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無印良品「欧州で破産」報道から見る変化の現実 欧州より東アジア、国内も都会では「飽き」? 谷頭 和希 によるストーリー   東洋経済  2024/4/3

2024年04月03日 20時20分53秒 | 経済
谷頭 和希 によるストーリー   東洋経済
 • 8 時間 

欧州・MUJIの実質的破産、英国小売業界の苦境

「ヨーロッパで、無印良品が”破産”したらしい……」

【写真で見る】都市部では「飽きられ」? 既存店の客数が漸減傾向にある「無印良品」

X上の一部で、そんなニュースが先週、話題になった。

筆者は最近、無印良品に注目し、現地へのフィールドワークや文献調査を行っていた。その中で感じたのは、「特に都会や都市部では、数年前ほどの勢いがなく、少し飽きられているかもしれない……」ということだ。会社側もこうした状況を理解しているようで、さまざまなテコ入れ策が見られる。

そこで本記事では、欧州の無印良品の破産を一つのきっかけとして、無印良品の現在の姿を紹介したい。ポイントは、

①国外市場では、欧州市場で苦戦し、東アジア市場にシフトしている

②国内では既存店の改革を行い、地方出店を加速させているが、厳しい状況は続いている

③ただし、地方でのブランド力はあり、ブランディング的に見ても地方出店には分がありそう

という3点だ。

英・ガーディアン紙の記事「無印良品ヨーロッパ、英国の主要繁華街の苦境で管財人を任命へ」によると、「日本の衣料品・家庭用品小売業、無印良品のヨーロッパ部門が管財人を選任することになり、苦境にあえぐ英国の主要繁華街にまた暗い兆しが見えてきた。ロンドンに6店舗、バーミンガムに1店舗を構える小売業者の広報担当者は、この動きは『計画的な戦略的事業再編』の一環であり、まもなく合意に達する見込みだと述べた。同社は、このプロセスが店舗やスタッフ、チェーン運営全般に直ちに影響を与えることはないと強調した」とのこと(和訳は筆者による)。

一見センセーショナルに映る「破産」という文言。運営元である良品計画も、3月25日には「特定子会社の異動に関するお知らせ」というリリースで、MUJI EuropeLimitedへの20,000,000英ポンド(約38億円)もの増資をひっそり(?)発表している。

日本とは法律も違うはずなので、「破産申請をしたのか、これから入るのか」を、担当編集経由で良品計画に問い合わせたところ、「英国民事再生手続きに掛かる財産管理人の候補者選定をした」「ただ、欧州からの撤退ではない」とのことだった。

ゆえに、なかなか表現が難しいところなのだが、筆者としてはそこまで深刻に受け止める必要はないだろうと考えている。

というのも、最新の決算資料を見ると、無印良品は国内587店舗、海外643店舗と、海外を主軸とする企業になっている。特に東アジアには494店舗を展開しており、近年の出店もその地域に集中している。

その一方で、欧米は55店舗。2020年には、アメリカ事業を展開する連結子会社「MUJI U.S.A. Limited」がアメリカで破綻したことも話題になった。

日本では「おしゃれな生活雑貨店」として確固たる地位を築いた無印良品だが、欧米での影響力は限定的で、東アジアへの販路拡大にシフトしていたのだ(店舗数はいずれも2023年11月末時点、2024年8月期第1四半期決算説明会資料による)。

欧米事業が占める割合は少ない。ので、欧州子会社が不振でも、大きな問題はなさそうだ(画像:「2024年8月期第1四半期決算説明会資料」より)© 東洋経済オンライン

また、ガーディアン紙の報道からは、イギリスの小売業界全体が厳しい局面にあることもうかがえる。記事によれば「このニュースは、一連の有名小売店が苦境に立たされたことに続くものだ。ザ・ボディショップは2月に管財人を呼ぶと発表し、その後英国内の店舗の半分近くを閉鎖すると発表した。今月には、ファッション・ブランド、テッド・ベーカーを運営する会社が管財人を選任し、英国内の46店舗で数百人の雇用が危機にさらされている」という。無印良品だけが取り立てて不調なわけではないようだ。

既存店の改革を打ち続ける

とはいえ、無印良品(を運営する良品計画)が、何らかの次の一手を打たなければならない局面にあることは間違いない。実際、同社の営業利益は下がっていて、2018年2月期に記録した45,286百万円を、その後は超えられていない。売上高は順調に成長しているにもかかわらずだ。

同社としてもそこは認識しているのであろう、都心では旗艦店を中心とする既存店の改革、地方では積極的な出店攻勢を行っている。

例えば、新宿店ではアパレルに特化した店舗を導入した。特にアパレル部門は、2021年からの「ジェンダーレス」政策での売り上げの落ち込みが激しく、回復のためのテコ入れが必要だとされていた。そのための政策の一つがこうしたアパレル特化型店舗の設立だ。

これだけでなく、駅ナカなどを中心に日用品を中心とする品揃えの「無印良品500」も展開し、2023年8月時点で30店舗に達している。また、無印良品の定番商品ともいえる「カレー」の値下げに踏み切るなど、さまざまな施策に打って出ている。

この背景には、既存店での売り上げの落ち込みがある。2023年8月期の決算説明会資料によると、「全店+EC売上」が前年比で109.4%の一方で、「既存店+EC売上」が前年比で96.5%。客数は93.2%と、漸減傾向にあるのだ。客単価の上昇と、新店および新設既存店の寄与が大きいために見えにくくなっているのだが、都市部での「無印良品」の吸引力は、明らかに弱くなっている。

