生き残れない仕事
新型コロナウイルスの影響で働き方は一変。3密を避けることでAI化やロボット化の波は一気に加速する結果に。果たして、コロナ禍によって消えゆく職業とは……? 近い将来、訪れるであろう大変革を予測する!
9/16/2020
今年2月、ローソンは手と顔情報で生体認証できる技術を搭載した「レジなし店舗」をオープン。この技術があればレジ打ちも不要に
キーワードは非接触と自動化。コロナでなくなる仕事とは?
コロナの影響で多くの産業が衰退するなか、なくなる仕事も生まれるはず。今後の変化について「人との接触が必要、かつ自動化できる仕事は激減する」と語るのは、人事ジャーナリストの溝上憲文氏だ。 「『3密』を避けた非接触が推奨され、リモートワークができない対面型の仕事は淘汰されます。
同時に、懸念すべきが仕事の自動化。以前から、多くの業務がAIやロボットに置き換えられると予測されていましたが、実現には10年、20年かかると目されていました。しかし、コロナで非接触と効率化が求められ、各社で一気に業務の自動化へ舵を切っています」
経済評論家の加谷珪一氏も、こう続ける。 「コロナで直接の被害を受ける業種だけではなく、以前から『いずれなくなるだろう』と思われていた業種が、コロナを機に消滅への速度を上げている印象です。アメリカの政治学者であるイアン・ブレマーが『10年間かかるとされていた変化が、コロナの影響で1~2年の間に起こるはず』と提言して話題になりましたが、その通りの事態が起きつつあるのです」
では、具体的にはどんな職種が消えるのか。まず可能性が高いのは業績不振業界の販売店員だ。
「業績が悪化すれば、規模の縮小やコストカットが進みます。加えて、感染防止対策のため、細やかなサービスよりも非接触が求められる以上、接客業の人員は減らされます。運休の急増や利用者数の激減が進む飛行機の客室乗務員や新幹線などの車内販売員は、真っ先に対象になるはず。そのほか、アパレル業の販売員や、ホテルや旅館の宿泊対応係なども同様に人員整理が進むでしょう」(加谷氏)
「外食産業では、ロイヤルホストやコロワイド、ワタミ、吉野家といったチェーン店で店舗閉鎖が進み、店舗総数が減りつつあります。また、くら寿司やローソンなどの一部店舗では、自動案内や自動会計システムを導入し、省力、省人化を推進。そうすればウェイトレスや小売業販売員なども、不要になってゆくでしょう」(溝上氏)
「ロイヤルホスト」のロイヤルHDは約70店舗を’21年末までに閉店すると発表。すかいらーくHDも7月から深夜営業を全店で廃止
そして、密集回避の風潮により、被害を受けるのが以下の職種だ。
「生花業界は冠婚葬祭で成り立っていましたが、イベントがなく、需要が激減。生花販売員も減少するでしょう。密集できないのはエンタメ業界も同様。
イベントや舞台の運営業者はもちろん、タレントや俳優などの芸能人、アーティストなどは発表の場を失うことで、仕事がなくなる可能性も
営業、事務に危険信号。迫り来る業務消失の波
オフィスでは、かつては花形と言われた営業職に危険信号が。
「非接触が求められる今、対面営業は敬遠される。それを受けてか三菱UFJフィナンシャル・グループも営業人材1000人を富裕層向けビジネスに移管すると発表。家庭や企業への訪問営業は、今後は消え去るのでは」(溝上氏)
また、コロナ後、自動化が進むのが、金融保険業の事務員だ。 「三菱総合研究所は、’18年から’30年までの間に、AIを含むロボット技術の進化による影響と、ネットを通じたグローバル競争の加速化で、日本のルーティン業務の従事者が約430万人減少するという試算を発表しました。なかでも大幅な変化があるのが事務員で、’20年代から120万人過剰になると予想。これが、コロナ禍によって拍車がかかっていくことは間違いない。
中でも、法規制などの関係で、特にルーティン度が高いのが金融保険業です。実際に、大手各社を中心に、生命保険、損保、証券、銀行などの業務の自動化が着々と進んでいます」(同)
同じく事務作業ゆえ、今後不要とされるのがサポート業務だ。 「補佐的な仕事はルーティンが多いので、デジタルツールに置き換えやすい。弁護士の補佐をするパラリーガルや病院の医療補助、営業補佐や秘書などは、すでに多数のツールが存在しており、置き換えは時間の問題です」(加谷氏)
そして、リモートワーク期間に話題になった印鑑不要論。これによってなくなるのが、経理だ。 「印鑑がなくなれば、印鑑業界も打撃を受けますが、同時に激減するのが経理などのバックオフィス業務。ハンコ業務がなくなれば、途端に業務は効率化されるはず。最近は経理ソフトを使用する企業も増え、人員整理は進むと思われます。
あとは公務員。今回のコロナにおける給付金配布の対応の悪さからもわかりますが、日本の役所は国際的に見てもデジタル化の水準が低いことが露呈しました。デジタル化が進めば、公務員の数は減るでしょうね」(同)
また、景気悪化でコストカットが進み、存在感を問われる業種も。 「業績不振で企業や個人の間でコストカットの意識が働き、さまざまな業界で仲介を通さないケースが増えるはず。その最たる例が、旅行仲介業。ネットで個人が直接予約できる時代、わざわざ手数料を払う人は少数派です。その存在意義が問われるでしょう」(同)
自分の仕事がなくなる。そのリスクは決して他人事ではないのだ。
コロナでなくなる職種ランキング
コロナの影響でなくなる職業は何か。加谷氏、溝上氏の見解と社会情勢を基にSPA!編集部が独自のランキングを作った!
