万葉短歌-悠山人編

万葉短歌…万葉集全4516歌(長短)のうち、短歌をすべてJPG&TXTで紹介する。→日本初!

万葉短歌1474 今もかも1340

2014年08月30日 | 万葉短歌

2014-0830-man1474
万葉短歌1474 今もかも1340

今もかも 大城の山に ほととぎす
鳴き響むらむ 我れなけれども  大伴坂上郎女

1340     万葉短歌1474 ShuD512 2014-0830-man1474

いまもかも おほきのやまに ほととぎす
  なきとよむらむ われなけれども
大伴坂上郎女(おほともの さかのうへの いらつめ)=04-0563歌参照。
【編者注】題詞は、「大伴坂上郎女思筑紫大城山歌一首」。「夏雑歌」三十三首(1465~1497)の第10首。
【訓注】大城の山(おほきのやま=大城山)[福岡県大野城市四天王山、大宰府北西]。ほととぎす(霍公鳥)。鳴き響む(なきとよむ=鳴令響)。我れ(われ=吾)。


万葉短歌1473 橘の1339

2014年08月29日 | 万葉短歌

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万葉短歌1473 橘の1339

橘の 花散る里の ほととぎす
片恋しつつ 鳴く日しぞ多き  大伴旅人

1339     万葉短歌1473 ShuD509 2014-0829-man1473

たちばなの はなちるさとの ほととぎす
  かたこひしつつ なくひしぞおほき
大伴旅人(おほともの たびと)=題詞原文には「大宰帥大伴卿(だざいのそち おほともの まへつきみ)」。第316歌参照。
【編者注】題詞は、「大宰帥大伴卿和(こたふる)歌一首」。「夏雑歌」三十三首(1465~1497)の第9首。
【原文】08-1473  橘之 花散里乃 霍公鳥 片恋為乍 鳴日四曽多寸  大伴旅人


万葉短歌1472 ほととぎす1338

2014年08月28日 | 万葉短歌

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万葉短歌1472 ほととぎす1338

ほととぎす 来鳴き響もす 卯の花の
伴にや来しと 問はましものを  石上堅魚

1338     万葉短歌1472 ShuD509 2014-0828-man1472

ほととぎす きなきとよもす うのはなの
  ともにやこしと とはましものを
石上堅魚(いそのかみの かつを)=原文では「式部大輔(しきぶのだいふ)石上堅魚朝臣」。「神亀三年(726)正月従五位上、天平三年(731)正五位下、同八年正月正五位上。」式部大輔は、「式部省の次官。正五位下相当。式部省は、文官の考課・選叙・典範・大学に関することなどを掌る役所。」この一首だけ。左注の要旨は、大宰帥大伴卿の妻が亡くなった死去した、勅使石上堅魚を遣わして葬送する、そのあと駅使(はゆまづかひ)や大宰府役人らと記夷の城(きのき)[福岡・佐賀県境、現在は佐賀県基山]へ登り、この歌を作る。
【編者注】題詞は、「式部大輔石上堅魚朝臣歌一首」。「夏雑歌」三十三首(1465~1497)の第8首。
【訓注】ほととぎす(霍公鳥)。響もす(とよもす=令響)。卯の花(うのはな=宇乃花)。伴にや来しと(ともにやこしと=共也来之登)。
【編者注-ほととぎすと卯の花】この組合せも万葉びとに愛された。08-1477、08-1482など。現代でも、佐々木信綱作詞、小山作之助作曲の「夏は来ぬ」など。


万葉短歌1471 恋しけば1337

2014年08月27日 | 万葉短歌

2014-0827-man1471
万葉短歌1471 恋しけば1337

恋しけば 形見にせむと 我がやどに
植ゑし藤波 今咲きにけり  山部赤人

1337     万葉短歌1471 ShuD507 2014-0827-man1471

こひしけば かたみにせむと わがやどに
  うゑしふぢなみ いまさきにけり
山部赤人(やまべの あかひと)=原文では「山部宿祢(すくね)赤人」。01-0318歌参照。
【編者注】題詞は、「山部宿祢赤人歌一首」。「夏雑歌」三十三首(1465~1497)の第7首。
【訓注】恋しけば(こひしけば=恋之家婆)。我がやど(わがやど=吾屋戸)。植ゑし藤波(うゑしふぢなみ=殖之藤浪)。咲きに(さきに=開尓)。


万葉短歌1470 もののふの1336

2014年08月26日 | 万葉短歌

2014-0826-man1470
万葉短歌1470 もののふの1336

もののふの 石瀬の社の ほととぎす
今も鳴かぬか 山の常陰に  刀理宣令

1336     万葉短歌1470 ShuD506 2014-0826-man1470

もののふの いはせのもりの ほととぎす
  いまもなかぬか やまのとかげに
刀理宣令(とりの せんりゃう)=「養老五年(721)正月に、従七位下で、山上憶良らとともに東宮(のちの聖武天皇)に侍した。」 この一首だけ。
【編者注】題詞は、「刀理宣令歌一首」。「夏雑歌」三十三首(1465~1497)の第6首。
【訓注】もののふ(物部)。石瀬の社(いはせのもり=石瀬之社)。ほととぎす(霍公鳥)。常陰(とかげ=常影)。