客単価は上昇しているが、客数は減少傾向(画像:「2023年8月期決算説明会資料」より)© 東洋経済オンライン

加速する地方出店と、地域との関わり

さらなる改革案として、ここ数年来、無印良品は地方にもその店舗を広げている。良品計画の年次レポート「MUJI2023」には、食品スーパーマーケットに隣接する場所を中心に、全国に出店を広げていく戦略が示されている。2024年3月12日には離島では初めてとなる店舗を「対馬」にオープンさせ、話題を呼んだことも記憶に新しい。

こうした地方出店の際、同社はチェーンストアとしては珍しい「個店主義」を貫き、その地域に合わせた店舗展開を行うことも、「MUJI2023」では示されている。新潟の直江津や北海道の函館など、全国各地に多様な無印良品が存在している。

地方出店の背景としては、「無印良品」というブランドを、より日常的に使うことのできるブランドにしたいという思惑があるだろう。スーパーマーケットの一角に置き、普段使いができる店にするというのは、売り上げを考える際には、確かに合理的だ。

ただし、こうした地方出店の際の標準店舗面積は600坪で、これまでの無印良品よりも大きい店舗となっていて、坪辺りの営業利益で苦戦していることも確か。

以上のように、無印良品は近年、都心店舗を中心とする改革、地方への積極的な出店という取り組みを行っているが、まだまだその成果は完全には花を咲かせていない、というところだ。

とはいえ、現在の地方出店戦略には一理ある。なぜなら、「無印」ブランドは特に地方ではまだ集客力を維持しているからだ(少なくとも、集客力がある、と思われている)。

例えば、ヨークベニマルは無印良品との共同出店を頻繁に行っている。共同出店によって若年層の集客が見込めるためだ。

実際、筆者が、那須塩原のヨークベニマルを核テナントとするショッピングモール「ヨークタウン」を訪れた際、そこにある無印良品は非常ににぎわっていた。近隣の「イオンタウン」などがガラガラだったのとは対照的だった。

ヨークベニマルと、無印良品の看板(筆者撮影)© 東洋経済オンライン

また、SNSなどで「無印良品」を検索してみると、「うちの街にも無印がやっときた」と投稿している様子なども見受けられ、まだまだ地方では「無印」ブランドが魅力的なものだともいえる。

このように、無印良品は地方においてまだブランド力を維持しているようにも思える。「地方」に根を下ろし、拡大していく戦略は功を奏するかもしれない。

「無印良品」の「ストーリー」としての「地方戦略」

実は、こうした「地方戦略」の強みは、実質的な利益だけではなく、「無印良品」という会社の経営戦略を「ストーリー」として見たときにも、すんなり受け取れるものであり、その点でも、希望があると考えられる。

『ストーリーとしての競争戦略』の著者・楠木健が指摘するように、優れた経営戦略は、それを一つの「ストーリー」として提示することができる。

無印良品は1980年、西友のプライベートブランドとしてスタートし、西武グループの総帥だった堤清二の思想が深く刻みこまれたブランドだった。その思想とは、「ノーブランドというブランド」というもの。当時のハイブランド隆盛の時代に真っ向から対立する、非常にコンセプチュアルな理念だ。

 

そして、その理念は、商品デザイナーに起用された杉本貴志や小池一子、原研哉といったデザイナーたちの商品デザインも含めて、同社のさまざまな戦略の際を打ち出すときのストーリーの核となってきた。例えば、そのストーリーの一環として、ハイブランドではなく、その土地に根付いた、土着的なものを重視する、という商品開発における姿勢も生まれている。

また、良品計画のこの姿勢は、「リージョナルランドマークストア」を増やしているスタバに通じる。リージョナルとは「広い地域」を指す言葉で、スタバの公式サイトでは「日本の各地域の象徴となる場所に建築デザインされ、地域の文化を世界に発信する店舗の総称です」と語られている。神戸北野異人館店や太宰府天満宮表参道店が代表例だ。

このように考えると、無印良品の地方出店は、ある種、「土地に根付いたものを重視する」という、それまでのストーリーを自然に発展させた形でありながら、昨今のチェーンストアのブランディングではトレンドに沿ったものでもあると言えるのかもしれない。

無印良品はどうなっていくのか

無印良品がここ数年、拡大の中である種の”ひずみ”を生じさせてきていたのは確かである。その中で、これまでの販路にはなかった、主軸とは言えなかった「地方出店」が選択肢として登場してきた。

これらは、表面的に見ると無印良品の方向転換にも思えるが、実は、ストーリーとして捉えたときの一貫性はあり、十分に分があるともいえる。

かつては日本における小売りの優等生ともいわれていた「無印良品」だが、さまざまな変化を遂げながら、現在でも迷いながら経営を続けている。その進路がどのようになるのか、今後の動きに注目したい。

【参考;管理人】wikipedeia

株式会社ヨークベニマルYORK BENIMARU CO.,LTD.)は、福島県を中心に東北南部から関東北部の5県にかけてスーパーマーケットチェーンを展開する日本企業セブン&アイ・ホールディングスの完全子会社である。

ヨークベニマルの「ヨーク」は、Ito Yokado のYokをアレンジしたYorkであり、「ベニマル」は、かつての紅丸商店のBenimaruを合わせたもの。

「 イトーヨーカドーの公式サイトによると、セブン&アイ・ホールディングスの中核企業の一つで、1920年に創業した総合スーパーです。」

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