万葉短歌-悠山人編

万葉短歌…万葉集全4516歌(長短)のうち、短歌をすべてJPG&TXTで紹介する。→日本初!

万葉短歌4019 天離る3730

2021年06月30日 | 万葉短歌

2021-0630-man4019
万葉短歌4019 天離る3730

天離る 鄙ともしるく ここだくも
繁き恋かも なぐる日もなく  大伴家持

3730     万葉短歌4019 ShuI326 2021-0630-man4019

□あまざかる ひなともしるく ここだくも
  しげきこひかも なぐるひもなく
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第130首。4020左注参照。
【訓注】天離る(あまざかる=安麻射可流)。鄙ともしるく(ひなともしるく=比奈等毛之流久)[「なるほど田舎に在るということがはっきりして」]。ここだくも(許己太久母)[<こんなにも多く>]。なぐる(奈具流)[<なぐ>は「安らぐ」。奈呉に懸ける]。


万葉短歌4018 港風3729

2021年06月29日 | 万葉短歌

2021-0629-man4018
万葉短歌4018 港風3729

港風 寒く吹くらし 奈呉の江に
妻呼び交し 鶴多に鳴く  大伴家持

3729     万葉短歌4018 ShuI326 2021-0629-man4018

□みなとかぜ さむくふくらし なごのえに
  つまよびかはし たづさはになく
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第129首。結句割注に、「一云 多豆佐和久奈里(たづさわくなり)」。4020左注参照。
【訓注】港風(みなとかぜ=美奈刀可是)[<みなと>訓の原文は、美奈刀は4か所、ほか水門・湊・湖などが多く、<みなと>訓は合計30か所]。奈呉(なご)。多に(さはに=左波尓)[多く、たくさん]。


万葉短歌4017 東風3728

2021年06月28日 | 万葉短歌

2021-0628-man4017
万葉短歌4017 東風3728

東風 いたく吹くらし 奈呉の海人の
釣りする小舟 漕ぎ隠る見ゆ  大伴家持

3728     万葉短歌4017 ShuI326 2021-0628-man4017

□あゆのかぜ いたくふくらし なごのあまの
  つりするをぶね こぎかくるみゆ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第128首。初句割注に、「越俗語東風謂之安由乃可是也(こしのくにひとのことばには こちのかぜを あゆのかぜ といふ)」。4020左注参照。
【訓注】東風[下記注]。奈呉(なご)[3956注参照]。
【編者注-東風】ほかには、17-4006(長歌)安由能加是 伊多久之布気婆(あゆのかぜ いたくしふけば)。<こち>訓は、10-2126朝東 風尓副而(あさこちの かぜにたぐひて)、の1例。「日本海沿岸の各地に今日も残る<あゆの風>(<あい><あえ>とも)・・・」(依拠本)。春三月の季語としては、ほかに朝東風(あさごち)、夕~(ゆふ~)、強~(つよ~) 荒~(あら~)、梅~(うめ~)、桜~(さくら~)、雲雀~(ひばり~)、鰆~(さはら~)、稲田~(いなだ~)など。(三省堂『俳句季題便覧』)、電網「俳句歳時記」、など参照)


万葉短歌4016 婦負の野の3727

2021年06月27日 | 万葉短歌

2021-0627-man4016
万葉短歌4016 婦負の野の3727

婦負の野の すすき押しなべ 降る雪に
やど借る今日し 悲しく思ほゆ  高市黒人

3727     万葉短歌4016 ShuI324 2021-0627-man4016

□めひののの すすきおしなべ ふるゆきに
  やどかるけふし かなしくおもほゆ
○高市黒人(たけちの くろひと)=01-0032歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第127首。題詞に、「高市連黒人(たけちの むらじ くろひと)歌一首 年月不審」。左注に、「右伝誦此歌三国真人五百国(みくにの まひと いほくに)是也」。
【訓注】婦負の野(めひのの=売比能野)[「富山県婦負(ねい)郡〔現・富山市の一部〕の一帯・・・」]。三国真人五百国[「伝未詳」]。