万葉短歌1469 あしひきの1335

2014年08月25日 | 万葉短歌

2014-0825-man1469
万葉短歌1469 あしひきの1335

あしひきの 山ほととぎす 汝が鳴けば
家なる妹し 常に偲はゆ  沙弥

1335     万葉短歌1469 ShuD505 2014-0825-man1469

あしひきの やまほととぎす ながなけば
  いへなるいもし つねにしのはゆ
沙弥(しゃみ)=未詳。沙弥(半僧半俗)作者としては、既出の三方沙弥(02-0123歌)、沙弥満誓(03-0336歌)など。
【編者注】題詞は、「沙弥霍公鳥歌一首」。「夏雑歌」三十三首(1465~1497)の第5首。
【訓注】あしひきの(足引之)。山ほととぎす(やまほととぎす=山霍公鳥)。常に偲はゆ(つねにしのはゆ=常所思)。
【類想歌】03-0266 淡海乃海 夕浪千鳥 汝鳴者 情毛思努尓 古所念  柿本人麻呂
 03-0266 近江の海 夕波千鳥 汝が鳴けば 心もしのに いにしへ思ほゆ  柿本人麻呂


万葉短歌1468 ほととぎす1334

2014年08月24日 | 万葉短歌

2014-0824-man1468
万葉短歌1468 ほととぎす1334

ほととぎす 声聞く小野の 秋風に
萩咲きぬれや 声の乏しき  広瀬王

1334     万葉短歌1468 ShuD503 2014-0824-man1468

ほととぎす こゑきくをのの あきかぜに
  はぎさきぬれや こゑのともしき
広瀬王(ひろせの おほきみ)=「天武十年(681)三月、川島皇子らとともに国史編纂の命を受けた。和銅元年(708)従四位上大蔵卿、養老二年(718)正四位下、同六年一月二十八日没。年齢未詳。」01-0044歌左注(右日本紀曰朱鳥六年壬辰春三月丙寅朔戊辰以浄広肆広瀬王等為留守官・・・)。一首だけ。
【編者注】題詞は、「小治田(をはりだ)広瀬王霍公鳥歌一首」。「夏雑歌」三十三首(1465~1497)の第4首。
【訓注】ほととぎす(霍公鳥)。声聞く(こゑきく=音聞)。萩咲きぬれや(はぎさきぬれや=芽開礼也)。声の乏しき(こゑのともしき=声之乏寸)。小治田(をはりだ)[奈良県高市郡明日香村]。


万葉短歌1467 ほととぎす1333

2014年08月23日 | 万葉短歌

2014-0823-man1467
万葉短歌1467 ほととぎす1333

ほととぎす なかる国にも 行きてしか
その鳴く声を 聞けば苦しも  弓削皇子

1333     万葉短歌1467 ShuD502 2014-0823-man1467

ほととぎす なかるくににも ゆきてしか
  そのなくこゑを きけばくるしも
弓削皇子(ゆげの みこ)=02-0111歌参照。
【編者注】題詞は、「弓削皇子御歌一首」。「夏雑歌」三十三首(1465~1497)の第3首。
【訓注】ほととぎす(霍公鳥)。なかる国(なかるくに=無流国)。鳴く声(なくこゑ=鳴音)。苦しも(くるしも=辛苦母)。


万葉短歌1466 神なびの1332

2014年08月22日 | 万葉短歌

2014-0822-man1466
万葉短歌1466 神なびの1332

神なびの 石瀬の社の ほととぎす
毛無の岡に いつか来鳴かむ  志貴皇子

1332     万葉短歌1466 ShuD500 2014-0822-man1466

かむなびの いはせのもりの ほととぎす
  けなしのをかに いつかきなかむ
志貴皇子(しきの みこ)=01-0051歌参照。
【編者注】題詞は、「志貴皇子御歌一首」。「夏雑歌」三十三首(1465~1497)の第2首。
【訓注】神なびの(かむなびの=神名火乃)。石瀬の社(いはせのもり=磐瀬乃社)[08-1419]。ほととぎす(霍公鳥)。毛無の岡(けなしのをか=毛無乃岳)[奈良県生駒郡三郷町立野辺? 同斑鳩町法隆寺辺?]。


