中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

紬塾 第4回 「帯揚げを染める」―草木の色とは

2024年07月25日 | 紬塾’21~’24
今まで帯揚げの染は、染織実習コースの方達だけにしていたのですが、来年度に染織実習コースが出来るか不透明ですので、今期の基礎コースの方達には特別に、染色の回を増設しました。

まだ梅雨の明けきらないどんよりとした日の染色実習となりました。
本来は晴れの日にしたいところですが、遠方の方が3名いらして、早目のチケット予約の都合もあり、それでも工夫をすればなんとかやれると判断し決行しました。

草木染は天日に干し、早く乾燥させたいので、ただ室内で乾けばいいというものではなく、色を見極める際の光も欲しいので、曇りの中ではその判断が難しいのです。
染めるということは染液に浸け、加熱し、色を付けるだけの行為ではありません。

染めるということは、植物の採集時期や、チップの作り方、煮出し方、染液を直ぐ染めたほうが良いもの、時間を置くほうが良いもの等の違い、また糸や布の湯通しや洗い、加熱を止め、温度が下がっていく時間も、天日に干すこと、空気酸化による変化の時間なども含まれます。

生木による草木染は本当はとても難しいものです。45年以上続けても難しいです。
しかし、一般の方にも身近な自然物にこんな不思議な生き生きとした深い色の世界があるのだということを、ほんの一端でも知ってもらいたく続けてきました。

色名では語れない、自然な生きた色。色とは何なのでしょう?

以前、武蔵野美術大学工芸工業科テキスタイルデザインの学生たちに桜染の糸を見せたら、みんなとても感動してくれて、ある学生は見たことのない色と言っていました。
講義の後の感想に、「草木染めの色の話がとても興味深かったです。普段、パソコンや染料や絵の具をまぜて色を作っているけど、植物に宿っている無限の色を引き出すという草木染めの感覚はそのどれとも違っていて、本当におもしろいと思いました。日本の四季をこれまで以上に感じ、色の感覚を大事にしていきたいと思いました。」と綴ってくれました。

パソコンでも自由に色は作れるけれど、そんなことではない、根本的な質の違いがあるのです。
私達は自然物のありのままの色にもう少し目を向けてもいいのではないでしょうか?
あんな色、こんな色が欲しいとかではなく、まずはどんな色になるのだろう・・という気持ちが染色では大切です。

今まで参加のみなさんは柔らかな頭で、素直に染め上がる色を見詰めてくれたように思います。

今週末には、別グループで糸染めを含め、染の実習をやります。(;^_^A💦


媒染や、干している間の時間を使って、自宅で半衿や、無媒染でも染められる草木染のことなどレクチャーをしました。

今までの方でも自宅でも帯揚げや半衿を染めてみたという方もありました。
毒性のない、食用にもなる植物でしたら、キッチンのステンレスボールなどで染めることもできます。染色は料理の感覚が大切です。
工房の庭には食べられる実のなる植物が沢山あります。
※媒染剤をキッチンで使う場合は取り扱いに十分注意が必要です。染色の基礎を学んでからにして下さい。

上の画像の竿に掛けている薄いピンクの柿の染は、曇り空でしたので少しでも早く乾かすためにエアコンの送風と扇風機を当てています。あらかた乾くのを待ち、2回目の染に入りました。



こちらは桜で、3枚ともアルミ媒染のものです。
1回目の染めでは、1煎目だけを使い、2回目の染めで少し赤味の多い2煎目を足しましたので、オレンジ系になりました。湿度高く、乾ききりませんでしたので、家で各自、干してもらうことにしました。

私は薄い色の帯揚でも2工程、3工程と何日もかけ染め重ねるのですが、半日の講座ではそれはかないません。ただ、もし褪色などがあれば、その時また染め重ねることもできます。生地は丹後の上等のものですので、長く使ってほしいと思います。

内容などは過去の紬塾、染織実習のブログもご覧下さい。
2023.7月 2018.07月



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