ウクライナ大統領府、ロシアとのミュンヘン会談予定なし
【2月14日 AFP】ウクライナ大統領府は13日、ドイツで開かれるミュンヘン安全保障会議において、ドナルド・トランプ米大統領が発表したようなロシア当局者との協議に参加する予定はないと発表した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の顧問であるドミトロ・リトビン氏は記者団に対し、「ロシアとの対話には、(同盟国との)共通の立場が前提となる。しかし、現時点ではそのような前提がない。したがって、ロシアとの協議は予定されていない」と述べた。
さらに、「ウクライナの立場は変わらない。まず米国と協議する必要があり、真に持続可能な和平についての真剣な議論には、欧州も参加しなければならない」と付け加えた。
リトビン氏の発言に先立ち、トランプ米大統領は、ドイツ南部ミュンヘンで14日に開幕する安全保障会議において、ロシア、ウクライナ、米国の「高官」が参加する協議が行われると発言した。
「明日ミュンヘンで会議がある。ロシアは米国の代表と共に出席する。ウクライナも招待されている。どの国から誰が来るのか正確には分からないが、ロシア、ウクライナ、米国の高官が出席することになるだろう」と記者団に語った。
ホワイトハウスはこの協議について詳細を明らかにしておらず、ロシアも沈黙を保っている。(c)AFP
ウクライナの鉱物資源で、軍事支援「返済」期待 米国務長官
【2月14日 AFP】マルコ・ルビオ米国務長官は13日、米国の対ウクライナ軍事支援への補償の一環として、ウクライナの鉱物資源に関するディール(取引)成立を期待していると述べた。
ルビオ氏は、保守派のクレイ・トラビス氏とバック・セクストン氏が司会を務めるラジオ番組で、米国はウクライナの長期的な独立に利害関係を有していると主張。
「それは継続的な経済的利益に根差したものでなければならない」「ウクライナの採掘権やあらゆる天然資源に関わる合弁事業など、同国との提携に関する何らかの朗報が近日中にもたらされることを期待している」と述べた。
「その資金の一部は、そこで費やされた数十億ドルを米国の納税者に返済するために使われるだろう」「一部はウクライナに再投資され、これまでに起きたあらゆる破壊からの復興に使われるだろう」と続けた。
トランプ氏は、ロシアが全面侵攻を開始して以来、対ウクライナ軍事支援を批判してきた。だが今月、支援継続の条件として、ウクライナのレアアース(希土類)の利用に関する合意を望んでいることを示唆した。
ウクライナは、航空宇宙産業や電気自動車(EV)産業に不可欠なリチウム、チタンなどの主要資源を有している。(c)AFP
ドナルド・トランプ大統領は、ロシア・ウクライナ戦争の終結に向けて積極的に動き始めた。戦争が3年目を迎える中、トランプ大統領は戦争当事国の首脳たちと相次いで電話会談を行い、双方から即時停戦交渉の開始を求めるメッセージを引き出した。
アメリカは、14日に開催されるミュンヘン安全保障会議で、ウクライナ停戦に向けた具体的な方針を示すものと見られている。
トランプ大統領、プーチン大統領と90分間会談
12日(現地時間)、ロイター通信などによると、トランプ大統領は同日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領と相次いで電話会談を行った。
トランプ大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、プーチン大統領との会談について「長時間にわたる建設的な協議を行い、ウクライナ戦争終結に向けた交渉を速やかに開始することで合意した」と明らかにした。これは、トランプ大統領就任後、両首脳間で初めて公式に対話が行われたことを認めたものだ。
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官もロシアメディアに対し、両首脳が約1時間30分にわたる電話会談を行ったことを確認。「トランプ大統領は敵対行為の速やかな停止と問題の平和的解決に賛同し、プーチン大統領は紛争の根本原因を除去する必要性を指摘した」と述べた。米露首脳の直接対話がロシア当局によって公式に確認されたのは、ロシアのウクライナ侵攻直前にジョー・バイデン前大統領と会談した2022年2月12日以来、初めてのことだ。
トランプ大統領は、プーチン大統領との相互訪問に合意したことを明らかにした。ロイター通信によると、両首脳はサウジアラビアやアラブ首長国連邦など第三国での会談の可能性についても言及した。トランプ大統領は、マルコ・ルビオ国務長官、ジョン・ラトクリフCIA長官、マイク・ワルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)、スティーブ・ウィトコフ特使に対し、交渉を主導するよう指示する方針だ。
