とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

「国際グリム賞」

2006年04月17日 14時15分58秒 | 児童文学(絵本もふくむ)
 国際グリム賞は、1986年に大手前高等学校創立100周年記念事業として金蘭会の基金により創設され、その趣旨を推進する財団法人大阪府立大阪国際児童文学館との共催で、二年に一度、優れた児童文学研究者に贈られる賞です。

 この賞は、 次の世代のための文化振興事業を目指し、児童文学の振興を図るべく、世界における児童文学の研究者を対象とする国際児童文学賞として創設されました。児童文学の真の発展のためには、地道な研究の積み重ねが必要であり、かつそうした研究にたずさわる人々の業績を顕彰することはきわめて有意義であり、8回を重ねる本賞の実績は世界的にも高く評価されています。

 この賞が創設された1986年は、グリム兄弟が誕生して200年の年にあたり、それにちなんで「国際グリム賞」と名づけられました。 また、児童文学作家・画家を対象とする国際アンデルセン賞と交互になるように隔年に授与しています。 賞金は100万円、正賞として財務省造幣局のご協力により「グリム童話集」第2版の花輪をモチーフとした左記の盾も合わせて贈られます。

http://kinran.jp/grimm/↑大手前高校のサイト。2005年11月の10回目の授与式の様子などがわかります。(大阪とグリムのドッキングには、おどろいたー!)

受賞暦(出典サイトhttp://www.iiclo.or.jp/grimm/1987-Doderer.htm)↓

第1回  1987年 クラウス・バーデラ博士 (ドイツ)
     
贈呈理由
 クラウス・ドーデラー博士は、児童文学をそれぞれの社会や時代の反映であるととらえ、精神史や社会状況の面から児童文学を論ずることを中心に研究をすすめて、児童文学研究の深化と方法論の確立にすぐれた成果を挙げられました。
 また1963年、J.W.ゲーテ大学児童文学研究所を創設し、その所長として、研究チームによる総合的な児童文学研究の推進につとめてこられました。特に「児童文学事典」全4巻の編集責任者・執筆者としての活躍はめざましく、この事典は児童文学の歴史的・国際的研究の基盤づくりとして高い評価を受けています。ドーデラー博士はまた、文学教育や言語教育のあり方について鋭い指摘を続けるとともに、国際児童文学学会の創立に尽力されるなど児童文学研究の国際的振興にも多大の貢献をしておられます。

第2回  1989年 ヨーテ・クリングベリ博士 (スウェーデン)

◇贈呈理由

 ヨーテ・クリングベリ博士は、書誌学に基礎をおいた児童文学史研究に力を注がれ、16世紀末から19世紀にいたるスウェーデン児童文学の歩みを資料の裏付けと正確な検証によってまとめあげられました。その成果は『スウェーデン児童文学1591~1839-歴史的・書誌学的概観』(1964)及び『スウェーデン児童文学1840~89-解題目録』として発表され、高い評価を得ております。またこの歴史的・書誌学的研究をはじめとするこれまでの研究活動の中で児童文学研究の理論と方法を確立され、科学的な児童文学研究の基盤をつくりあげられた功績はきわめて大きく、国際的にも注目されているところであります。
 また博士は児童文学の翻訳・翻案の問題や、外国作品の自国への受容の問題にも取り組まれ、国際児童文学学会の第3回シンポジウム「児童書の翻訳-その現状と問題」のまとめ役を務めたほか、数点の著作によって研究成果を発表し、問題を提起されています。そのほか博士は文学教育の理論と方法についても論究を探められ、研究プロジェクトの成果を英文で発表するなど、文学教育の国際的振興にも尽力されております。
 なお国際児童文学学会の初代副会長、および第2代会長を務めるなど、児童文学研究の国際的振興にも力を注がれておられます。

第3回 1991年 ジェームス・フレザ博士 (スェーデン)

