とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

イラク女性の占領下日記:リバーベンド   6(椅子取りゲーム)

2008年02月17日 21時21分41秒 | 地理・歴史・外国(時事問題も含む)
2003年8月26日
   「椅子取りゲームをしましょう.......」

 9人のメンバーによる輪番議長制は、1目見て失敗とわかる。2目見ても失敗。3目見ても、4目見ても..........、9目見ても失敗だ。輪番議長制のメンバー(シーア派5人、スンニ派2人、クルド人2人)は、民族と宗教に基づいて選出された。
 これは、イラク国民を分断させる方法だ。混乱と無秩序にさらに混迷を加える。民族と宗教によって選出された議会が国を運営するなんて、考えただけでも気分が悪くなる。私たちは、自分の民族や宗教によって徒党を組むと思われているのだろうか。9ヶ月先、どうやって大統領1人を選出するつもりなのか。イラク国民の各派がそれぞれ代表を必要としているとでも?もしそうなら、どうしてクリスチャンは選ばれなかったのか。どうしてトルクメン人は選ばれなかったのか。9人にあと2人加わったとして、すごい違いがあっただろうか?

 9人の踊る操り人形たち、失礼、輪番議長たちは ”統治評議会” の中から選出されたのだ。そして、統治評議会とはCPA(私注:米国主導の連合国暫定当局)によって選ばれた暫定議会だ。統治評議会の25人がしたことで国民の気持ちが決定的に離れたのは、4月9日をイラクの新しい国民の祝日としたとんでもない決定だ。ムハンマド・バハル・ウルーム(9人の操り人形の1人)がその発表をした時、誰でも嘘だろうという顔をした。

 評議会の9人は全員お互いに憎み合っているという。会議は怒号、罵倒、侮辱で終わることが多い。彼らが唯一合意しているのは、ブレマーは神だということ。

 さあ、イラク史上最高の操り人形劇の配役は次の通り(登場順)

操り人形(1)――イブラヒム・ジャファリ
 56歳のイスラム教シーア派、ダーワ党党首。イランとロンドンに暮らした。ダーワ党は、最も突出したシーア派政治運動として1958年に初お目見え。ダーワ党の”活動家”は、イランの過激派「フェダイーン・イスラム」から戦術を学んだ。爆弾を利用して政治的意思表示を行うのが特徴だ。大学、学校、レクリエーションセンターが多くターゲットとなった。
 彼を見ると、不快になる。あまり率直でも明晰でもない。低い声で疑い深げにしゃべり、落ち着かない目つきをし、カメラをまっすぐ見ることがない。

操り人形(2)――アフマド・チャラビ
 ホントにすてきなやつ。イラク国民会議(INC)議長で、ペンタゴンの絶大な支持を得ている。ヨルダンのペトラ銀行から何百万ドルも横領して倒産させた銀行家。彼の立身出世の物語で私のお気に入りは、車のトランクに入ってヨルダンから逃げるくだりだ。
 イラク戦争は大量破戒兵器が見つからなくても正当化できると思うかと聞かれると、彼は即座に(同時に少しいらついて)答える。
「もちろん。もし、戦争がなかったら、”私”はこうしてイラクにはいなかっただろう」
 まるで、自分は人類にもたらされた神さまの贈り物とでも言うかのごとき口ぶり。それを言うなら、まさにイラク国民へのアメリカからのプレゼントだ。戦争、混乱、占領を栄光の冠として頭上に戴く者、盗人王。

操り人形(3)――イヤード・アッラーウィ
 元イラク情報局部員で、元バース党員。バース党の奨学金でロンドンへ行った。こんな噂がある。奨学金が終わると、彼はバース党員を辞め、イラク国民合意(INA)を結成した。1971年からずっとロンドンに住んでいる。


操り人形(4)――ジャラール・タラバーニ
 クルド愛国同盟(PUK)の党首。PUKは、北部のクルド自治区のうち東南部を支配している。町のおもしろい噂――彼は ”党首”になる前、トルコでナイトクラブを経営し、そこで何やら法に触れること(”コンパニオン派遣業”とかいう)をしていたそうだ。実は彼は、クルド自治区のもう一方の雄マスード・バルザーニと勢力を張り合っていて、両者の抗争は多くの場合、流血事件となる。彼の有名な言葉は「政治は売春だ」。

