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日本がコロナ感染拡大を抑えたのは「偶然」? 内田樹×岩田健太郎対談 2020.10.22 11:30dot.#新型コロナウイルス#朝日新聞出版の本#読書

2020年10月22日 15時15分21秒 | 感染症

日本がコロナ感染拡大を抑えたのは「偶然」? 内田樹×岩田健太郎対談

内田樹さん(撮影/水野浩志)

内田樹さん(撮影/水野浩志)

岩田健太郎さん(撮影/水野浩志)

岩田健太郎さん(撮影/水野浩志)


【対談相手の岩田健太郎医師の写真はこちら】

*  *  *
■コロナウイルスの偶発性

内田:海外では、韓国、台湾のように感染を抑え込むことに成功した国もありますね。

岩田:そうですね。韓国もそうですし、中国もほぼほぼ抑えていますし、ニュージーランド、オーストラリア、タイ、ベトナム。

内田:ベトナムもそうでした。

岩田:シンガポールもけっこう抑えています。あと、ヨーロッパではアイスランドですね、成功しているのは。

内田:そういった国々も、第2波を起こさないために、これからやはり鎖国的にふるまっていくんでしょうか。

岩田:そうとも言えません。むしろ、旅行そのものは再開しようとしているみたいですね。例えばニュージーランドとかは「観光」というのがすごく大きな国の資源ですから。

 ただし、感染対策をほったらかして観光優先にするというのではなく、むしろ経済を回していくために感染対策を徹底的にやる、というスタンスです。このあたりがアメリカやブラジル、そして一部の日本の方々と意見が異なるところですね。

 日本はかなり、「自分たちは感染対策がうまくいっている」みたいなヘンな神話がこの半年でまかり通っていて、僕は非常に危険だと思っています。日本では、高齢者の療養施設などでの感染流行がとても少なかったという運の良さがあったんです。数少ない流行例が、じつは神戸であったんですけど。

内田:高齢者施設での感染は少なかったんですか。

岩田:非常に少なかったんです。それに比べて、アメリカはひどい状態でした。フロリダやワシントンのナーシングホームで次々に感染が起きて、かなりの方々が亡くなられています。同様に、フランスやドイツの高齢者施設でもクラスターが起きていました。日本でこうした高齢者の感染が多発しなかった理由は、単に「運が良かった」だけではないかと。ウイルス学的には、まだまだ根拠が見えていません。

ですが、コロナウイルスはストカスティックなウイルスであるとは言えるんです。“確率的な”ウイルスである、という意味です。つまり、たいていの場合は何も起きないけれど、ある条件が揃うとドカンと問題が起きるという、ギャンブルのようなイメージです。サイコロに喩えて言えば、2個のサイコロを振り続けてゾロ目が出るとドンと患者さんが増えるという感じですね。

 だから、一人から何十人もの感染が起きたりするんです。それはウイルスの特徴でもありますし、その人の特徴、つまりその一人の人間がどういう行動をとったかということでもあります。例えば、3密のようなところで感染しやすい条件が揃った場合に、ウイルスがその人を介してワッと広がる。要するに、偶発的なんです。

 いっとき、感染者の実効再生産数についてよく報道されましたが、あれは連続的な概念でのシミュレーションなので、今回のコロナ感染については想定しきれない面があるんです。人間って気まぐれな生き物なので、ウイルスのキャラクターと偶然の行為が噛み合った場合、ドーンと感染者が増えたりすることがある。それが若者しかいないキャバクラなどで増えたら重症者は出ないかもしれませんが、高齢者が集う銀座のバーみたいな場所で増えたら、かなり深刻な結果になるでしょう。

 日本の場合、その偶発的な事象がこれまでわりといい結果に落ち着いているので「ラッキー、ラッキー」で来ていますが、「日本の文化や生活習慣のせいで大丈夫なんだ、日本スゴイ」みたいなヘンな神話に変わるのが一番危険なんです。コロナウイルスの偶発的な要素をよくよく見込んだ対策が必要です。

■内田樹(うちだ・たつる)
1950年東京都生まれ。神戸女学院大学名誉教授。東京大学文学部仏文科卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程中退。著書に『私家版・ユダヤ文化論』、『日本辺境論』、『日本習合論』、街場シリーズなど多数。

■岩田健太郎(いわた・けんたろう)
1971年島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科教授。島根医科大学(現・島根大学)卒業。ニューヨーク、北京で医療勤務後、2004年帰国。08年より神戸大学。著書に『新型コロナウイルスの真実』『感染症は実在しない』など多数。

 


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