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NHK2題

2021年04月10日 | 生活

DHCなどを“実名報道”のNHK 民放にはできない“攻める”ニュースの意義を考える

水島宏明 | 上智大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター

 YAHOOニュース(個人) 4/9(金)

 筆者はテレビ報道の現場を経験し、いまは研究する立場でニュース番組や情報番組、報道ドキュメンタリーなどを網羅して見ている人間だ。

 ニュース番組は毎日ほとんどを見るのでテレビ局や番組による放送姿勢の変化には人一倍敏感なつもりだが、4月9日(金)、朝のニュース番組「おはよう日本」には驚いた。 

 政治報道などで忖度が目立っていた最近のNHKでは珍しいほど「攻めの姿勢」に徹していたからだ。テーマは「差別」の問題だった。

DHCなど企業名を実名で報道

 「攻め」の姿勢は、一つ目は特定の人種や民族などへのあからさまな「差別的な表現」や「ヘイト表現」などで人権意識を問われている企業の「実名」を出して報じた点に表れていた。

 名前を出されたのは大手化粧品会社のDHC。昨年11月、企業の公式サイトのコラムで競合他社のCMに起用されたタレントについて根拠を示さないで「ほぼ全員がコリアン系」だと記述。その上で在日コリアンをさげすむような表現をしていると報じた。

 2月に東京・新宿区で30人ほどの人たちが抗議のために署名を集める様子が流された。

 この活動に参加したジャーナリストの安田浩一さんは次のように話す。

「偏見を植え付け、差別をあおる行為がそのまま会社の名前で流布されていること、これは絶対に看過できない」

在日コリアン4世でDHC製品を愛用してきたという匿名の女性は戸惑いを隠せない印象で話す。

「大企業がここまで露骨にしてきたかと思うとびっくりしましたね。開き直ったかのようにずっと(ホームページ上に文章を)載せているのはただの失言という域を超えて、私たちが直接攻撃されているようなそんな気持ちにもなってしまいます」

 筆者は今回のNHKの報道の仕方について「攻め」の姿勢を見せながらも、他方で慎重な姿勢を維持していると感じた。その理由は「DHCを愛好する在日コリアン」を登場させたからだ。差別やヘイトが「許されない」行為だとしても、経営者が思想信条から「確信犯」としてやっている場合にはなかなか改善するよう説得することは難しい。

 だが、営利企業にとっては客が離れることは避けたいものだろう。DHC製品を愛好するユーザーのなかにも在日コリアンがいて、ホームページの掲載が続くことで戸惑っている様子を示したことは説得力がある伝え方だった。

 ふだんは企業を取材しても企業名をなるべく出さないなど、企業名の報道には民放と比べても驚くほど慎重なのがNHKだ。それが企業名を出して、しかも「差別」というネガティブな文脈で報道するのはよほどの覚悟と自信があってのことだろう。裏付け取材や報道の仕方も検討した上でのことだと思う。

他の企業も実名で

 2つ目の“攻め”は、DHCだけの問題にしないで他の企業についても取り上げていたことだ。東証1部上場で従業員が1000人ほどの企業で起きた裁判。在日コリアンの女性が社内の民族差別的な行為によって精神的な苦痛を受けたとして会社を相手取る裁判を起こし、損害賠償を求めて一審で勝訴したケースをやはり企業名を明かす形で紹介している。経営理念に関する従業員の感想文で会社側が抜粋した文章に「(韓国人は)嘘を付くことを習慣としている民族(原文ママ)」など差別的な表現が目立つようになって苦痛を感じていたという。NHKはこの会社の人事責任者にもきちんとテレビカメラでインタビュー取材をしていた。文章を読み上げたようなインタビューで説得力がある釈明ではなかったが、会社側をカメラの前に出したことは評価できる。

 他の企業も出したことで、この問題がDHCというひとつの企業だけの問題にとどまらずに他の企業にもある大きな社会問題なのだというスタンスをNHKは見せた。

相手側の言い分をそのまま伝えた

 そして、3つ目の“攻め”はその企業に対して取材班が取材を申し込んで、企業側の「言い分」をそのまま伝えていた点である。

 DHC吉田嘉明 代表取締役会長・CEOからの回答文を文字で写し出しながら、アナウンサーがきっちりと読み上げていた。多少長くても、理解不能な言葉であっても、相手の言い分を伝えるという報道の基本姿勢を守ったといえる。

 民放のニュース番組と比べて、比較的時間を調整する裁量があるNHKだからこそともいえた。

「小生のことをマスコミ(これもコリアン系ばかり)は人種差別主義者だと言うが、人種差別というのは本来マジョリティがマイノリティに対して行う行動を指すのであって、今や日本におけるコリアン系はマイノリティどころか日本の中枢をほとんど牛耳っている大マジョリティである。」