万葉短歌4015 心には3726

2021年06月26日 | 万葉短歌

2021-0626-man4015
万葉短歌4015 心には3726

心には 緩ふことなく 須加の山
すかなくのみや 恋ひわたりなむ  大伴家持

3726     万葉短歌4015 ShuI311 2021-0626-man4015

□こころには ゆるふことなく すかのやま
  すかなくのみや こひわたりなむ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第126首。左注(要旨)に、射水郡古江村で捕らえた立派な蒼鷹(おほたか)、養吏の山田史君麻呂の失節で逃がした、諸対策も効果なし、(守の)夢に娘子が現れて心配するなと言う、そこで目覚めて大伴家持が歌を作る、と。
【訓注】心(こころ=情)。緩ふ(ゆるふ=由流布)[「<緩む>の古形」]。須加の山(すかのやま=須加能夜麻)[「高岡市街の西方、二上山の西、国吉(くによし)地区頭川(ずかわ)東南の山地らしい」]。すかなく(須可奈久)[「<すかなし>は心が鬱々(うつうつ)として楽しまないさま・・・」。集中ここだけ]。


万葉短歌4014 松反り3725

2021年06月25日 | 万葉短歌

2021-0625-man4014
万葉短歌4014 松反り3725

松反り しひにてあれかも さ山田の
翁がその日に 求めあはずけむ  大伴家持

3725    万葉短歌4014 ShuI311 2021-0625-man4014

□まつがへり しひにてあれかも さやまだの
  をぢがそのひに もとめあはずけむ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第125首。4015左注参照。
【訓注】松反り(まつがへり=麻追我敝里)[「鷹が手許や鳥屋(とや)に戻らず松の枝に帰る意の鷹詞らしい」。09-1783松反 而有八羽(まつがへり しひてあれやは)]。しひてあれかも(之比尓弖安礼可母)[「<しひ>は、肉体的、精神的な障碍を持つ意・・・。<あれかも>は<あればかも>の意」]。さ山田(さやまだ=佐夜麻太)[次歌左注に「養吏(やうり)山田史君麻呂(やまだの ふひと きみまろ)」。養吏は鷹の飼育・調教者。下記注]。翁(をぢ=乎治)。
【編者注-養吏】放鷹(鷹狩)、とくに万葉家持歌との関連については、秋吉正博「古代の放鷹の技術と形象に関する覚書」(八洲学園大学紀要第12号(2016)、を参照。


万葉短歌4013 二上の3724

2021年06月24日 | 万葉短歌

2021-0624-man4013
万葉短歌4013 二上の3724

二上の をてもこのもに 網さして
我が待つ鷹を 夢に告げつも  大伴家持

3724     万葉短歌4013 ShuI311 2021-0624-man4013

□ふたがみの をてもこのもに あみさして
  あがまつたかを いめにつげつも
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第124首。4015左注参照。
【訓注】をてもこのも(乎弖母許能母)[彼面此面<をちおもこのおも>の変化形。あちら側とこちら側。かなたこなた。(『詳説古語辞典』) 14-3361乎弖毛許乃母尓(をてもこのもに)など、集中4か所に出現]。我が待つ鷹(あがまつたか=安我麻都多可)。夢(いめ=伊米)。


