ざっくばらん(パニックびとのつぶやき)

詩・将棋・病気・芸能・スポーツ・社会・短編小説などいろいろ気まぐれに。2009年「僕とパニック障害の20年戦争出版」

冬の人

2019-11-30 18:55:03 | Weblog
季節は巡るから幸せだ
秋から冬へ、それを凌げば春が来る
しかし生き物は、いや人生といった方が適切か
春夏秋冬の先には死があるのみだ
二度と春を迎えることはない

冬を生きる人々は口にする
「春に雷に打たれた後遺症が残って」
「夏に家族が蒸発して」
「実りの秋にうまい話に釣られてしまって」

冬の人は諦めきれない過ぎた季節を振り返る
雪山の奥深く、瞼が重たそうな顔をして
来世のお守りを抱えながら

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重松清「熱球」

2019-11-28 19:52:40 | Weblog
主人公の清水洋司は出版社を退職し、一人娘の美奈子を連れて、東京から故郷の山口県周防氏に帰ってきました。妻の和美は大学の助教授でアメリカ移民史を研究するため、ボストンに旅立ちました。

地元に残った人に対しては温かいが、よそ者やで戻りに対しては冷たい町という言葉を重松さんは何度となく使います。それでも20年前、周防高校、通称シュウコウで遠い甲子園に憧れていた洋司と憧れていた仲間たちは強い絆で結ばれています。シュウコウの教師となり、野球部監督の神野や洋食屋「カメさん」を経営する亀山。

しかし、いつまでも青春ごっこは許されない現実の厳しさ。亀山は洋司に何度も厳しい言葉を投げかけます。洋司の母は亡くなり、残された老いた父。東京に帰るのか、ここに骨を埋めるのか。洋司は結論を出せません。

そんな中、美奈子が学校でいじめられていることが発覚。洋司が授業参観に行った日も彼女はいじめにあっていました。制止するか戸惑う洋司。その時、一人の母親がいじめを止めに入ります。藤井恭子。20年前のシュウコウの女子マネージャーでした。彼女はトラック運転手をしながら、息子の甲太を育てていました。

洋司たちが3年生の夏、運に恵まれて決勝まで進み、甲子園にあと1勝まで迫ります。その矢先、レギュラーのオサムと密かに付き合っていた恭子が妊娠し、中絶したことが発覚し、シュウコウは決勝を辞退しました。オサムは野球部の仲間と疎遠になり、バイク事故で亡くなりました。恭子も卒業後は周防から離れましたが、離婚後に戻ってきました。

洋司は野球に関しては熱血です。忙しい神野に代わって野球部の手伝いをするのですが、昭和そのものの指導法で部員たちに疎まれてしまいます。洋司、いや重松さんの考え方がはっきり表現された一文があります。恭子の息子、甲太は野球が得意でした。ヨージは「甲太くんには野球選手じゃなくて、高校球児になってほしい」と。重松さんの気持ちは分かるけれど、大切なのは選手の意思でやっているかだと思います。

故郷も時は等しく流れます。応援団長のザワ爺は亡くなり、亀山は「カメさん」を閉店しました。そして洋司は出版社の先輩の誘いを受け、東京に戻る決断をしました。
夏の県予選。神野の指揮の下、シュウコウは初戦を迎えました。洋司は東京に戻るため、スタジアムに背を向けます。流れるコンバットマーチ。まだ彼らは人生という試合の只中にいます。

僕はこの小説を読んで太田裕美の「君と歩いた青春」という曲を思い出しました。重松さんの優しい文章に包まれた熱球は紛れもなく名作でした。
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出生数激減、子育て世帯限定で現金給付を

2019-11-27 11:26:07 | Weblog
厚労省が発表した人口動態統計により、2019年の出生数が大幅に減少していることがわかりました。前年比5.6%減の約86万人。5%以上の減少は1989年以来30年ぶりだそうです。原因は独身者の増加、晩婚化、20,30代女性の減少などがありますが、それと同時に子供にまともな教育を受けさせられないという不安が、かなり大きな要因なのではないかと推測します。そのため政府は子供のいる世帯に現金給付で対応しなければいけない時期に来ていると思います。保育料無償化など努力しているのはわかるのですが、さらに大胆な援助が必要に感じます。

