おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

敦煌

2022-12-14 07:24:35 | 映画
「敦煌」 1988年 日本


監督 佐藤純彌
出演 西田敏行 佐藤浩市 中川安奈 新藤栄作 原田大二郎 三田佳子
   柄本明 綿引勝彦 蜷川幸雄 鈴木瑞穂 田村高廣 渡瀬恒彦

ストーリー
11世紀の宗。
趙行徳(佐藤浩市)は科挙の最終試験を受けるため首都開封府にやってきた。
行徳に出された問題は「西夏対策を述べよ」であったが、西夏が単なる辺境だと思っていた行徳はまともに答えることが出来ず、受験に失敗する。
失望感のあまり自暴自棄になっていた行徳は、街で西夏の女を助けた礼として、西夏への通行証をもらった。
西夏の文字に興味をもった趙は西域へと旅立つ。
灼熱の砂漠を尉遅光(原田大二郎)の隊商と共に歩いていたが、途中で西夏軍漢人部隊の兵士狩りに会い、無理矢理部隊に入れられてしまう。
隊長の朱王礼(西田敏行)は文字の読める趙を重用した。
漢人部隊がウイグルを攻略した際、趙は美しい王女ツルピア(中川安奈)と知り合い恋におちた。
二人は脱走を試みるが失敗、趙は西夏王・李(渡瀬恒彦)の命令で都へ文字の研究に行くことになった。
二年後、趙が戻ると、李はツルピアと政略結婚しようとしていた。
趙も朱にもどうすることもできなかったが、婚礼の当日ツルピアは自殺した。
ツルピアに思いを寄せていた朱は怒り、敦煌府太守・曹(田村高廣)を味方につけて李に謀反を起こした。
敦煌城内で死闘を繰りひろげる漢人部隊と西夏軍本部隊。
初めは漢人部隊が優勢だったが敦煌城に火矢が放たれ、朱側は火に包まれた。
戦うことより文化遺産を戦火から守ることに使命を見出していた趙は、教典や書物、美術品などを城内から莫高窟へ運び込んだ。
それから900年が経ち、莫高窟からこれら文化遺産が発掘され、敦煌は再び世界の注目を集めたのだった。


寸評
1900年に莫高窟で封じられていた大量の経典や写本などが発見された。
なぜ密室とも言える場所に封印されていたのかについては2説があるらしい。
一つは敦煌が西夏により占領された際に経典を焚書されることを恐れて隠したという説で、井上靖の小説「敦煌」はこちらを採用している。
二つ目は不必要なもの・価値のないものをとりあえず置いておいたという説で、現在ではこちらが定説らしい。
映画では当然一つ目の説を描いている。
900年も経ってから発見されると言う劇的な物だが、映画自体は何とも言えず面白みに欠けていると思う。
1989年の第12回日本アカデミー賞で最優秀作品賞や佐藤純彌の最優秀監督賞など7部門にわたって受賞しているのだが、日本アカデミー賞に疑問を持っている僕はこの作品を評価していない。
僕が中国の歴史に詳しくなく、時代背景がまったく解っていないことによるところが大きいのだろうなとは思う。
                                         渡瀬恒彦が演じる李元昊が指揮する西夏が勢力を拡大していて、西田敏行の隊長が率いる部隊が転戦を繰り返しているのだが、一体何処の誰と戦っているのかさっぱり分からない。
趙行徳は滅ぼされたウイグルの王女ツルピアと恋に落ちるるが、ツルビア一人がどのようにして生き延びていたのかも不明で、父親が戦う場面はなく晒し首があるだけなのも肩透かし感がある。

趙行徳は西夏の都へ文字の研究に行くことになる。
有名な西夏文字である。
学習している場面で西夏文字の説明がなされるが上手くできているなと知った。
趙行徳が二年後に帰ってくるとツルビアは李元昊と結婚することになっているのだが、そこに至る経緯は描かれていないのでこれも肩透かし感がある。
結婚しなければウイグル人を毎日5人づつ殺すと言われて渋々承諾した結婚なのだが、趙行徳とツルビアの恋を描いていたのだから、この省略したような描き方はないだろうと思う。
ましてや趙行徳から預かっていたツルビアに隊長の朱も恋していたと言うのだから尚更である。
朱王礼がツルビアを李元昊に召し上げられた屈辱はラストに向かう大きな伏線の筈だったのだがなあ。
ツルビアと彼女を巡る男たちの物語は、この映画には関係ないと言わんばかりに描かれていない。
そのように散漫な部分はあるのだが、人民解放軍をエキストラで使用した砂漠地帯での戦闘場面はCG処理ではないエキストラ使用の迫力が出ているし、砂塵が舞う中での遠景での戦いシーンは美しくもある。
何事につけても人海戦術をやると中国には勝てない。
その利点はこの映画においては生かされている。

そしていよいよ李元昊が敦煌に攻め込んでくる。
謀略で李元昊を亡き者にしようとしていた朱王礼は討ち損じ、反撃してきた李元昊に何度も突撃を繰り返す。
攻城戦はそれなりの描写がなされているが、李元昊が突撃を繰り返し滅んでいく様子には力を削いでいる。
力点は書物を守ろうとする趙行徳たちの行動に置かれていき、900年もの間埋もれていたわけが示される。
尉遅光によって関係者が殺されるのは分かるが、その場面はなく結果だけが示される。
中国ロケを行った努力は認められるが、所々に手抜き感を感じて物語として物足りなさを感じる大作だ。


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