万葉短歌1465 ほととぎす1331

2014年08月21日 | 万葉短歌

- 夏雑歌 ―

万葉短歌1465 ほととぎす1331
2014-0821-man1465
万葉短歌1465 ほととぎす1331

ほととぎす いたくな鳴きそ 汝が声を
五月の玉に あへ貫くまでに  藤原夫人

1331     万葉短歌1465 ShuD498 2014-0821-man1465

ほととぎす いたくななきそ ながこゑを
  さつきのたまに あへぬくまでに
藤原夫人(ふぢはらの ぶにん)=題詞脚注読下しに、「明日香の浄御原(きよみはら)の宮に天の下(あめのした)知らしめす天皇(すめらみこと)の夫人なり。字(あざな)を大原大刀自(おほはらの おほとじ)といふ。すなはち新田部皇子(にひたべの みこ)の母なり。」 02-0104歌参照。「藤原鎌足の娘。五百重娘(いほへのいらつめ)。<夫人>は天皇の妻妾のうち、妃(ひ)と殯(ひん)との間に位する。定員三人。」
【編者注】題詞は、「藤原夫人歌一首」。部立て「夏雑歌」三十三首(1465~1497)の第1首。
【訓注】ほととぎす(霍公鳥)。汝が声(ながこゑ=汝音)。五月の玉(さつきのたま=五月玉)[17-3996=佐都奇。薬玉(くすだま)]。あへ貫く(あへぬく=相貫)。


万葉短歌1464 春霞1330

2014年08月20日 | 万葉短歌

2014-0820-man1464
万葉短歌1464 春霞1330

春霞 たなびく山の へなれれば
妹に逢はずて 月ぞ経にける  大伴家持

1330     万葉短歌1464 ShuD496 2014-0820-man1464

はるかすみ たなびくやまの へなれれば
  いものあはずて つきぞへにける
大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌参照。
【編者注】題詞は、「大伴家持贈坂上大嬢歌一首」。「春相聞」十七首(1448~1464)の第17首。
【訓注】春霞(はるかすみ)。たなびく(軽引)。へなれれば(隔者)[04-0670]。妹(いも)。逢はず(あはず=不相)。


万葉短歌1463 我妹子が1329

2014年08月19日 | 万葉短歌

2014-0819-man1463
万葉短歌1463 我妹子が1329

我妹子が 形見の合歓木は 花のみに
咲きてけだしく 実にならじかも  大伴家持

1329     万葉短歌1463 ShuD491 2014-0819-man1463

わぎもこが かたみのねぶは はなのみに
  さきてけだしく みにならじかも
大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌参照。
【編者注】題詞は、「大伴家持贈和歌二首」、その第二首。「春相聞」十七首(1448~1464)の第16首。
【訓注】我妹子(わぎもこ)。合歓木(ねぶ)。咲きてけだしく(さきてけだしく=咲而盖)[02-0112]。


万葉短歌1462 我が君に1328

2014年08月18日 | 万葉短歌

2014-0818-man1462
万葉短歌1462 我が君に1328

我が君に 戯奴は恋ふらし 賜りたる
茅花を食めど いや痩せに痩す  大伴家持

1328     万葉短歌1462 ShuD491 2014-0818-man1462

あがきみに わけはこふらし たばりたる
  つばなをはめど いややせにやす
大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌参照。
【編者注】題詞は、「大伴家持贈和歌二首」、その第一首。「春相聞」十七首(1448~1464)の第15首。
【訓注】我が君(あがきみ=吾君)。戯奴(わけ)。賜りたる(たばりたる=給有)。茅花(つばな)。食めど(はめど=雖喫)。いや痩せに痩す(いややせにやす=弥痩尓夜須)。


万葉短歌1461 昼は咲き1327

2014年08月17日 | 万葉短歌

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万葉短歌1461 昼は咲き1327

昼は咲き 夜は恋ひ寝る 合歓木の花
君のみ見めや 戯奴さへに見よ  紀女郎

1327     万葉短歌1461 ShuD491 2014-0817-man1461

ひるはさき よるはこひぬる ねぶのはな
  きみのみみめや わけさへにみよ
紀女郎(きの いらつめ)=04-0643歌参照。
【編者注】題詞は、「紀女郎贈大伴宿祢家持歌二首」、その第二首。「春相聞」十七首(1448~1464)の第14首。左注、前歌参照。
【訓注】昼は咲き(ひるはさき=昼者咲)。恋ひ寝る(こひぬる=恋宿)。合歓木の花(ねぶのはな=合歓木花)。戯奴(わけ)。


万葉短歌1460 戯奴がため1326

2014年08月16日 | 万葉短歌

2014-0816-man1460
万葉短歌1460 戯奴がため1326

戯奴がため 我が手もすまに 春の野に
抜ける茅花ぞ 食して肥えませ  紀女郎

1326     万葉短歌1460 ShuD491 2014-0816-man1460

わけがため わがてもすまに はるののに
  ぬけるつばなぞ めしてこえませ
紀女郎(きの いらつめ)=04-0643歌参照。二首のあと、左注読下しに「右は、合歓(ねぶ)の花と茅花(つばな)とを折[を]り攀(よ)ぢて贈る。」
【編者注】題詞は、「紀女郎贈大伴宿祢家持歌二首」、その第一首。「春相聞」十七首(1448~1464)の第13首。「戯奴」割注に「変云和気(かへしてわけといふ)」。
【訓注】戯奴(わけ)[04-0552、若、下記注]。我が手(わがて=吾手)。すま(須麻)[<住む>同源]。食して(めして=食而)。
【編者注-戯奴】この贈答歌に見られる表面上の主客逆転については諸説あるが、依拠本は諧謔的用字だろうとする。