 NHKの取材に対する感想も言わせている。

「NHKに対してひと言感想をと言われれば、『NHKは日本の敵です。不要です。つぶしましょう。」

 本来であれば、ここはあえてニュース番組のなかで伝える必要はない部分だ。ただ。相手はマスコミ全体を敵対視して、独特の信念をもって主張している以上はこの部分も入れるのが公平だと考えて入れたのだろうと考える。

 DHCは2017年にTOKYO MXテレビが放送してBPO(放送倫理・番組向上機構)からで「重大な放送倫理違反」と「人権侵害」があったと認定された番組「ニュース女子」を制作したDHC テレビに持っている。「ニュース女子」の放送では米軍基地反対運動に参加する沖縄の住民への偏見をあおるものとしてBPOから厳しく指摘されたが、「人権侵害」とされたのは在日コリアンの女性に対するヘイト放送もあったからだ。

国や社会全体の問題だという報道姿勢

 さらに4つ目はこの問題を東京オリンピックが近づくなかで五輪憲章にも根絶がうたわれている「差別」などの人権問題につながる普遍的なテーマだと視聴者に示した点だ。 

去年、政府が初めて策定した「ビジネスと人権」に関する行動計画(2020-2025)でも多様性や社会的包摂な尊重されていることや国会の衆議院法務委員会での自民党・武井俊輔議員の質問や上川陽子法相の答弁や法務省の担当者の話、日本経済連合会(経団連)の常務理事に取り組み姿勢を取材して伝えていた。

 もちろんん法務省担当者のインタビューなどを聞く限り、「この“ヘイトスピーチ許さない”という言葉であるんですけれども、これも主語はまさに皆さまお一人お一人だと思っています」など煮えきらない姿勢だ。つまり国が「許さない」と積極的に取り締まるという姿勢ではないのだ。「このような努力を地道に続けていくしかない」という。

このように行動計画を策定しても限界があることが伝わってきたが、報道そのものはグローバル化が進む世界で日本の有力企業のなかで「差別」や「ヘイト」が根強く残っているという問題を提起したすぐれたニュースだったと評価できる。

民放では難しい?

 この問題は、実はスポンサーがいないNHKだったからこそできた報道だといえる。

 スポンサーが存在する民放だったらどうなるかというと、TOKYO MXで問題になった「ニュース女子」の問題も、スポンサーであるDHC が局にそのまま持ち込む「持ち込み番組」という形で局にとっては営業上はありがたいスポンサーだったことが分かっている。 

 民放でももちろん覚悟を決めれば放送が絶対に無理だとは言わない。だが、DHCの「差別」問題を同じような形では放送できなかっただろうと考える。

 公共放送だからこそ、国や経団連も巻き込んでできた報道だ。

 法務省の担当者が思わず発言していたように、この問題は会社経営者の企業理念にもかかわることなのでなかなか是正を求めることは難しい。そうしたなかでNHKの「攻め」の報道が社会に一石を投じたことは確かだと思う。

水島宏明 上智大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクター

1957年生まれ。東大卒。札幌テレビで生活保護の矛盾を突くドキュメンタリー『母さんが死んだ』や准看護婦制度の問題点を問う『天使の矛盾』を制作。ロンドン、ベルリン特派員を歴任。日本テレビで「NNNドキュメント」ディレクターと「ズームイン!」解説キャスターを兼務。『ネットカフェ難民』の名づけ親として貧困問題や環境・原子力のドキュメンタリーを制作。芸術選奨・文部科学大臣賞受賞。2012年から法政大学社会学部教授。2016年から上智大学文学部新聞学科教授(報道論)。放送批評誌「GALAC」編集長。近著に「内側から見たテレビーやらせ・捏造・情報操作の構造ー」(朝日新書)、「想像力欠如社会」(弘文堂)

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NHKが「クローズアップ現代」の終了を決定

立岩陽一郎 | 「インファクト」編集長4/9(金) NHKが看板番組「クローズアップ現代+(プラス)」の終了を内々に決めたことがわかった。来年4月からは別の番組を出す方向で既に内部で検討が始まっている。

NHKでこの決定を知る複数の関係者が明かした。それによると、NHKは「クローズアップ現代+」を今年度(21年度)で終了させ、来年4月から別の番組を放送することを内部で決めた。正式な発表は無いが、既に経営幹部から担当部署に後継番組について検討するよう指示が出ているという。後継の番組は概要も決まっておらず、「クローズアップ現代」の終了を優先させた形だ。