◇贈呈理由
 ジェームス・フレーザー博士は児童文学と図書館学についてのすぐれた見識を基に、児童文学・児童文化の研究資料をどう収集し、どう整備するかという、「研究資料コレクション」のあり方について考察を深められ、その結論をさまざまな提案として発表されることにより、児童文学研究の基盤作りに大きく寄与されました。
 また1973年には、国際的視野に立った児童文学研究の専門誌「フェドラス」を創刊、1988年までに21冊を刊行されました。これは国際的なスケールをもった、本格的な研究誌としては初めてのものであり、特にそれまで注目されることのなかった日本、キューバ、インド、モンゴルなどの情報収集につとめたことや、英、米、独、ソビエト、日本などの研究者に論評委員を委嘱して研究書の紹介・論評を行い、研究者間のネットワークづくりを推進したことなどで、高い評価を得ました。また、それまで研究対象として取り上げられることの少なかったテレビ番組、大衆児童文学等に積極的に取り組んだことも注目に値します。
 博士はこの「フェドラス」の刊行を独力で続けられるとともに、1978年から3年間国際児童文学学会の会長を務められ、さらに各種展示会の企画・助言、児童文学に関するシンポジウムや国際合議での問題提起など多面的に活躍され、児童文学研究の国際的な振興に多大の貢献を果たされました。
 
第4回 1993年 鳥越 信 (日本)

◇贈呈理由
 鳥越 信氏は1950年代のはじめから、児童文学の研究に専念し、多くの業績と功績を残しています。
 まず、これまで、ともすると印象批評にとどまった研究に対し、ひろく文献や資料を駆使し、テキスト批判は勿論、書誌学的方法によって新しい分野を開拓したことでも知られています。「日本児童文学史年表」のほか、編者として、「校定新美南吉全集」や本年度完成した「日本児童文学大事典」など、画期的な成果といえるでしょう。
 また、その過程に於いて精力的に、文献・資料の蒐集が続けられ、それは、「鳥越コレクション」と呼ばれるに至りました。後に、この膨大な貴重な資料は、大阪国際児童文学舘の設立の契機となり、現在、収蔵資料の中核となっています。
 このように氏は、児童文学理論の確立など研究者・学者としての活動だけでなく、大阪国際児童文学館の総括専門員として、国内に限らず、世界的な文学運動を実成し、また、読書指導や文学教育にも啓蒙的な役割を果たして、児童文学の社会的な向上、発展に力を尽しました。
 以上、鳥越氏の功績の一端をあげたに過ぎませんが、当然、国際的にも高く評価され、日本を代表する児童文学者として認められているのは言うまでもないところです。

第5回 1995年 ドニース・エスカルビ博士 (フランス)

◇贈呈理由
 エスカルピ博士は、フランス児童文学の先駆者であり、現在にいたるまで、フランス国内外で、児童文学研究に関する幅広い活動を行っています。
 研究活動の中核をなすものは、1979年に、エセックス・マルセイユ大学で書いた「フランス及びイギリスにおける<長靴をはいた猫>」の論文に見られる昔話研究で、この論文によって、博士号を取得しました。そこに見られる記号論・図像学・比較文学の理論を導入した研究は、児童文学研究の幅を大きく広げました。
 また、エスカルピ氏は、大学で児童文学の講座を行い、フランス児童文学研究に先鞭をつけたソリアノ氏の後を継ぐ形で、児童文学研究の学術的な地位を確立してきました。
児童文学の普及活動に関しては、1972年より、児童書の書評誌 "Nous voulons lire!" (「読みたい!」1972年.創刊)を刊行、現在も刊行しています。
 国際的な舞台での活躍も著しく、国際児童図書評議会や国際児童文学学会の理事を務め、児童文学研究の国際的交流・振興にも多大な貢献をしました。

第6回 1997年  テオドール・ブリュッゲマン博士 (ドイツ)

◇贈呈理由
 テオドール・ブリュッゲマン博士は、ドイツ児童文学の歴史研究のパイオニアとして、文献学に基礎をおいた歴史的な子どもの本の研究に力を注がれてきました。また、博士は歴史的児童書の収集家として有名であり、コレクションをまとめた『児童文学1498-1950 解題目録』は、児童文学研究にとって数少ない貴重な資料と高い評価を得ています。
 さらに、博士はケルン教育単科大学(のちにケルン大学に統合)に児童文学の講座を開設し、若い研究者を組織して、子どもの本の歴史的変遷をたどる共同研究に尽力されました。その成果は博士が編集出版された『児童文学ハンドブック』(全4巻)に結実しており、社会文化史を視野に入れた歴史資料の文献学的記述には、子どもの本の歴史研究の理論と方法が示されています。このハンドブックは、国内外の歴史研究者に15世紀半ばから19世紀までの4世紀にわたる子どもの本の歴史的変遷を一望する豊富な資料を提供し、児童文学研究の振興に大きく寄与するものとして、国際的に高い評価を受けています。

