とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

イラク女性の占領下日記:リバーベンド   9(イラク復興予算?)

2008年02月20日 14時00分42秒 | 地理・歴史・外国(時事問題も含む)
2003年8月28日 同日投稿された「闘論」とは別タイトルで、再び夕方投稿された記事です。

        「約束と脅し」
 神話――占領前、イラク人はバグダッドのいたる所にある狭い舗装していない道沿いに茶色の小さなテントをたてて住んでいた。男と少年たちは、ラクダ、ロバ、ヤギなどに乗って学校へ行く。学校はテントの家を大きくした感じで、生徒100人につきターバンを巻いた教師1人が算数(羊の群れを数えられるように)と読み方を教える。女性と少女たちは家にいて黒いブルカを被り、パンを焼いて1ダースもの子どもの世話をしていた。

 真実――イラク人は以前から水道も電気もある家に住んでいた。コンピューターを持っている人もたくさんいるし、何百万人もの人がビデオレコードやビデオコンパクトディスクを持っている。イラクには立派な橋、娯楽施設、クラブ、レストラン、商店、大学、学校などがある。イラク人は性能のいい車(特にドイツ製)が大好きだし、ティグリス川にはモーターボートがいっぱいで、人々は魚釣りから水上スキーまで楽しんでいる。

 何をいいたいかと言うと、ほとんどの人が「再建rebuild」「復興reconstruct」という言葉の小さな接頭語「re」を見ないことにしてるってこと。念のために言っておくと、「re」はラテン語起源で、多くの場合「再び」を意味する。

 つまり、元々そこには何かがあったのだ。イラクには何百もの橋がある。アラブ地域で最高の高速道路がある。南部のバスラから北部のモスルまで、FOXニュースに映っているような、狭い、舗装していない土埃の道を1回も通らないで行けるのだ。高度な通信網だってあった。「有志連合」が、3回の集中爆撃と3夜を費やして通信網を破壊し、電話を不通にしたのだ。

*(訳注 「有志連合」:米英を中心とした、イラクに駐留部隊を置いている国々のことを指している)

 昨日、どうしてイラク復興に900億ドルかかるのか、という記事を読んだ。ブレマーは、建物や橋、電気などを元に戻すのにどれだけかかるか、数字を並べ立てている。
 この話を聞いて。私のいとこの1人は、バグダッドのある有名建設会社で働いている。会社はイラク中の橋梁の設計・建設をしたことでよく知られている。いとこは構造工学技術者だけれど、橋オタクだ。5月が終わろうとする頃、彼は上司にCPAがバグダッド南東端の新ディヤーラ橋の再建費用の見積もりを要求してきたと言われた。橋の破壊状況を調査し、被害はそれほど大規模ではないものの費用がかかると結論した。必要なテストと分析(土壌構造と水深、伸縮継ぎ目と桁といった事がら)を行い、概算見積もりを出した。30万ドルだった。(企画設計費用、原材料ーイラクでは実に安い、人件費、下請け費用、交通費などが含まれている)

 1週間後、新ディヤーラ橋の契約は米国のある会社がとった。よく聞いて!驚かないでね。この会社は橋梁再建費用をなんと約5000万ドルと見積もったのだ。

 イラクについて知ってほしいこと。イラクには、13万人の技術者がいる。半数以上は構造工学技術者と建築家だ。多くは、ドイツ、日本、アメリカ、イギリスなど海外で教育を受けた。そうでない者も、イラクにさまざまな橋、ビル、高速道路を作った外国企業で働いた。大多数は非常に熟練していて、飛び抜けて優秀な者もいる。
 1991年、第一次湾岸戦争のときの ”有志連合”は30カ国以上――これらの国々がバグダッドを原形もとどめぬほど爆撃しつくした。イラクの技術者たちは、この戦争の破壊からイラクを復興しなければならなかった。彼らは、元は外国企業が作った橋やビルの再建に取り組み、かつては輸入していた原材料の不足をなんとかしなければならなかった、戦争後に残ったインフラをすべて破壊することを目的としたいまいましい経済封鎖を乗り越え、何もないところからイラクを再建しなければならなかったのだ。すべて頑丈に作らねばならなかった。なぜって、そう、常に攻撃の脅威にさらされていたから。
 133の橋のうち100以上が再建された。多くのビルと工場、通信塔が再建され、新しい橋もできた。すべて完全というわけではなかったが、私たちは努力していた。
 でもイラク人を満足させるのは簡単じゃない。建物はただ機能的であればいいってもんじゃない。彫刻された柱、複雑なデザインのドーム、高尚だったり先端的である必要はないけど何かユニークで月並みでないもの。

 バグダッド中にそうした建物がある。上質の板ガラス窓の瀟洒な住宅、もはや歴史的建造物といえる典型的な”バグダッド風”ビル、シャレたカフェの隣の絢爛たるレストラン、「ファベルジュ・エッグ」の卵細工と見まがう色彩豊かで凝った造りのドームのモスクの数々..........すべてイラク人の手によるものだ。

*(訳注、「ファベルジュ・エッグ」:ロシアのピーター・カール・ファベルジュがロシア皇帝の命を受けて作ったイースター・エッグで、インペリアル・エッグとも言われている。至高の芸術品として、オークションでも数億ドルの値がついた。)

 私の好きな再建プロジェクトは、ティグリス川にかかるムアラク橋だった。これは、イギリスの会社が設計・建築した吊り橋。1991年に爆撃され、誰もがほとんど渡ることをあきらめていた。1994年、橋はイギリスの会社の手によらず、イラクの技術だけでかつての姿そのままを再び現した。落成の日、橋にも橋の台脚にも橋の上の歩道にもすべて、鮮やかな色の花々が描き込まれていた。人々は、ただ橋の上に佇みティグリス川を見下ろすために、バグダッド中からやって来た。
 何十億ドルも要求する外国企業を導入せずに、イラクの技術者や電気技師、労働者を利用したらいいではないか。仕事がない多くの人々は、喜んでイラク復興に携わるだろう。なのに、誰1人チャンスはもらえないのだ。

 イラク復興は私たちの頭の上に吊るされた”約束と脅し”のようだ。イラクの人々は、不信と不審の目で”復興”を見ている。なぜなら老獪なイラク人は、このようなうさんくさい復興プロジェクトは、自分たちの国をアメリカの国債に並ぶほど巨額の国家債務の罠に陥れることになるのを知っているからだ。小数の巨大な建設業がますます肥え太る。イラクの失業大衆は外国企業によって華やかなビルが建設されるのをただ見つめるのみだ。

 この戦争が石油をめぐるものであると、私はずっと言ってきた。その通りだ。でも、この戦争はまた、戦争の破壊の跡の再建で巨万の金を儲けようとしている巨大企業のためのものでもある。「ハリバートン」って知ってるでしょ?(ところで、このハリバートンは、早くも4月に破壊された石油産業の基幹施設再建と”油田の火災”消火の契約をいの一番に手に入れた。)

 そう、イラク復興には巨額の金がかかる。その通りよ、ミスター・ブレマー。契約が全部外国企業に与えられるならばね。

*(訳注「ハリバートン」:アメリカの大手石油関連企業、ハリバートン・グループ。ブッシュ政権発足前の2000年までチェイニー米副大統領がCEO(最高経営責任者)を務めていた。イラク復興に関する受注総額はダントツで1位。)

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