取材に対して放送総局員は、「発表は無いが、NHKの報道を支えた番組が終わるのは確実だ」と語った。また、報道局員は、「クローズアップ現代は数年前に週1回に減らすように指示があり、それを現場が押し返した経緯が有る。今回の廃止に政治の圧力が有ったかどうかはわからないが、安倍政権、菅政権がこの番組を潰したがっておりNHKの中でそれに呼応するグループが有るのは事実。これまで抗ってきた現場が力尽きたという感じだ」と語った。

「クローズアップ現代+」は1993年にフリーランス・ジャーナリストの国谷裕子氏をキャスターに「クローズアップ現代」として始まり、NHKの取材力を結集した硬派の報道情報番組として高い評価を得てきた。2002年には菊池寛賞を受賞。14年には、安保法制をめぐって当時官房長官だった菅総理に国谷氏が厳しく迫るインタビューが話題になった。同年に行われた当時のケネディー駐日米大使とのインタビューでは、NHK会長の報道の自由に反するかのような言動に批判的に言及するなどもしている。

その後、番組で「捏造」との批判を受ける事案が発生したことなどを理由に番組を刷新するとして、16年に国谷氏が降板。番組名を「クローズアップ現代+」として再スタートした。17年からは武田真一アナウンサーがキャスターを務め、21年3月に井上裕貴、保里小百合の2人のアナウンサーに交代した。

「クローズアップ現代」はNHKの全国の放送局からの提案によって成り立ってきた。番組に提案を通すために、NHKのPD(プログラム・ディレクター=制作者)や記者は取材を積み重ねてきており、それが結果としてNHKの報道を支えてきた側面は大きい。

また、「クローズアップ現代」の存在はNHKだけにとどまらない。新聞記者や民放各局の報道局員からもこの番組を評価する声は聞かれ、日本のテレビ報道を代表する番組として位置づけられてきた。NHKの決定は、93年の放送開始以来30年近く日本のテレビ報道をけん引してきた番組の終焉を意味する。

以下は加筆です。

この記事に対してNHK広報部から筆者に直接連絡が有り、「事実無根」だとして記事の削除を求めました。その事実はここに明記するとともに、削除しない理由等をあらためて別稿で出したいと考えています。

(この記事では情報源を全員匿名にしています。情報源は極力明示すべきと考えており、安易に「関係者」などを使って報じることは控えるべきと考えますが、今回は情報源を明らかにすることによって情報提供者に著しい不利益が生じる懸念が有り匿名としました)。

 

「インファクト」編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。1991年一橋大学卒業。放送大学大学院修士課程修了。NHKでテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクに従事し、政府が随意契約を恣意的に使っている実態を暴き随意契約原則禁止のきっかけを作ったほか、大阪の印刷会社で化学物質を原因とした胆管癌被害が発生していることをスクープ。「パナマ文書」取材に中心的に関わった後にNHKを退職。著書に「コロナの時代を生きるためのファクトチェック」、「ファクトチェック・ニッポン」、「トランプ王国の素顔」など多数。インファクトhttps://infact.press/にて「NHK研究」を連載中。

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「クロ現」終了の記事を「まったくの事実無根」としたNHKの見解は事実ではない

 立岩陽一郎 | 「インファクト」編集長

 YAHOOニュース(個人)4/10(土)

NHKが「クローズアップ現代+」の終了を決定して来年4月以降の後継番組の検討に入ったとの報道に対して、NHKは「まったくの事実無根」と非難した。しかし、NHKの内部文書からはその非難自体が事実に基づかないことがわかる。後継番組を意味する「クロ現の次」は既に内部資料に列挙されている。

4月9日に「Yahoo!ニュース個人」で報じた「NHKがクローズアップ現代の終了を決定」は大きな反響を呼んだ。出稿は午前6時過ぎ。その7時間余り後にNHKの広報部から抗議の電話を受けた。

「まったくの事実無根であり、記事の削除を求めます」

私が「まったくの事実無根ですか?」と問うたら、「そうです」と答えた。私の問いの理由は後述する。暫く後にNHKのホームページにも掲載するというので確認すると、「NHKの見解」として次の様に記載されていた。

「2021年4月9日、一部ネットメディアで、NHKが『クローズアップ現代+』の終了を決定したとする記事が掲載されましたが、まったくの事実無根で、大変遺憾です。執筆者に対して抗議するとともに、記事の削除を求めてまいります」

「まったくの事実無根」とは、NHKが「クローズアップ現代+」の終了など議論も検討もしていないというトーンだ。それは、実は事実ではない。私が入手しているNHKの内部資料に基づいて説明したい。

資料の1つには次の様な絵が描かれている。その一部だけ紹介する。

NHKの内部資料(撮影:筆者)