万葉短歌4012 矢形尾の3723

2021年06月23日 | 万葉短歌

2021-0623-man4012
万葉短歌4012 矢形尾の3723

矢形尾の 鷹を手に据ゑ 三島野に
猟らぬ日まねく 月ぞ経にける  大伴家持

3723     万葉短歌4012 ShuI311 2021-0623-man4012

□やかたをの たかをてにすゑ みしまのに
  からぬひまねく つきぞへにける
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第123首。題詞に、「思放逸鷹(のがれたる たかを おもひて)夢見(いめみ)感悦(よろこびて)作歌一首并短歌」。4011は長歌。4015左注参照。
【訓注】矢形尾(やかたを)[「内実未詳。矢羽(やは)のような八の字の斑(ふ)のある尾(・・・)、矢羽の形をした尾(・・・)と見る説などがある」。下記注]。鷹(たか=多加)。三島野(みしまの=美之麻野)[「国府の東南、高岡市から射水郡〔(現・射水市)〕にかけての野・・・(・・・)。鷹猟の猟場(かりば)」]。
【編者注-やかたを】箭像尾・屋形尾・矢形尾・八形尾。鷹の尾の羽の切生(きりう)の一種。屋根の切妻(きりづま)の形状を連想させる斑の模様からの名称。やかた。(『精選版 日本国語大辞典』小学館) 用例にこの歌を挙げる。


万葉短歌4010 うら恋し3722

2021年06月22日 | 万葉短歌

2021-0622-man4010
万葉短歌4010 うら恋し3722

うら恋し 我が背の君は なでしこが
花にもがもな 朝な朝な見む  大伴池主

3722     万葉短歌4010 ShuI304 2021-0622-man4010

□うらごひし わがせのきみは なでしこが
  はなにもがもな あさなさなみみ
○大伴池主(おほともの いけぬし)=08-1590歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第121首。左注に、「右大伴宿祢池主報贈和(こたへ おくりて こたふる)歌 五月二日」。
【訓注】うら恋し(うらごひし=宇良故非之)[「<うら>は心」。下記注]。なでしこ(奈泥之故)。朝な朝な(あさなさな=安佐奈々々)。
【編者注-うらごひし】集中ほかに、17-3993(長歌)宇良胡非之美等(うらごひしみと)の、計2か所。なお、<うらがなし>は、02-0189真浦悲毛(まうらがなしも)、08-1507(長歌)裏悲尓(うらがなしきに)、など7か所。


万葉短歌4009 玉桙の3721

2021年06月21日 | 万葉短歌

2021-0621-man4009
万葉短歌4009 玉桙の3721

玉桙の 道の神たち 賄はせむ
我が思ふ君を なつかしみせよ  大伴池主

3721     万葉短歌4009 ShuI304 2021-0621-man4009

□たまほこの みちのかみたち まひはせむ
  あがおもふきみを なつかしみせよ
○大伴池主(おほともの いけぬし)=08-1590歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第120首。題詞(要旨)に、入京述懐一首并二絶。4008は長歌。次歌左注参照。
【訓注】玉桙(たまほこ=多麻保許)。神たち(かみたち=可未多知)[「<たち>は<ども>より尊敬の度合の強い接尾語」。ここと、05-0894(長歌)大御神等(おほかみたち、3か所)、19-4240伊波敝神多智(いはへかみたち)、の5か所に出現]。我が思ふ君(あがおもふきみ=安賀於毛布伎美)[この訓は、集中ここだけ。他の17か所はすべて同義<あがもふきみ>訓]。賄はせむ(まひはせむ=麻比波勢牟)[「<賄>は願い事のため予め贈る謝礼」。下記注]。なつかしみせよ(奈都可之美勢余)[「心引かれてたいせつなもとする」]。
【編者注-まひ】幣。謝礼としての神への供物。また、人への贈り物。賂(まひな)ひ。(『詳説古語辞典』) 幣。謝礼の品として神にささげたり、人に贈ったりするもの。(旺文社『全訳古語辞典』)