両国首脳の対話は、前日に米露間で収監者の身柄交換が行われ、関係改善の機運が高まる中で実現した。トランプ大統領は、在ロシア米国大使館の職員だったマーク・フォーゲル氏の釈放についてプーチン大統領に謝意を表明し、「ウクライナ戦争を終結させ、数百万の人命を救う関係の始まりとなることを願う」と述べ、収監者の身柄交換が停戦協議の契機となることへの期待を示した。
プーチン大統領との会談後、トランプ大統領はゼレンスキー大統領とも電話会談を行った。ゼレンスキー大統領は声明で、「ウクライナは誰よりも平和を望んでいる」とし、「我々はアメリカと共にロシアの侵略を阻止し、信頼性のある持続可能な平和を実現するための具体的な措置を講じている」と述べた。ゼレンスキー大統領は11日、英紙「ガーディアン」のインタビューで「アメリカなしでは、安全保障は成り立たない」と述べ、アメリカが停戦交渉のテーブルに参加すべきだと強調していた。
ゼレンスキー大統領は、トランプ大統領からの提案を受け入れ、戦時下のウクライナへの軍事支援継続を条件に、アメリカがウクライナのレアアース(希土類)などの鉱物資源へのアクセスを得るべきだとの主張を積極的に受け入れた。この日、スコット・ベッセント米財務長官がウクライナの首都キーウを訪れ、ゼレンスキー大統領と会談。両国間の鉱物資源協定について協議が行われた。ゼレンスキー大統領は、14日のミュンヘン安全保障会議で協定締結を希望する意向を示した。
しかし、円滑な停戦には依然として難航する可能性が高いとの見方も強い。米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は「戦争終結への試みは強い抵抗に直面する可能性が高い」とし、「プーチン大統領は、ロシア軍の進軍が遅れている現状にもかかわらず、戦争で勝利していると信じている。また、ウクライナにとって現在の戦線で停戦合意に至ることは、実質的に自国領土の20%をロシアに譲る苦渋の選択となるだろう」と分析している。
欧州訪問中のピート・ヘグセス米国防長官は、トランプ政権発足以来最も直接的な戦争関連の発言を行った。ヘグセス長官は、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟に反対の立場を表明した。また、ウクライナが2014年にロシアがクリミアを強制併合した以前の領土に戻ることを望むのは非現実的だと指摘し、「非現実的な目標を追求することは、戦争の長期化を招き、さらなる苦痛をもたらす結果となる」と述べた。
プーチン氏が3年間待った瞬間が到来、ゼレンスキー氏は蚊帳の外
BBC 2025/2/14
(CNN) ウクライナのゼレンスキー大統領はこの3年間、部屋の中心にいた。だが今やおそらく、自分が正しい部屋にいるのかどうかも分からない状況だろう。
ゼレンスキー氏はこれまで、暴走する独裁的なロシアに対抗する西側の共同戦線を象徴する存在だった。チャーチル元英首相を彷彿(ほうふつ)させる存在感で欧州を叱咤(しった)し、欧州の分断と買収に長年成功してきたクレムリン(ロシア大統領府)のトップに対抗する道義的な立場を取るよう促した。
だが、首都キーウで12日にベッセント米財務長官と並んだゼレンスキー氏の存在感は薄れていた。トランプ米大統領は7日、ゼレンスキー氏と直ちに会談する可能性を示唆しており、ゼレンスキー氏はトランプ氏と対面で和平の幅広いビジョンを協議したい意向だった。だが、代わってゼレンスキー氏の元を訪れたのは「まじめな人々」(ゼレンスキー氏)だった。富豪から財政当局者に転じたベッセント氏から提示されたのは主に金融面の取引で、ゼレンスキー氏は署名しなかった。
トランプ氏が別件、おそらく最近2度目となるプーチン氏との電話協議で忙殺されていたとの報道が流れたのは、ベッセント氏の短時間の訪問の最中だった。トランプ氏は8日、これ以前にもプーチン氏と協議していたことを明かしたが、クレムリンは正式確認していない。
ロシアに拘束されていた米国人マーク・フォーゲル氏(61)の身柄が予想外に解放されたことも、今回の協議の追い風になった。トランプ氏は星条旗を身に巻いたフォーゲル氏を出迎え、テレビを見ていた一般米国民の目にはクレムリンが姿勢を改めたことを示す完璧な映像と映った。ロシア人が米国人を帰国させてくれる善人なのであれば、ロシア政府と相応の取引をしない理由などあるだろうか?
