終わった。
私の今の職場の最後の日。
詳しく書くのは面倒くさいが、
わたくし、職場の誰にも悪印象を残さず、
意外っと、いい奴と思われたてたかな、と自負。
ポイントとなる人達には、駐車場まで来て涙のハグをされた。
たった1人、行方を見届けたい心残りの男の子はいた。
小学4年生。
彼にだけ、先週金曜日に辞めると告げた。
彼は戸惑いながら、聞いた。
どこ行くの? ねえ、どこ行くの?
もしかしてディズニーランドに行くの?
そうね、ディズニーランドに行こうかな。
ディズニーランドに住むの?
そうかもね。
シンデレラ城に住むかなあ。
誰か迎えに来たの?
カボチャの馬車が迎えに来たのよ、行こうって。
男の子は、そっかあ・・と下を向いて、
あとは平気そうにしてた。
ディズニーランドは彼の夢の国。
私が本当にシンデレラ城に住むとは、思っていない。
発達障害と印をつけられ、私が彼を1年間担当した。
2年生の時だ。
3年になると、いわゆる「加配」を外れたが、
何かにつけ団体行動が嫌いな彼を私が面倒を見続けた。
普段は私に憎まれ口をきく。甘えているからだ。
私も憎まれ口を返す。
軽く叩いたりぶつかってきたり。それも甘えだ。
私もお腹にパンチするフリをする。
お互いに、「痛い!骨が折れた!」「体にアザができた!」と言い合う。
宿題が分からないと、必ず私を呼ぶ。
「こんなの簡単じゃん! わかるわよ!」
「わかんないから、教えろよー!」
全て、じゃれあいのコミニケーション。
ディズニーランドに行くの?は、
最上級の私に向けた彼の「いい言葉」
彼と私だけに分かる会話だ。
もう会えない、でも素敵な場所に行くんだろう、
それは彼からのエールだと受け取った。
彼の、いつも一番遅く迎えにくるシングルマザーに、
今日は小声で退職を告げた。
私は母親にこれまで何度も言ってきた。
大事な彼の少年時代を薬で眠らせてはいけないと。
薬なんか彼には必要ないと。
母親はそれでも周囲の「この子は普通の子と違う」という
心ない言葉に傷ついて、彼に薬を飲ませてきた。
最後に「大事にしてね。」
と言うと、母親は涙をためて、
「はい。」と答えた。
通じたと思う。私が何を大事にしてと言ったか。
人生の宝物だなあ、と思う。
あの子の、「ディズニーランドに住むの?」の言葉は。
同僚らや他の子とのお別れにも、
あれこれあるけど、
これがダイヤモンドみたいに輝いて私の胸に残った。
私は、
そうよ、彼が言ってくれたように、
ディズニーランドに行こう。
夢の国に住むわ。
ありがとう。