「報番D」から「総合ゴールデン・プライム/開発番組/編成」に提案を出すと描かれている。何を提案するのか?「課題曲」と書かれ、その下に、「”クロ現の次“に向けたアイデア募集・聞き取り」となっている。「クロ現」が「クローズアップ現代」の略なのは説明するまでも無いだろう。この「クロ現の次」という言葉は他の資料にも散見される。

因みに、「報番」とは報道番組のことで、「報番D」とは「報道番組のディレクター」を意味する。「課題曲」については情報を提供してくれたNHK職員の話で紹介しよう。

「『課題曲』と『自由曲』とは一種の隠語で、番組の種類を指してているんです。『課題曲』とは上から課題を与えられた番組のこと。『クロ現の次』は上から降りてきたので『課題曲』です」。

因みに、「自由曲」とは自由に提案する番組のことだという。

別の資料に、「報番のゴールデン・プライム開発について」というものもある。NHKの各局のチーフ・プロデューサーらに送られた資料だ。「ゴールデン・プライム」とは、前田晃伸会長肝入りの新しい番組を出す夜の時間帯のことだ。会長会見で再三言及している。

そこにも、「“クロ現の次”『課題曲』については、編成とは別途、アイデア募集・聞き取りをしたいと思います」と書かれている。

更に別の資料には次の様に書かれている。

「次の時代の報道番組とはどういうモノが良いのか、クロ現の次なるものは何か、大切にしなければいけないコンセプトとは、どうせやるならこれくらい思い切ったことをやったほうが良いのでは・・・等々。大方針から志から、演出、デジタルとの連携スタイル、制作フローに至るまで、ご意見や発想をお送りください」。

そして「1行でも、企画書でも、パワポでも動画でもけっこうです」と続き、提案先である「報番開発サポートチーム」のメールアドレスも書かれている。指示の言葉が柔らかいのは、既に現場レベルでの議論だからだ。

私の手元にあるこれらの資料は、既に主だった制作担当者の間で共有されている。それに基づいて、「クロ現の次」、つまり「クローズアップ現代」の次の番組について普通に議論が行われているのだ。資料には部署名のみならず担当者の名前も記されている。NHK広報部は調べようと思えばいつでも調べられるが、担当部署に問い合わせた形跡も無い。

NHK広報部から電話が来た時に、「まったくの事実無根ですか?」と確認した理由は、ここにある。私はNHKが記事に強く反発することは予想していた。それだけ「クローズアップ現代+」及び「クローズアップ現代」の存在は大きいものだからだ。

だから、「様々な検討が行われていますが、まだ決定したものはない」程度の抗議を受けることはあり得ると考えていた。このため、放送総局で番組の開発を知り得る幹部に取材をした。その結果、「発表は無いが、NHKの報道を支えた番組が終わるのは確実だ」という答えだった。「NHKの報道を支えた番組」が「クローズアップ現代」を指していることはこちらの質問から明らかだった。その為、記事化に踏み切った。

それでも、仮にNHK側が、「終了と決まったわけではない」と抗議するならば、それはどの段階を正式な「終了」とみなすかという解釈の問題となる。それなら理解できる点も有るが、「まったくの事実無根」という抗議には驚いた。実はそれは私だけではない。「NHKの見解」を見た職員の多くが、「え?クロ現って、無くなるんだよね」と驚いている。

これらの資料から見ても、「まったくの事実無根」が事実と言えないことはあらためて説明するまでも無いだろう。

「NHKの見解」によると今後も記事の削除を求めるということだ。一方、私はNHK広報部に「NHKの見解」を削除することを求めない。それは残すべきだ。「事実無根」という非難が仮に私の名誉を傷つけるものだとしても、NHKがそうした抗議をした事実は残す必要が有ると考えるからだ。

むしろ、この記事についても「NHKの見解」を出して頂きたい。ここに紹介した資料は私の手元にある。他にも資料は有る。情報源を守るという報道人としての責務の為に全てを公開することは避けたいが、対応が無ければそれも考えたい。

当然、私は前回の記事もこの記事も削除することはない。その必要性が無いことは当然だが、どのような報道が行われたかを残すことが報道のあるべき姿だと考えるからだ。その上で、来年(22年の)4月を待ちたい。しかし、見解そのものが事実に基づかないにせよ「まったくの事実無根」とまで言い切った「クロ現の次」があってはならないことは言うまでも無い。

(今回も情報源を匿名にしています。これは本来はあるべきではないと考えますが、情報源が特定されれば情報提供者が著しい不利益を被ることは明らかで、それ故、今回も匿名としています)。


晴れてはいるが風が強く寒い。朝は氷点下、昼も10℃に届かず。
それでもカモさんが戻ってきましたよ。

確認できたのは5羽でした。まだこれから増えるでしょう。


散歩道。