ゼレンスキー氏にとってこの48時間は、熱に浮かされたような悪夢と病的な寝汗、震えの止まらない時間になった。欧州の指導者はこれまで、ゼレンスキー氏と写真撮影する機会を求め、老朽化した列車に1日揺られるのが常だった。それが今や、ゼレンスキー氏はトランプ氏の電話リストでプーチン氏に次ぐ2番手に甘んじている。ウクライナに対する戦争犯罪容疑で国際刑事裁判所(ICC)から刑事訴追され、自国民に毒を盛ることもいとわないプーチン氏より後ろなのだ。
トランプ氏とプーチン氏が何を協議したのか、詳細は知る由もない。だが、プーチン氏がこの瞬間を3年間待ち望んでいたことは確実だ。毎日数百人のロシア人が死亡する状況を許容する自身のグロテスクな姿勢が一転、西側の団結に亀裂を走らせる手段となり、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が後ろ盾の米国から突き放される展開となる――。プーチン氏はそんな瞬間を心待ちにしていた。
流れをつくったのはおそらくトランプ氏とプーチン氏で、ゼレンスキー氏は事後的に報告を受けた。トランプ氏は大統領選のスローガンだった「コモンセンス(常識)」という表現をプーチン氏が使ったことを満足げに明かし、プーチン氏が引き続きトランプ氏を注意深く観察して歓心を買おうとしていることを示唆した。トランプ氏はゼレンスキー氏との会談に関する2度目の投稿の締めくくりに、「ロシアとウクライナの人々に神のご加護を!」という予想外の言葉を書き込んだ。
その数時間前、和平案の主な内容を巡るゼレンスキー氏の希望は、新たに就任したヘグセス米国防長官によって打ち砕かれていた。ウクライナがNATOに加盟することはない、ウクライナ国境が2014年の状態に戻ることはない、平和維持部隊は米国ではなく欧州などの部隊で構成される、欧州は自らの手で自分たちを守る必要がある――。最初の2点については既に分かっていた。ウクライナは2023年の反転攻勢で領土奪還に失敗しており、混乱を極める現状では今後10年でNATOの求める基準に達する見込みは乏しい。
だが、将来の平和維持部隊の構成は極めて重要だ。ゼレンスキー氏はこれまで、平和維持活動への米国の関与を公然と要求してきた。米国抜きの安全の保証は「無意味」だからだ。ヘグセス氏は間髪入れず、こうした幻想を打ち砕いた。米国が世界で最も過酷な戦場に格好の標的として自国民を投入する案など、全くもって非現実的だという理由で。
むしろ、我々が目にしている和平案の骨子は、米軍退役将官のキース・ケロッグ氏が昨年4月に提示した内容に近い。当時のケロッグ氏は民間人で、米国のウクライナ・ロシア担当特使ではなかった。ケロッグ氏は平和維持部隊に欧州の要員を充てることを提案。ウクライナはNATO加盟を諦めるべきだと説き、停戦も提案した(その後のインタビューでは、停戦後にウクライナで選挙が行われる可能性を示唆している)。そして重要なことに、対ウクライナ支援をウクライナ政府が後日返済する融資に変更すべきだとも述べていた。おそらくこの点が、12日のベッセント氏からゼレンスキー氏への提案に盛り込まれたのだろう。
12日のキーウではレアアースについても協議されたが、前例を踏まえると必ずしも良いニュースとは言いがたい。トランプ氏は2017年、数兆ドル規模とも言われるアフガニスタンの鉱物資源を理由に一時的にアフガン支援を検討したものの、そのわずか2年後にはイスラム主義勢力タリバンに政権を握らせる取引にサインした。
トランプ氏のアプローチの裏に、揺るぎない原則と高度な根回しが隠れていると期待する理由はある。トランプ氏とそのチームは明らかに水面下で協議を行っており、ケロッグ氏が以前策定した計画を具体化しているものと思われる。この計画には一定の規律が求められるが、最後までやり遂げるには勤勉さや狡猾(こうかつ)さ、忍耐も必要となる。プーチン氏にはそれが十分に備わっており、ウクライナで勝利すればプーチン氏自身の生存やレガシー、そして世界のパワーバランスが数十年にわたって決定づけられる。トランプ氏にとっては、ウクライナ戦争は大統領就任から24時間以内に解決できると思っていた問題、自身が22年に政権の座にあればそもそも始まらなかった戦争に過ぎない。
これはトランプ氏の優先事項でも、ゼレンスキー氏の優先事項でもない。トランプ氏の電話リストの筆頭にいる人物はプーチン氏だ。厳密には米国はウクライナで戦争状態にあるわけではないが、トランプ氏が和平を結ぼうとしている相手はプーチン氏なのだ。差し当たり、我々はこの点を知っておけば事足りる。
◇
本稿はCNNのニック・ペイトン・ウォルシュ記者による分析記事です。
へグセス米国務長官;画像はネットから借用