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Colaboへのバッシング

2023年02月19日 | 事件

ジャーナリスト 安田浩一さん

「しんぶん赤旗」2023年2月19日

   2023焦点・論点

攻撃の背景に女性差別がある 「何が真実か」という姿勢必要

 虐待や性被害に遭う若年女性に寄り添う一般社団法人Colabo (コラボ)に、インターネット上で「公金の不正利用」などとする攻撃が止まりません。差別問題に詳しく、自身もコラボを取材するジャーナリストの安田浩一さんは「攻撃の背景には女性への差別がある」とみます。(聞き手・安川崇)

 ―コラボに対する一連の攻撃は、昨年末から今年初めにかけて、都内の男性による東京都への住民監査請求をきっかけに激化しました。

 コラボが都の若年被害女性等支援事業の委託料を受けていることについて、男性は「医療費不正」「車両費不正」「報告書の不備」などがあると主張しました。しかし、監査結果は男性の主張のほぼすべてを「妥当でない」などとして退けています。

 経費精算の一部などに「不当」「不適切」とされた部分はありますが、同時に監査結果は「実際には都の委託料以上の経費が生じており、コラボが持ち出して負担している」「都に損害をもたらすという関係にはない」と明言しています。「不法」や「違法」、「不正」が具体的に認定されたものは一切ありません。

 にもかかわらず、ネット上で一部の人たちが「コラボが行政から公金をむしり取っている」かのようなデマを広げています。リベラルとされる人の一部も影響されています。

 そもそもこの事業は都が頼んだものです。若年女性支援は本来、行政の仕事ですが手が回らずノウハウもないので、以前から事業を展開してきたコラボに委託しました。

 私もコラボの事業を取材して、活動地である繁華街、新宿・歌舞伎町の風俗産業への認識を改めました。

 家出してスーツケースを引っ張る10代女性や、薬物の影響らしく意識がもうろうとして倒れ込んでいる若年女性を目の前で見ました。そして意外なほど多くの男性が若年女性に声をかけ続ける。風俗業者や関係者です。

 若年女性をビジネスの材料として引き込み利用する構図をみることができます。そういう女性を救済するコラボの役割は、絶対に重要です

 ―「コラボたたき」と差別の問題を指摘しておられます。

 「コラボたたき」もそうですが、「公金」や「血税」といった言葉を多用し、「自分たちが被害者だ」として特定の個人や団体、集団を攻撃するのが「21世紀型差別」の特徴だと思っています。差別問題を取材してきた私には、強い既視感がある。

 そのはしりが、2006年に現れた「在日特権を許さない市民の会」(在特会)でした。「在日韓国人は生活保護を優先利用できる」などの、虚偽の「在日特権」を言い立て、全国で残酷なヘイトスピーチ(差別扇動行為)を繰り返しました。

 圧倒的多数の日本人より優越的な立場にいる外国人などいないのに、「外国人が日本人を苦しめている」という倒錯したロジック(論理)が、ネットを通じて流布されていく。コラボにぶつけられている「公金不正」も、「在日特権」と地続きの言葉だと感じます。

 デマに数多くの匿名ネットユーザーが喜々として飛びつき、バッシングに手を貸すところも似ています。

 ネットのデマは、攻撃する側が一方的に力を持ちやすい。デマは簡単で証拠も不要、匿名という安全地帯から数秒で書けます。一方、反論する側は証拠をそろえ、言葉を紡ぐのに手間がかかる。攻撃側が瞬間的に勝てるから「勝つ勝負に加担する楽しさ」を味わうのでしょう。「娯楽」です。いじめの風景と同じものを感じます。

 コラボの場合、それに加えて「未成年者を食い物とする一部風俗産業の構造を維持したい人々」が攻撃に加担しています。夜の街で、コラボの活動を威圧するようについて歩く業者らしき男性を、私も見ています。

 コラボがたたかれるのは、女性が中心になって活動する団体だからだという点も指摘したい。今の日本社会では、女性であることだけで差別を受けやすい。同じことをしていても、男性ではなく女性が差別の標的になります。

 差別者の根底には、口には出さないミソジニー(女性嫌悪)があり、女性を「たたきやすい、たたいてもいい存在」だと思っている。攻撃そのものの前提に、女性差別があると思っています。

 ―私たち市民は何をすべきでしょうか。

 まずはデマに流されないこと。「何が真実か」という姿勢が必要です。そして家族や職場など、身近な人に真剣に、それを伝えてほしい。「口をつぐまないこと」が大切だと思います。

 やすだ・こういち 1964年静岡県生まれ。週刊誌記者などを経て2001年、フリーに。12年、著書『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』で日本ジャーナリスト会議賞、講談社ノンフィクション賞を受賞。


 現時点でコラボの活動は重要な役割を持っています。その活動に寄り添い、支援してこそです。