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先日、千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館へ久々に出かけた。
まずはお目当ての企画展、西川勝人展を拝見。
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石膏作品の表面を型押ししたカッコいい図録からほんの少し紹介。
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自然と対峙し、耳を澄まして聴くような作品だった。
印刷物やWeb上ではこの作品の本当の良さは伝わらない。
自然光の中で、あるいは直に素材の質感や、透過性のある素材の奥からの光を感じ、生の花びらによる作品から立ち上る香りなども直にでなければ味わえない。
会場は初日とあって混雑していたが、鑑賞者たちの高揚感が静かに漂っているように感じた。
外光や自然の景観を取り入れたこの美術館の建物と作品が、観るものに心地よさを与えてくれる。
通常美術館は自然光が閉ざされた空間で、ライティングスポットを当て見せるケースが多いが、自然光を入れた展示では観る側も自然体で鑑賞できる。
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今回の展示で特に惹かれたものが『静寂の響き』という作品。
白と黒の四角いオブジェが壁に市松状に24点配置されている。
遠くからは白黒モノトーン作品という感じしかなかったが、近づくと白も黒も何か複雑な色相を呈している。そして壁に体を寄せ厚みの部分を覗くと何枚かの薄い板状のアクリルガラスの層があり、それを細い針金で固定してある。その銀の細い針金の固定の仕方も一様ではなく、繊細な細部にも興味をそそられた。
アクリルガラスの層には黒ではないペパーミントグリーンのような色も覗いている。
アクリルガラスの層には黒ではないペパーミントグリーンのような色も覗いている。
美術作品と着物は、姿かたちは違うが、そのような表層のことではなく自然を見つめた作品に立ち現れる心地よさには共通のものがある。
織物も経糸や緯糸や隣り合う色糸、あるいは襲の色目など、重なり合う布の関係で生まれてくる色がある。
真珠の色は白だけでなく、ピンクや黄色、ブルー、グレーなどいろいろあるが、その下に重なる層と光が干渉しあって生まれてくるという。そんなことも少し連想させる。
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同じ作りの24点からなる『静物』という作品も、まさに草木染の色を感じさせる。この作品の並ぶ部屋は大きな窓から木々の緑が見えている。
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そしてもう1点は『ラビリンス断片』という作品。
実はこの広い会場へ入った時には、迷路のように繋がれた高さ1m程の白い展示台を見て、美術館も什器に随分凝ったことをするなあ・・と思っただけなのです。(#^^#)
実はこの広い会場へ入った時には、迷路のように繋がれた高さ1m程の白い展示台を見て、美術館も什器に随分凝ったことをするなあ・・と思っただけなのです。(#^^#)
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迷路は小部屋のようにな個室の感じもありながら、全体を見渡せる解放感もあり、観ている人々、話をしている人々も感じられる。
迷路を迷わず(!?)順に進めば、作品を鑑賞しつつ自然と出口へ誘われる。振り返り見渡せば余韻を味わうこともできる。迷路を歩きながら観るという行為を、他の誰かもそれを視野の片隅に入れながら移動していく…。そんな動きも取り入れた作品なのか!?
常設展も充実しているが、特に観たい現代アートの作品を駆け足で回った。
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野外彫刻もあちこちに。金属を使った上の作品はフランク・ステラ「リュネヴィル」
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第二代社長、川村勝巳と建築家、海老原一郎の二人の関係から生まれた建築も素晴らしい!!
来年1月に運営に関することで休館になるという。
交通の便は悪いが、コレクションも建築も庭も素晴らしいのにとても残念だ。
交通の便は悪いが、コレクションも建築も庭も素晴らしいのにとても残念だ。
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赤い彫刻は清水久兵衛「朱甲面」
工房からは3時間ほどかかるが小旅行と思って、秋も深まる頃に再び訪れたい。
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光線が変わり、木々の葉のも変化する。作品とともに鑑賞するのが楽しみだ。
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千葉県佐倉市でも存続を求める署名活動をしている。
千葉県佐倉市でも存続を求める署名活動をしている。
署名をお願いしたい。
企業内のことではあるけれど、公的な役割のある美術館。
市民が声を上げることも大切。文化、芸術は市民が育てる。
市民が声を上げることも大切。文化、芸術は市民が育てる。
自然と作品と建築が響きあう、稀なる美術館だ。
何とか、この地で存続させてほしい。
近郊の方はぜひお出かけください。わざわざ行く価値のある企画展、そして美術館です!