(かむなびの いかご)=「もと伊香王」。左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第197首。題詞に、「十二月十八日…歌三首」の第2首。左注に、「右一首大蔵大輔(おほくらの だいふ〔(「国庫を管理し、宮廷行事の設営、器具・衣服等を担当する大蔵省の次官」)〕)甘南備伊香真人」。
【訓注】春(はる=波流)。ぬばたまの(奴婆玉乃)。今夜の月夜(こよひのつくよ=己与比能都久欲)。
2022-0919-man4488
万葉短歌4488 み雪降る4159
み雪降る 冬は今日のみ うぐひすの
鳴かむ春へは 明日にしあるらし 三形王
4159 万葉短歌4488 ShuJ764 2022-0919-man4488
□みゆきふる ふゆはけふのみ うぐひすの
なかむはるへは あすにしあるらし
〇三形王(みかたの おほきみ)=20-4483歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第196首。題詞に、「十二月十八日於大監物三形王之宅宴歌三首」、その第1首。左注に、「右一首主人(あろじ)三形王」。
【原文】20-4488 三雪布流 布由波祁布能未 鸎乃 奈加牟春敝波 安須尓之安流良之 三形王
2022-0918-man4487
万葉短歌4487 いざ子ども4158
いざ子ども たはわざなせそ 天地の
堅めし国ぞ 大和島根は 藤原仲麻呂
4158 万葉短歌4487 ShuJ758 2022-0918-man4487
□いざこども たはわざなせそ あめつちの
かためしくにぞ やまとしまねは
〇藤原仲麻呂(ふじはらの なかまろ)=「紫微中台長官。…天平宝字八年〔(764)〕九月、〔孝謙〕上皇―道鏡の路線に対立して反乱し、九月十八日斬殺された」。「藤原仲麻呂(藤原恵美押勝〔(ふじはらの えみの おしかつ)〕)の乱」の中心人物。左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第195首。「天平宝字元年…歌二首」の第2首。左注に、「右一首内相(ないしゃう)藤原朝臣奏之」。
【訓注】いざ子ども(いざこども=伊射子等毛)[「宴で目下の者を親しんで呼ぶ慣用語」]。たはわざ(多波和射)[「狂(たわ)けた振舞い」]。大和島根(やまとしまね=夜麻登之麻祢)[「<大和>を海上から陸地として見た語」]。
2022-0917-man4486
万葉短歌4486 天地を4157
天地を 照らす日月の 極みなく
あるべきものを 何をか思はむ 大炊王
4157 万葉短歌4486 ShuJ758 2022-0917-man4486
□あめつちを てらすひつきの きはみなく
あるべきものを なにをかおもはむ
〇大炊王(おほい わう)=左注の「皇太子」は、「舎人皇子の子の大炊王。〔のちの〕淳仁天皇」。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第194首。題詞に、「天平宝字元年〔(757)〕十一月十八日於内裏(うちにして)肆宴(とよのあかり したまふ)歌二首」、その第1首。左注に、「右一首皇太子御歌」。
【訓注】天地(あめつち)。日月(ひつき)。
2022-0916-man4485
万葉短歌4485 時の花4156
時の花 いやめづらしも かくしこそ
見し明らめめ 秋立つごとに 大伴家持
4156 万葉短歌4485 ShuJ744 2022-0916-man4485
□ときのはな いやめづらしも かくしこそ
めしあきらめめ あきたつごとに
〇大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第193首。左注に、「右大伴宿祢家持作之」。
【訓注】時の花(ときのはな=時花)[「その季節に咲き誇る花。ここは萩など…」]。かくしこそ 見し明らめめ(かくしこそ めしあきらめめ=加久之許曽 売之安伎良米晩)[「<かく>は天皇が<時の花>を見ている姿を幻想して…。<明らむ>は心を明るくする…。…<め>は推量だが、願望をも含む」]。