具体的には現状の手当てに上積みする形で、子供1人の家庭で月2万、2人で6万、3人で12万、4人目以降は6万円ずつ増やしていけばいいと思います。子育て世帯限定のベーシックインカムと言い換えてもいいかもしれません。人口1億2千万以上の国民に占める15歳未満の子供の割合は10%前半に過ぎません。この政策ならば、ベーシックインカムよりは現実性は高まります。地域で子供を育てるという意識が根付いていた昔とは社会が変わり、親、特に母親にかかる負担が大きくなってしまっているのだと思います。

僕は独身ですから自分には関係はないのですが、損得勘定を抜きにしてこの国を存続させていくためには、今の極端な少子高齢化に歯止めをかけるには大胆な政策が必要です。これにより、子供のいる家庭といない家庭、あるいは独身の分断が特に40歳以上の世代で起こるかもしれませんが、20年、30年先には子供たちに支えられると思えば、仕方がないのかもしれませんね。
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「同期のサクラ」第7話

2019-11-21 18:53:46 | Weblog
「同期のサクラ」第7話、見ました。前半の5話は同期の青春群像に重きを置いて描かれていましたが、ここにきて、にわかに展開が重くなってきました。良くも悪くも遊川脚本らしいのですが。

サクラの故郷の島に架かる橋が地元住民の間で「安全性に問題があるのでは」との不安が生じているのを払拭するため、会社側は説得役にサクラを選びました。しかし、橋の強度が万全でないことを知ってしまったサクラは動揺します。

また同期の4人も駆けつけ、サクラの実家に寝泊まりするのですが、サクラの唯一の肉親である堅物の祖父が、自らは余命いくばくもないことを知り、同期たちに土下座して頼むのです。「サクラをよろしくお願いします」と。僕は遠い昔を思い出しました。中学生の頃、友人と2人で、もう1人の友人の家の前で彼が出てくるのを待っていました。すると、たまたま庭にいた彼の父親が「息子と仲良くしてやってください」と言ったのです。中学生のガキに向かって。まだ大人が子供を物扱いされることが多い時代に。サクラのじいちゃんの姿を見て、埋もれていた記憶が蘇りました。ドラマにはそうした力もあるのですね。

そのサクラのじいちゃんは死んでしまいました。もうファックスは帰ってこないのです。そして故郷の島に橋を架けるという夢もサクラは自ら断ち切りました。一途さと優しさを持ち合わせるサクラの決断でした。最愛の祖父と長年の夢を一気に失ったサクラの心は壊れてしまったようです。その過程の高畑充希の演技は素晴らしいものがありました。サクラの無念が画面一杯に伝わり、高畑さんはどこかに消えてしまったかのようにサクラになり切っていました。視聴率も12%を超えました。これは名作になるかもしれません。



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天才対決 藤井聡太、広瀬に屈する

2019-11-19 23:02:32 | Weblog
王将戦挑戦者決定リーグ最終局、藤井聡太七段は広瀬章人竜王に126手で敗れ、タイトル挑戦はなりませんでした。

初手で、藤井七段が珍しく角道を開け、戦型は矢倉を選択しました。得意の角換わりを避けたのは少し意外でした。序盤から中盤にかけ、徐々に形勢は広瀬竜王に傾きました。しかし、そこから藤井七段が巻き返しを図り、終盤で上部が厚くなり藤井七段が逆転したようです。しかし、最後に広瀬竜王の猛攻に1分将棋の藤井七段は読み切れず、結果的には頓死という形になりました。最後は広瀬さんが芸術的な寄せで勝利しました。それにしても両対局者とも、二転三転の手に汗を握る素晴らしい将棋だったように思います。

藤井七段はこの大一番で、少し硬さが見えたように思います。矢倉を選んだことはともかく、結局、序盤から中盤にかけて、やや不利な状況を作ってしまいました。広瀬さんの矢倉が見事な堅陣であるのに対し、藤井君の矢倉は跡形もなく、玉が裸になってしまいました。しかし、それでも自陣に駒を投入せず、攻撃は最大の防御とばかりに攻めを重視しました。こうした重要な対局になると、その人の本当の棋風というものが出てくるんですね。普段は玉型の安全度を重視していた藤井君が、今日に限れば完全に攻め将棋でした。これが棋士・藤井聡太の本質なのだと思います。

