2019-0630-man3218
万葉短歌3218 朝な朝な3030
朝な朝な 筑紫の方を 出で見つつ
音のみぞ我が泣く いたもすべなみ ○
3030 万葉短歌3218 ShuF800 2019-0630-man3218
□あさなさな つくしのかたを いでみつつ
ねのみぞあがなく いたもすべなみ
○=出典未詳。
【編者注】問答歌(3211-3220、10首)の第8首。男。左注に、「右二首」。
【訓注】朝な朝な(あさなさな=旦々)。音のみぞ我が泣く(ねのみぞあがなく=哭耳吾泣)。
2019-0629-man3217
万葉短歌3217 荒津の海3029
荒津の海 我れ幣奉り 斎ひてむ
早帰りませ 面変りせず ○
3029 万葉短歌3217 ShuF800 2019-0629-man3217
□あらつのうみ われぬさまつり いはひてむ
はやかへりませ おもがはりせず
○=出典未詳。
【編者注】問答歌(3211-3220、10首)の第7首。女。
【訓注】幣奉り(ぬさまつり=幣奉)。早帰りませ(はやかへりませ=早還座)。斎ひてむ(いはひてむ=将斎)。
2019-0628-man3216
万葉短歌3216 草枕3028
草枕 旅行く君を 荒津まで
送りぞ来ぬる 飽き足らねこそ ○
3028 万葉短歌3216 ShuF798 2019-0628-man3216
□くさまくら たびゆくきみを あらつまで
おくりぞきぬる あきたらねこそ
○=出典未詳。
【編者注】問答歌(3211-3220、10首)の第6首。女。左注に、「右二首」。
【訓注】旅行く君(たびゆくきみ=羈行君)。荒津まで(あらつまで=荒津左右)。
2019-0627-man3215
万葉短歌3215 白栲の3027
白栲の 袖の別れを 難みして
荒津の浜に 宿りするかも ○
3027 万葉短歌3215 ShuF797 2019-0627-man3215
□しろたへの そでのわかれを かたみして
あらづのはまに やどりするかも
○=出典未詳。
【編者注】問答歌(3211-3220、10首)の第5首。男。
【訓注】白栲(しろたへ=白妙)。難み(かたみ=難見)[困難]。荒津(あらつ)[下記注。15-3660可牟佐夫流 安良都能左伎尓(かむさぶる あらつのさきに)]。宿り(やどり=屋取)。
【依拠本注-荒津】大宰府の北方、博多湾に臨む福岡市西公園付近にあった港で、大宰府の外港として官船が発着した。
2019-0626-man3214
万葉短歌3214 十月3026
十月 雨間も置かず 降りにせば
いづれの里の 宿か借らまし ○
3026 万葉短歌3214 ShuF795 2019-0626-man3214
□かむなづき あままもおかず ふりにせば
いづれのさとの やどかからまし
○=出典未詳。
【編者注】問答歌(3211-3220、10首)の第4首。男。左注に、「右二首」。
【訓注】十月(かむなづき)。降りにせば(ふりにせば=零尓西者)。いづれの里(いづれのさと=誰里)。
2019-0625-man3213
万葉短歌3213 十月3025
十月 しぐれの雨に 濡れつつか
君が行くらむ 宿か借るらむ ○
3025 万葉短歌3213 ShuF795 2019-0625-man3213
□かむなづき しぐれのあめに ぬれつつか
きみがゆくらむ やどかかるらむ
○=出典未詳。
【編者注】問答歌(3211-3220、10首)の第3首。女。
【訓注】十月(かむなづき)。しぐれの雨(しぐれのあめ=鍾礼乃雨)[「九、十月に降ったり止んだりする小雨。」 01-0081天之四具礼能(あめのしぐれの)、03-0423(長歌)九月能 四具礼能時者(ながつきの しぐれのときは)、など]。
2019-0624-man3212
万葉短歌3212 八十楫懸け3024
八十楫懸け 島隠りなば 我妹子が
留まれと振らむ 袖見えじかも ○
3024 万葉短歌3212 ShuF793 2019-0624-man3212
□やそかかけ しまがくりなば わぎもこが
とまれとふらむ そでみえじかも
○=出典未詳。
【編者注】問答歌(3211-3220、10首)の第2首。男。左注に、「右二首」。
【訓注】八十楫(やそか=八十梶)。我妹子(わぎもこ=我妹児)。
*** 万葉集 巻12 問答歌の部(3211-3220、10首) 始 ***
3023 2019-0623-man3211
万葉短歌3211 玉の緒の3023
玉の緒の 現し心や 八十楫懸け
漕ぎ出む船に 後れて居るらむ ○
3023 万葉短歌3211 ShuF793 2019-0623-man3211
□たまのをの うつしごころや やそかかけ
こぎでむふねに おくれてをるらむ
○=出典未詳。
【編者注】問答歌(もんだふか、3211-3220、10首)の第1首。女。
【訓注】現し心(うつしごころ=徙心)。八十楫(やそか=八十梶)。
2019-0622-man3210
万葉短歌3210 あしひきの3022
あしひきの 片山雉 立ち行かむ
君に後れて うつしけめやも ○
