おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

トゥルー・ロマンス

2021-07-04 08:19:02 | 映画
「トゥルー・ロマンス」 1993年 アメリカ


監督 トニー・スコット 
出演 クリスチャン・スレイター
   パトリシア・アークエット
   デニス・ホッパー
   ヴァル・キルマー
   ゲイリー・オールドマン
   ブラッド・ピット

ストーリー
デトロイトのコミック・ブック店で働くクラレンス(クリスチャン・スレイター)は、エルビス・プレスリーとカンフー映画に夢中の若者。
誕生日の夜、場末の映画館で千葉真一の映画3本立てを観ていた彼は、アラバマ(パトリシア・アークェット)というキユートな女の子と知り合う。
ベッドの中で彼女は、実はクラレンスの店のボスから、「誕生日のプレゼントに」と頼まれたコールガールであることを明かすが、2人は激しく愛し合い、翌日には結婚した。
クラレンスは、アラバマの元ヒモであるドレクセイ(ゲイリー・オールドマン)に話をつけに行くが殺されかかり、逆に相手を殺してしまった。
あわてて持ち帰ったスーツケースには、大量のコカインが入っていた。
翌日、クラレンスは元警官の父、クリフォード(デニス・ホッパー)に会い、妻のアラバマを紹介すると共に、警察の捜査状況を聞く。
2人がロサンゼルスに向かった後で、ヴィンセンツ(クリストファー・ウォーケン)と名乗る男がクリフォードの元へ現われ彼を拷間し、2人とコカインの行方を突き止めようとした。
シラを切るクリフォードを殺した男は、クラレンスたちの後を追う。
クラレンスはヤクの取引きの話をまとめる。
取引きの当日、ダイムス刑事(クリストファー・ペン)ら捜査陣と、デトロイトから追ってきた組織の男たちが現場のホテルに向かう。


寸評
クエンティン・タランティーノが脚本を担当しているが、まるで監督も行っているような描き方。
僕たちの世代の映画ファンなら涙が出てきそうになるくらい楽屋落ち的な映画の会話があちこちで交わされる。
スティブ・マックィーンの名前だったり、彼の主演作「ブリット」が出たかと思うと、「ドクトル・ジバゴ」が隠語として登場してくる。
制作や興行成績をつかって犯罪話を行うなど、見ていてわきの下をくすぐられるようなものを感じさせる。
日本のB級映画ファンであるタランティーノらしく、千葉真一の出演作をスクリーンにも登場させている。
ベトナム戦争映画としてフランシス・フォード・コッポラの「地獄の黙示録」やマイケル・チミノの「ディア・ハンター」が語られる。
僕はもうそれだけで、"たまらん"ですわ。
僕はビートルズのファンだったが、主人公のクラレンスがエルビス・プレスリーを熱く語るのもくすぐられる。

交わされる会話もゾクッとさせる粋なものも多い。
この映画の名シーンとも言えるのが、主人公の父親を演じるデニス・ホッパーと、マフィアの幹部を演じるクリストファー・ウォーケンの対話シーン。
デニス・ホッパーが死を覚悟して、相手を挑発するようにシチリア人の歴史を語る。
笑いながらその話を聞いていたクリストファー・ウォーケンが怒りを爆発させ、「人を殺すのは1984年以来だ」と言ってデニス・ホッパーの父親を射殺するシーンである。
二人の会話のやり取りが面白く、特にデニス・ホッパーの不敵さに凄みがあった。
誰も声荒げない静かな会話が続くが、とてつもない緊張感を生み出していく演出がスゴイ。
殺してしまうとクラレンスの行先を聞き出すことは不可能になってしまう。
3年ぶりにあった息子を、自らの命と引き換えに守るための愛を感じる名場面となっている。

ラストは監督の要望でハッピー・エンドに変更されたそうだが、オリジナル脚本では二人は死ぬことになっていたとのこと。
途中でアラバマが麻薬を持ち逃げするというマフィアの会話があるので、僕はてっきりアラバマがクラレンスをだましていて、麻薬を独り占めしようとしているのかと思っていた。
その延長線上で二人は死ぬことになるのかと・・・。
それはそれとして、最後の場面は意表を突く展開でアッと言わせる。
クラレンスとアラバマ、悪玉映画プロデューサー一味、彼等を一網打尽にしようとする警官隊、そこに加わる麻薬を奪われたマフィア一味。
どうなるんだ、この状況って思わせる展開はタランティーノらしい。
アラバマが滅茶苦茶やられる暴力描写をはじめ、激しいシーンを盛り込んでいることも彼らしい。
いやいや、これはトニー・スコット作品なんだけど・・・。
最後に二人が死んでいれば「俺たちに明日はない」だったし、この映画は70年代のアメリカン・ニューシネマへのオマージュ作品だったのかもしれない。


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