広瀬竜王はこのアウェーの状況下、持ち前の実力を発揮しました。繰り返して書きますが、やはりマイペースで大らかな人はメンタルが強い。この調子で竜王戦も一矢報いてほしいものです。今日の対局で「広瀬さんって強いんだ」と感じた方も多いのではないでしょうか。藤井君はペナルティーエリア内に入ると物凄い能力を発揮しますが、広瀬さんはエリアの少し外側からが上手いんですよね。まさにファンタジスタです。

藤井君の最年少タイトル挑戦は難しくなりました。可能性が残っているのか僕にはよくわかりません。しかし、やはり挑戦より獲得です。木村王位を見ればよく分かります。すべてがA級棋士の中で4勝2敗という成績ですから、誰もがすでに今現在、藤井君がトップクラスの実力を持っていることは認めたのではないでしょうか。今日の敗戦がいい方に転ぶか、悪い方に転ぶかは分かりません。しかし、どんな大棋士でも一度は通らなければならない道ではないですかね。この悔しさをバネにできるかどうかで、今後の藤井君の成長曲線も変わってくると思います。

それにしても大きくニュースで取り上げられていましたね。普通の人だとプレッシャーに圧し潰されてしまいそうですが、藤井君に関しては注目されることに向いている性格だと思います。数年前まで斜陽産業だった将棋界の救世主・藤井聡太の戦いはまだ序章に過ぎません。
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沢尻逮捕 脆かった心

2019-11-18 19:13:03 | Weblog
女優の沢尻エリカ容疑者が合成麻薬MDMAを所持したとして逮捕されました。今回の逮捕劇に関しては驚きはなかったです。しかし、新たな情報によるとコカインなど複数の薬物を10年以上から使用していたというのは残念ですね。

沢尻は女優としては一流になれる条件は揃っていたと思います。正統派の美人で演技力にも定評がありました。しかし、気を張って強く見せていた彼女の心はあまりにも脆かった。この系譜には三島由紀夫、尾崎豊、中森明菜、清原和博、そして沢尻エリカ。一流なのに悲しい男、あるいは女。彼らに共通しているのは普通の人たちが大人になって捨ててしまった純粋さを抱えていることです。しかし、悪く言えば大人になり切れない、社会とうまく折り合えないということになります。よって世間に対して自然体になれず、突っ張って生きるしか方法がなかったのだと思います。
そして「弱さ」ですが、それはガラス細工のような繊細さにも繋がり、一概に否定できません。彼ら、彼女らに激しさと繊細さが同居していなければ、これだけの芸術性やカリスマ性、物語性も存在しなかったのではないでしょうか。

沢尻エリカに話を戻しますが、おそらく執行猶予付きの判決になり、早い時期に釈放される可能性が高いでしょう。沢尻自身が持っている性分については、なかなか変わらないと思います。まずは彼女にドラッグを断ち切ろうとする強い意志がなければ話になりませんし、薬物依存の治療も必要でしょう。それと人間関係を変えることは大切です。自分に都合のいい人間ではなく、耳の痛い話をしてくれる人と付き合えるかどうか?

例の「別に」発言後のロングインタビューの一部を見ましたが、クレバーな面もあり「今は演技ができていない。30歳、40歳になって評価されるなら嬉しいけど」という謙虚さもありました。意見は分かれると思いますが、個人的には沢尻が裏切ってしまった人への償いは、女優として真摯な演技を見せることだと思います。勿論、今までのポジションに戻れる訳ではありません。テレビドラマなどは怖くて使いづらいでしょう。今回の大河のようなことになりますから。映画の端役からやり直すのがいいんじゃないですか。地道に積み重ねていけば、認めてくれる人はいるのではないでしょうか。
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藤井聡太が久保を制し、広瀬と最終決戦

2019-11-15 19:28:00 | Weblog
昨日の王将戦挑戦者決定リーグ戦は藤井聡太七段が久保利明九段を157手で破りました。これにより2敗の豊島名人、羽生九段の挑戦の可能性はなくなり、いよいよ最終局で藤井七段と1敗で並ぶ広瀬竜王との一騎打ちになりました。

王将リーグが始まる前、僕は藤井七段の成績を4勝2敗と予測したと思います。残り1局の段階で、藤井君はすでに4勝に到達しました。しかし今となっては、予測が当たってしまっては困ります。広瀬竜王を倒して王将戦に登場してもらいです。