万葉短歌4007 我が背子は3720

2021年06月20日 | 万葉短歌

2021-0620-man4007
万葉短歌4007 我が背子は3720

我が背子は 玉にもがもな ほととぎす
声にあへ貫き 手に巻きて行かむ  大伴家持

3720     万葉短歌4007 ShuI296 2021-0620-man4007

□わがせこは たまにもがもな ほととぎす
  こゑにあへぬき てにまきてゆかむ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第118首。題詞に、「入京漸近(やくやくに ちかづき)悲情難揆(はらひかたくして)述懐(おもひを)一首并一絶」。4006は長歌。左注に、「右大伴宿祢家持贈掾大伴宿祢池主 四月卅日」。
【訓注】我が背子は(わがせこは=和我勢故波)。玉(たま=多麻)。ほととぎす(保登等伎須)。声にあへ貫き(こゑにあへぬき=許恵尓安倍奴吉)[「時鳥の声を薬玉に交えて貫くという発想・・・」。08-1465霍公鳥 痛莫鳴 汝音乎 五月玉尓 相貫左右二(ほととぎす いたくななきそ ながこゑを さつきのたまに あへぬくまでに)、10-1939霍公鳥 汝始音者 於吾欲得 五月之珠尓 交而将貫(ほととぎす ながはつこゑは われにもが さつきのたまに まじへてぬかむ)、など]。


万葉短歌4005 落ちたぎつ3719

2021年06月19日 | 万葉短歌

2021-0619-man4005
万葉短歌4005 落ちたぎつ3719

落ちたぎつ 片貝川の 絶えぬごと
今見る人も やまず通はむ  大伴池主

3719     万葉短歌4005 ShuI290 2021-0619-man4005

□おちたぎつ かたかひがはの たえぬごと
  いまみるひとも やまずかよはむ
○大伴池主(おほともの いけぬし)=08-1590歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第116首。左注に、「右掾大伴宿祢池主和之 四月廿八日」。
【訓注】落ちたぎつ(おちたぎつ=於知多芸都)。片貝川(かたかひがは=可多加比我波)。


万葉短歌4004 立山に3718

2021年06月18日 | 万葉短歌

2021-0618-man4004
万葉短歌4004 立山に3718

立山に 降り置ける雪の 常夏に
消ずてわたるは 神ながらとぞ  大伴池主

3718     万葉短歌4004 ShuI290 2021-0618-man4004

□たちやまに ふりおけるゆきの とこなつに
  けずてわたるは かむながらとぞ
○大伴池主(おほともの いけぬし)=08-1590歌注参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第115首。題詞に、「敬和立山賦一首并二絶」。次歌左注参照。
【訓注】立山(たちやま=多知夜麻)。常夏(とこなつ=等許奈都)。神ながら(かむながら=可無奈我良)[01-0038(長歌)神長柄(かむながら)、-0039(長歌)神長柄、-0045(長歌)神長柄、など19か所に出現]。


万葉短歌4002 片貝の3717

2021年06月17日 | 万葉短歌

2021-0617-man4002
万葉短歌4002 片貝の3717

片貝の 川の瀬清く 行く水の
絶ゆることなく あり通ひ見む  大伴家持

3717     万葉短歌4002 ShuI284 2021-0617-man4002

□かたかひの かはのせきよく ゆくみづの
  たゆることなく ありがよひみむ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第113首。左注に、「四月廿七日大伴宿祢家持作之」。
【訓注】片貝の 川(かたかひの かは)=可多加比能 可波)[「立山の北、猫又(ねこまた)山に発し、北西に流れて魚津で海に注ぐかわ」]。あり通ひ(ありがよひ=安里我欲比)[集中12か所に出現、直前では3992注参照]。


万葉短歌4001 立山に3716

2021年06月16日 | 万葉短歌

2021-0616-man4001
万葉短歌4001 立山に3716

立山に 降り置ける雪を 常夏に
見れども飽かず 神からならし  大伴家持

3716     万葉短歌4001 ShuI283 2021-0616-man4001

□たちやまに ふりおけるゆきを とこなつに
  みれどもあかず かむからならし
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌参照。
【編者注】巻17(3890~4031、百四十二首)の第112首。題詞に、「立山賦(ふ)一首并短歌 此山者有新川郡(にひかはの こほりに)也」。4000は長歌。次歌左注参照。
【訓注】立山(多知夜麻)[「立山連峰。・・・今はタテヤマが通称だが、集中ではタチヤマ」]。雪(ゆき=由伎)。常夏(とこなつ=登己奈都)。神(かむ=加武)。