東京の大きな駅で、荷物をコインロッカーに預けた時のことである。
あちこち歩き回り、駅に戻ると、はたと足が止まった。
ない!
預けたコインロッカーが、どこにも見当たらないのだ。
預けたのは、一階フロア改札口付近。しかし、何だか様子が違う。近
くを探し回ってみても、どうも記憶にない景色なのだ。
わずか1時間たらずのうちに、改築工事をしてしまったのだろうか。
いくら、東京の開発のスピードがすさまじいとは言え、まさかそんなは
ずはない。
だが、そうでなければ、これはいったいどういうことなのだろう。荷
物には、大切な物も入っているし、困り果ててしまった。
けれども、人間困ると、知恵が生まれてくるものである。
電車を降りた位置は、幸いにもはっきりと記憶している。そこで、入
場券を買い(こんな時のために、売っているのかもしれない)、電車を
降りたホームに向かった。
そこまで来ると、もう後は簡単である。人間の記憶というのは、体に
自然に刻み込まれているようだ。あとは、その記憶をたどっていけばい
いのである。
あれほど探して見つからなかったコインロッカー。忽然と姿を消して
しまったかのように思われたコインロッカーが、あっけなく目の前に現
れた。
なぜ、さっき分からなかったのだろう。
ふと駅ビルの表示を見た。地下1階になっている。ひょっとすると、
探したのは地上1階? 道理で見つからなかったはずである。ようやく
謎が解けた。
預けた時に、外の建物が見え、表に道路が走っていたので、地上1階
と勘違いしてしまったのだ。
それから数年間、こんな失敗は二度と繰り返したことがない。なぜな
ら、ここ数年間、東京を訪れる機会がなかったからである。
そして、今、再び東京にやって来た。やはり、ない。またもや、コイ
ンロッカーのありかを見失ってしまったのである。
いや、あわてることはない。こちらには、経験という強力な武器があ
るのだ。
入場券を求めてホームに入ろうとした。しかし、そこでがく然とした。
どこで降りたのか、さっぱり覚えていないのだ。
どうやら数年の時が、私の体から記憶力を盗んでいったようだ。
結局、あちこちさまよった末、偶然にも見つけることができたのであ
る。
コインロッカー。私にとっては、あのスペースに入りきれないほどの
苦い思い出が、たくさん詰まった場所である。
2年ほど前の話です。
それからは、残念ながらまだ東京を訪れる機会がありません。
あちこち歩き回り、駅に戻ると、はたと足が止まった。
ない!
預けたコインロッカーが、どこにも見当たらないのだ。
預けたのは、一階フロア改札口付近。しかし、何だか様子が違う。近
くを探し回ってみても、どうも記憶にない景色なのだ。
わずか1時間たらずのうちに、改築工事をしてしまったのだろうか。
いくら、東京の開発のスピードがすさまじいとは言え、まさかそんなは
ずはない。
だが、そうでなければ、これはいったいどういうことなのだろう。荷
物には、大切な物も入っているし、困り果ててしまった。
けれども、人間困ると、知恵が生まれてくるものである。
電車を降りた位置は、幸いにもはっきりと記憶している。そこで、入
場券を買い(こんな時のために、売っているのかもしれない)、電車を
降りたホームに向かった。
そこまで来ると、もう後は簡単である。人間の記憶というのは、体に
自然に刻み込まれているようだ。あとは、その記憶をたどっていけばい
いのである。
あれほど探して見つからなかったコインロッカー。忽然と姿を消して
しまったかのように思われたコインロッカーが、あっけなく目の前に現
れた。
なぜ、さっき分からなかったのだろう。
ふと駅ビルの表示を見た。地下1階になっている。ひょっとすると、
探したのは地上1階? 道理で見つからなかったはずである。ようやく
謎が解けた。
預けた時に、外の建物が見え、表に道路が走っていたので、地上1階
と勘違いしてしまったのだ。
それから数年間、こんな失敗は二度と繰り返したことがない。なぜな
ら、ここ数年間、東京を訪れる機会がなかったからである。
そして、今、再び東京にやって来た。やはり、ない。またもや、コイ
ンロッカーのありかを見失ってしまったのである。
いや、あわてることはない。こちらには、経験という強力な武器があ
るのだ。
入場券を求めてホームに入ろうとした。しかし、そこでがく然とした。
どこで降りたのか、さっぱり覚えていないのだ。
どうやら数年の時が、私の体から記憶力を盗んでいったようだ。
結局、あちこちさまよった末、偶然にも見つけることができたのであ
る。
コインロッカー。私にとっては、あのスペースに入りきれないほどの
苦い思い出が、たくさん詰まった場所である。
2年ほど前の話です。
それからは、残念ながらまだ東京を訪れる機会がありません。