寒来光一の日替わり笑話

お笑い作家・寒来光一(さむらいこういち)が、毎日(たぶん?)、笑いのネタをお送りします。

救急車(笑ートエッセイ)

2010-09-01 00:43:50 | 笑ートエッセイ
 自慢ではないが、救急車に運ばれた経験がある。
 朝、目が覚めて立ち上がろうとすると、腹がずきんと痛むのだ。
少し様子をみていれば治まるだろうと思っていたが、治まるどころ
かますます痛みがひどくなる。
 ついにはうめき声をあげるほどの猛烈な痛みとなり、家族に救急
車を呼んでもらう羽目になった。

 車がほどなく到着。すぐに担架に乗せられ、車内に運び込まれる。
 家族が、隊員に状況を伝えている。無線で、どこの病院に搬送す
るのか連絡をとっているようだ。
 運ばれるのが自分自身の体なのだから、何だか不思議な気分であ
る。気のせいだろうか。さっきより、痛みが治まってきたようであ
る。

 10数分後、病院に着く。
 幸か不幸か、痛みが完全に消えている。もう何ともないのだ。し
かし、だからと言って、担架から降りて、走り回るわけにもいかな
い。
 何しろ、担架で運ばれてきた救急患者(私のこと)を、病院に来
ている多くの人間が、同情あるいは好奇の眼差しで見つめているの
だ。
 そんなことをすれば、せっかくここまで運んでくれた救急隊員や、
心配そうに付き添ってくれた家族の顔が丸つぶれである。いや、何
よりも、私自身の立つ瀬がないではないか。

 当然のことながら、私は相変わらず担架に横たわり、腹を手で押
さえ、顔をゆがめる仕草をした。私の名演で、どうにかその場のピ
ンチ(?)をくぐり抜けることができたのだ(ひょっとして、目の
鋭い一人の救急隊員だけは、見抜いていたかもしれないが)。

 結局のところ、軽い結石との診断で、数日間入院することになっ
た。その間にも、断続的にあの痛みが襲ってきて、苦しめられるこ
とになった。
 しかし、演技のことは黙っていたおかげで、スタッフや家族の手
厚い看護を受けることができた。

 やはり、救急車に乗せられた場合は、万が一、痛みが治まったと
しても、苦しい表情を保っておくに越したことはないようである。



  いやあ、民主党代表選、サプライズの結末となりましたね。
  マスコミの皆さんも、ネタがなくならずにホッとしたのではな
  いでしょうか。 

コメント
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