こないだも書きましたが、結構、僕は広瀬好きで、大体は広瀬竜王に勝ってほしいと思うのですが、藤井七段の敵としてみる広瀬さんは非常に手強く感じますね。同じく昨日行われたA級順位戦では羽生九段に快勝し、1敗を守りました。竜王戦第3局での逆転負けのショックはなさそうです。彼のようにおおらかでどこか飄々とした人はメンタルが強いですね。

さて、11月19日の広瀬・藤井戦ですが、昨年の朝日オープン決勝でまだ中学生だった藤井君が勝っています。しかし、それはほとんど参考にはならないと思います。今度はお互いに準備してきますし、持ち時間も長い。激戦は避けられないでしょう。どちらかというと藤井君の攻めを広瀬さんが受ける展開が予想されます。お互い際どい一手勝ちを目指すのではないでしょうか。

実力的にはやや広瀬竜王。勝負強さ、若さと勢いでは藤井七段。藤井君にとっては、おそらくプロ入り以来、最大の大一番と言ってもいいかもしれません。
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僕を生かしてきたもの

2019-11-14 18:58:05 | Weblog
人に人の気持ちは分からない
その能力は与えられなかった
だから知らず知らずに他者を深く気付つける

僕や君の努力、そして苦しみ、悲しみが分かるのは
見上げた空であったり
踏みつけられた大地であったり
僕らを包む街であったり
寂れた壁であったり
使い古した時計であったり
もうこの世にいない人であったり
決して言葉を発しないものだけ

だから僕は空や地や街に
或いは壁や時計や亡き人に
辛うじて生かされているのだ


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竜王戦第3局 芸術家・広瀬か?研究者・豊島か?

2019-11-12 19:26:23 | Weblog
9日、10日に行われた竜王戦第3局は、豊島名人が広瀬竜王を157手で破り3連勝としました。これで豊島名人が竜王を奪取する可能性は極めて高くなりました。いよいよ名人・竜王の大二冠が近づいてきました。

広瀬さん勝勢で迎えた最終盤、豊島さんが持ち前の粘りを発揮しながらも、徐々に差は広がっていきました。しかし、広瀬さんが守りの金を攻めに参加させた手が、結果的に豊島さんの逆転劇を生みました。個人的には広瀬好きなので残念な結果となりました。

それにしても最近の豊島さんは本当に土俵を割りません。かつては早熟の天才と言われた豊島さんも今はすっかり、最先端の研究を取り入れた努力型の秀才に変貌しました。少し永瀬二冠の将棋にも似てきたような気がします。本来は攻めに使いたい駒を自陣に惜しみなく投入し、勝負を長引かせながら、最後に相手が攻め疲れたところで勝ちにいきます。この第3局も157手ですし、王将リーグの藤井聡太七段戦も170手を超えていました。だから、豊島名人に7番勝負で勝った木村一基王位は改めて神懸っていましたね。

それにしても広瀬竜王の将棋も素晴らしい内容でした。個人的には芸術性の高い棋士を3人挙げるとしたら、谷川九段、藤井七段、そして広瀬竜王です。それぞれ世代もタイプも違いますが、美しい将棋を指すことでは共通しています。芸術肌の天才が研究熱心な秀才に敗れるという意味では谷川さんと羽生九段の関係性を思い起こします。ここまで来たら広瀬さんに1勝はしてもらいたいです。

そして王将戦。広瀬さんと藤井君という現代将棋を代表する芸術家が最終局で激突します。できれば藤井君が久保九段を破り、1敗同士の決戦を見たいです。ここでは広瀬さんには悪いですが、藤井君に勝ってもらいたいです。最後はやはり藤井君の応援で終わってしまいましたが、どちらにしても楽しみな対決です。そしてまだ豊島さんにも他力ながらチャンスは残っています。
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会話の達人

2019-11-09 18:33:53 | Weblog
決して口数は多くない
少しばかりの付き合いで
あなたは幸だ不幸だなどと言わず
自慢話もせず
優しい言葉も滅多にかけない

相手が問いかけてきたら、大概はそれを肯定し
少しだけ膨らまして返してやる
穏やかな顔を向けながら
さすれば少なくとも人の心は炎上しない

「今日はいい天気ですね」
「そうですね。雲一つない青空で」
幾千の会話の達人たちが、一日の始まりに祈りを込める
今日も円滑に物事が進みますようにと
穏やかに深まっていく秋の力を借りて

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