3022 万葉短歌3210 ShuF792 2019-0622-man3210
□あしひきの かたやまぎし たちゆかむ
きみにおくれて うつしけめやも
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第31首。女。
【訓注】あしひきの(足桧木乃)。片山雉(かたやまぎし=片山鴙)[下記注。鴙(チ、ジ/きじ=雉)]。うつし(打四)[下記注]。
【依拠本注-片山雉】人里近い片山に棲む雉。「片山」は平野側の方にだけ傾斜面を持つ端山。〔以下は編者注〕10-1818片山木之尓 霞多奈引(かたやまきしに かすみたなびく)。
【編者注-うつし】「現し・顕し」。形容詞、シク活。(1)現実である。(2)正気である。古い未然形に「うつしけ」。(以上は『詳説古語辞典』参照) 「うつしけめやも」訓は、集中ここと、15-3752君尓古非都々 宇都之家米也母(きみにこひつつ うつしけめやも)の2か所。「うつし」は、04-0771打布裳(うつしくも)、07-1343写心哉(うつしこころや)、07-1362影毛将為跡(うつしもせむと)、08-1543移尓有家里(うつしにありけり)、など。
2019-0621-man3209
万葉短歌3209 春日にある3021
春日にある 御笠の山に 居る雲を
出で見るごとに 君をしぞ思ふ ○
3021 万葉短歌3209 ShuF791 2019-0621-man3209
□かすがにある みかさのやまに ゐるくもを
いでみるごとに きみをしぞおもふ
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第30首。女。
【訓注】春日にある御笠の山(かすがにある みかさのやま=春日在 三笠乃山)[奈良県奈良市所在の御蓋山(みかさやま)、若草山]。
2019-0620-man3208
万葉短歌3208 久にあらむ3020
久にあらむ 君を思ふに ひさかたの
清き月夜も 闇のみに見る ○
3020 万葉短歌3208 ShuF789 2019-0620-man3208
□ひさにあらむ きみをおもふに ひさかたの
きよきつくよも やみのみにみる
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第29首。女。
【訓注】久に(ひさに=久)。ひさかたの(久堅乃)。清き月夜(きよきつくよ=清月夜)。闇(やみ=闇夜)。
2019-0619-man3207
万葉短歌3207 あらたまの3019
あらたまの 年の緒長く 照る月の
飽かざる君や 明日別れなむ ○
3019 万葉短歌3207 ShuF789 2019-0619-man3207
□あらたまの としのをながく てるつきの
あかざるきみや あすわかれなむ
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第28首。女。
【訓注】あらたまの(荒玉乃)。飽かざる君(あかざるきみ=不猒君)。
2019-0618-man3206
万葉短歌3206 筑紫道の3018
筑紫道の 荒磯の玉藻 刈るとかも
君が久しく 待つに来まさぬ ○
3018 万葉短歌3206 ShuF786 2019-0618-man3206
□つくしぢの ありそのたまも かるとかも
きみがひさしく まつにきまさぬ
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第27首。女。
【訓注】筑紫道(つくしぢ)[ここでは筑紫国からの帰路]。荒磯(ありそ=荒礒)。
2019-0617-man3205
万葉短歌3205 後れ居て3017
後れ居て 恋ひつつあらずは 田子の浦の
海人ならましを 玉藻刈る刈る ○
3017 万葉短歌3205 ShuF786 2019-0617-man3205
□おくれゐて こひつつあらずは たごのうらの
あまならましを たまもかるかる
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第26首。女。
【訓注】田子の浦(たごのうら=田篭之浦)[駿河湾西沿岸、静岡県静岡市清水区辺の海岸。ほかに次の2か所、03-0297昼見騰 不飽田児浦(ひるみれど あかぬたごのうら)、-0318田児之浦従 打出而見者(たごのうらゆ うちいでてみれば)]。海人(あま=海部)。刈る刈る(かるかる=刈々)[「動詞の終止形を重ねると継続反復を示しつつ、副詞的用法となる。」 11-2743珠藻刈々(たまもかるかる)]。
2019-0616-man3204
万葉短歌3204 玉葛3016
玉葛 幸くいまさね 山菅の
思ひ乱れて 恋ひつつ待たむ ○
3016 万葉短歌3204 ShuF786 2019-0616-man3204
□たまかづら さきくいまさね やますげの
おもひみだれて こひつつまたむ
○=出典未詳。
【編者注】悲別歌(3180-3210、31首)の第25首。女。
【訓注】玉葛(たまかづら)。幸くいまさね(さきくいまさね=無恙行核)。思ひ乱れて(おもひみだれて=思乱而)。