操り人形(5)――アブドゥル・アジズ・ハーキム
 イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)の副議長。彼は何十年もイランにいた。戦争後の混乱の多くを仕掛けたバドル旅団の最高司令官だ。恐ろしいことに、SCIRIとCPAの間で、いくつかの地域の”治安”をバドル旅団に委ねるという取引があると噂されている。

操り人形(6)――アドナン・パチャチ
 スンニ派アラブ人で、なんと81歳(84歳という人もいる)。60年代に2年間、外務大臣だった。私の祖父は、彼をよく覚えていない。こんなこと言って悪いけど、イラクを統治するには、彼はちょっと体力的に無理だと思う。彼が選挙に出るなんてあり?イラク人が彼のことを知らないように、彼は60年代終わりからずっと国外で暮らしていて、イラクのことをちっとも知らない。

操り人形(7)――アブドゥル・ハミード
 スンニ派原理主義イスラムグループ、イラク・イスラム党(ムスリム同胞団系の支部)の事務局長。またまた原理主義グループ。でも、このグループはスンニ派原理主義グループを黙らせておくために使われている。

操り人形(8)――ムハンマド・バハル・ウルーム
 「ムハンマド・バハル......、誰?」としても知られる。誰の彼のことを聞いたことがないようだ。彼はシーア派ムスリム聖職者で、1991年(私注:湾岸戦争)にイラクを逃げ出してロンドンに亡命。彼も80代で、政治的キャリアは国を逃げ出したこと、自分を亡命者と思っていること。それだけだ。人気が出るかもしれなかったのに、4月9日をイラク国民の祝日と宣言する役に選ばれたため、せっかくのチャンスをぺちゃんこにしてしまった。

操り人形(9)――マスード・バルザーニ
 クルド民主党(KDP)の党首で、ジャラール・タラバーニのライバル。北部イラクでアメリカの支援を受けている。タラバーニと抗争し、流血事件や暗殺によっておびただしい数のクルド人を殺し、さらに多くを追放した。ところが、このふたりがひとつテーブルについて、熱っぽく”父なるブレマー”を見つめているのを見ると、ふたりはずっととても仲良しだったんだなと思えてくる。すばらしい政治的教訓。当然涌いてくる疑問がひとつ。このふたり、北部のわずかな地域でさえ治めきれないのに、イラク全土を統治できると思ってるのかしら。
 この2人のクルド人指導者はまた、「ペシュメルガ」という武装民兵を率いている。ペシュメルガの活躍は多岐にわたる。あるときはボディガード、あるときは盗賊。車や現金、骨董品を盗んでいるところを見つかってる。ここ2日間、キルクークでペシュメルガとトルクメン人との争闘が続いている。

 一番腹が立つのは、ブレマーが、輪番議長制が十分にイラク国民の代表たりえていると語るのを聞く時。実態は、輪番議長はCPA(私注:米国主導の連合国暫定当局)とブレマーの代表にすぎない。アメリカの操り人形たち(中にはイランの操り人形も)。どっちにしろ、彼らはイラクもイラク人も統治してはいない。単なるやたらと高級な通訳だ。彼らはブレマーの指令を通訳して聞かせる。人形たちの大半は、アメリカ国民の税金で教育と訓練を受けた。そして今、イラクのオイルマネーでCPA(私注:米国主導の連合国暫定当局)に”飼われている”。
 民主主義にとっては悪いスタートだ。占領され、占領した側に政府と将来の指導者を選んでもらうなんて。それに、「最高裁に”任命”された大統領」の国にいったい何が期待できるというの?

*(訳注、「最高裁に”任命”された大統領」:2000年に行われた大統領選のフロリダ州の得票結果についてゴア候補が集計見直しを求め、同州最高裁が再集計を命じたが、連邦最高裁がそれを破棄してブッシュ現大統領の勝利が確定した。)
    
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