1位 車内販売員&客室乗務員 業績悪化や対人サービスの減少で人員整理が進みそうだ。「LCCなどをはじめ、そもそも乗り物はコストカットが進んでいて、これ以上下げられないというところまできた。そんな状態を考えると車内や機内のサービスはほぼ必要なくなると思います」(加谷氏)
2位 個人営業 いわゆる「足で稼ぐ営業」文化は消え、データ分析を用いた営業支援システムが主流に。「以前は営業では経験や勘が重要視されましたが、データ分析によって割り出された、確度の高い営業先を当たったほうが効率も良い。生産性も上がるはずです」(加谷氏)
3位 金融保険業事務 社内ルールや法規制が多い金融業は、どうしてもルーティンになりがちなので、RPA(Robotic Process Automation)に代替される流れに。「この動きを受け、多くの金融系企業で一般事務職を別の専門職に異動させるという流れが生まれつつあります」(溝上氏)
4位 経理 クラウド型の経理システムなどの普及が進めば、人員削減される可能性が高い経理職。「日本はもともと管理部門が多すぎる。IT技術が今後ますます進めば、経理のみならず、人事、総務などの管理部門でも、同様に人員整理が進んでいくはずです」(加谷氏)
5位 パラリーガル 弁護士事務所などに勤務するパラリーガルも、法律業務管理ツールの浸透によって、仕事が激減する可能性も。「コロナ前は事務所にいればお茶出しなどの雑用を兼務することもありましたが、対面の顧客相談が減る以上、ニーズも下がりそうです」(加谷氏)
6位 アパレル販売員 対面接客となるアパレル販売員。外出自粛が進めば、洋服の需要も減っていく。「コロナでECの需要が増えたため、店舗スタッフはますます不要に。洋服だけでなく、化粧品や雑貨小物販売店でも同様に、接客要員は減っていくでしょう」(加谷氏)
7位 外食接客業 コロナ禍で店舗数の激減に伴い、ウェイトレスをはじめとする外食接客業も下火に。デリバリー需要が伸びているため、宅配員需要はあるかと思いきや「ウーバーイーツのように、宅配業には副業希望者が多数参入するので、競争が今後はより高まるはず」(溝上氏)
8位 ホテル従業員 Go Toトラベルなどの施策は取られつつも、回復の目途はいまだ立たない観光業。ホテルや旅館のみならず、「ビジネス需要にしても、今後はリモートワークで出張自体が減るはず」(加谷氏)との意見があるため、ビジネスホテルの接客要員も減少する可能性も
9位 仲介業 旅行代理店のみならず、商社や広告代理店も危機感はぬぐえない。「グローバル展開が難しくなる以上、鉄鋼やエネルギー資源関係の仲介を扱う商社の雲行きが怪しくなる」(溝上氏)、「広告も各社が厳選するため、広告代理店の業績も厳しくなるかも」(加谷氏)
10位 医療補助 コロナでその必要性が再認識された医療従事者。「みずほ証券が発表したデータでは、なくなる可能性が高い職種として医療補助がトップに挙がっていました。医師や看護師、検査技師などに比べて、仕事内容が自動化しやすいことが一番の要因です」(溝上氏)