市民1000円でPCR検査 1月から那須塩原市 希望者向け、最大1万5000人分
新型コロナウイルス感染症が拡大する中、栃木県の那須塩原市が来月中旬にも、希望する市民を対象にPCR検査を1千円で受けられる新たな事業を実施することが10日、分かった。検査回数は本年度3千回分で、複数の検体をまとめて検査する「プール方式」で行う。対象者は最大で1万5千人程度を見込む。今月1日から引き上げた入湯税の増収分の一部を市民に還元する形で、事業費約1200万円を盛り込んだ本年度一般会計補正予算案を市議会に提出する方針。
負担額1千円のPCR検査の対象は、市内に住民票のある市民。市内にできる新たな民間検査機関で検体を分析する。同居の家族に限り、複数の検体を混ぜて一度に検査する「プール方式」にすることで、検査回数を減らし価格を抑えられるという。
陽性反応が出た場合は市内の医療機関で個別検査を実施し、費用は市が全額補助する。家族で検査して陽性反応が出れば、家族全員が個別検査の対象になる。
市によると、高齢者など対象を限らず希望者に広くPCR検査を行うのは全国でも珍しいという。取材に対し、渡辺美知太郎(わたなべみちたろう)市長は「日本で一番安価なPCR検査になる」とする。当面、年度内分の事業費を見込むが、利用状況などに応じて継続していく考え。
市は、観光事業者へのPCR検査などで安心安全を「見える化」する「持続可能な観光モデル」を掲げ、財源として1日から入湯税を宿泊料金に応じて暫定的に50~200円引き上げた。市課税課によると、12月~来年2月の3カ月間で約1千万円の増収を見込む。
一方、市内の旅館・ホテルの接客担当ら約600人を対象に毎月行う予定のPCR検査を受けた人は、8日現在で延べ79人、実人数68人と伸び悩んでいる。
市商工観光課によると、宿泊施設側からは「『Go to トラベル』などで忙しく、病院に行くことが負担」などの声が寄せられているという。同課は「検体を回収に出向くなど、病院に行かずに済む方法を検討している」とする。
渡辺市長は「観光客に入湯税で一定の責任を担ってもらい、市民にも安価なPCR検査を実施できる。新たな観光モデルが目指す市民、観光事業者、観光客の三者の合意形成が図れる」としている。