第7回 1999年  ジャック・ザイブス(アメリカ)

◇贈呈理由
 ジャック・ザイプス博士はグリム童話やペロー童話をはじめとするおとぎ話が欧米社会の文明化や、子どもたちの教化・社会化に果たした役割を社会文化史的な観点から解釈し、革新的な理論を展開しておとぎ話研究に新たな一石を投じられました。その理論は児童文学研究のみならず、文化研究、メディア研究、ジェンダー研究に多大な示唆を与えています。
 著作は英語圏だけでなく、ドイツ語、フランス語、スウェーデン語、スペイン語、日本語に翻訳出版されています。また、博士は諸国で広く講演を行い、世界的にも著名で、博士の研究活動の影響の大きさ、広さ、深さが窺えます。
 さらに、児童文学批評誌「LION AND UNICORN」(ライオンとユニコーン)の編集者として長年活動し、児童文学、児童劇の研究者として、またストーリーテラーとしても活躍されています。
 以上の全業績によって、児童文学研究の振興に大きく寄与するものとして、国際的に高い評価を受けています。

第8回 2001年 ジャン・ベロ(フランス)

◇贈呈理由
 ジャン・ペロ氏は児童文学を子どもの遊びのひとつとしてとらえる文学観にもとづき、30数年来、児童文学の比較文学的研究と絵本やイラストレーションの図像学的研究に力を注いで来られました。特にアジア諸国の作品にも目を向けた絵本研究は、その幅広い視野と深い考察とにより多くの研究者の注目を集めております。また、各種のシンポジウムや国際会議をコーディネートするとともに、その成果をすぐれた論文集として編集・刊行しておられます。
 パリ13大学退官後は、オボンヌ市に児童文学の研究機関「国際シャルル・ペロー研究所」を設立、その所長兼教授として国際的な内容・規模の専門講座やシンポジウムを毎年20数回開催して、フランスにおける児童文学研究の振興に尽くしておられます。また国際児童文学学会(IRSCL)の役員として、1991年のパリ市における国際会議の開催に尽力するとともに、USA、カナダ、スペイン、韓国、台湾などの国際会議で講演や発表を行うなど、児童文学の国際的交流を拡充する活動もめざましいものがあります。
 以上の全業績により、ジャン・ペロ氏は児童文学研究の国際的振興に大きく寄与する研究者として高い評価を得ておられます。

第9回 2003年 ピーター・ハント教授(イギリス)

◇贈呈理由
 ピーター・ハント教授は、児童文学研究に関する著作の数々で広く名を知られています。初学者向きの入門書や啓蒙書から高度な理論書まで、さらには、個別の作家・作品論から批評理論まで、対象、テーマ、研究手法を限定することのない著作の数々は、児童文学はもちろんのこと関連諸分野をも含めた深い学識と経験に依拠したもので、いずれも国際的に高い評価を受けています。学問領域としての児童文学研究の確立にも努めてこられましたが、1996年に、児童文学研究者として英国で初めて英文学教授となられた点は、その成果に対する体外的評価が反映されたものといえましょう。
教授は、長年の研究活動を通じて、文化的・学術的国際交流にも力を注いでこられました。世界各国、多様な地域での講義・講演にも積極的に取り組み、訪れた国外の高等教育機関は優に100を超えています。そのような地道な活動を通じて得た知見と人脈が、たとえば、世界各国120名以上もの研究者が寄稿し、現代児童文学界の叡智を結集した『世界児童文学事典』(1996)のような果実を生んでいます。
 以上の業績により、ピーター・ハント教授は、児童文学研究の国際的振興に大きく寄与する研究者として高い評価を得ておられます。
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