岸田新総裁の「ひ弱さと強情」に注目 星浩氏「安倍支配に屈するなら短命」〈AERA〉
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(星浩氏:写真はネットから借用)
岸田新政権の党役員人事は、「安倍・麻生」の影響を感じざるを得ないものだった。今後、岸田氏はどう向き合っていくのだろうか。AERA 2021年10月11日号は、政治ジャーナリスト星浩さんに聞いた。
岸田文雄氏には「煮え切らない」「ひ弱」といったレッテルが貼られてきた。総裁選への挑戦を躊躇(ちゅうちょ)したこともあった。地元・広島を揺るがせた河井克行・案里夫妻の選挙違反事件には安倍晋三政権の首相官邸が絡んでいたのに、怒りをあらわにすることはなかった。
一方、強情で芯の強さを見せることもある。外相だった2015年12月、慰安婦問題の解決で韓国側と合意した。岸田氏の事務所には嫌がらせの電話やファクスが殺到。側近たちは気をもんだが、本人は「大したことではない」と気にしなかった。
政治的立場を聞かれると「リベラルです」と即答する。リベラル嫌いの安倍氏を気にして側近たちが「『リベラル』は避けた方が……」と持ち掛けても「何か問題あるの?」と取り合わなかった。
その岸田氏の政権が発足。総裁選で影響力を増した安倍氏にどう向き合うのか。
「ひ弱さと強情」がどう表れるのか注目した。
すると、安倍氏の盟友・麻生太郎氏は副総裁として自民党を牛耳る。幹事長には安倍氏に近い甘利明氏(麻生派)、政調会長には安倍氏が全面支援した高市早苗氏(無派閥)が起用された。官房長官は安倍氏の出身派閥・細田派の松野博一氏。岸田氏は森友問題の再調査に否定的で、桜を見る会をめぐる安倍氏の責任問題も追及しないという。これでは、岸田氏が掲げた「新しい自民党の姿」とはほど遠い。「安倍傀儡(かいらい)政権」という野党の批判が説得力を持つ。
「特技は聞く力」という岸田氏。誰の声を聞くのか。新型コロナウイルスの感染拡大が続いて、国民は疲弊している。多くの国民は安倍・菅義偉政権のコロナ対策に不満を抱きながらも、耐え忍んできた。「森友・桜」といった腐敗体質への怒りもマグマのようにたまっている。国民の声に耳を傾けず、安倍支配に屈するなら、岸田政権は短命に終わるだろう。国民が審判を下す総選挙が1カ月後に迫る。 ※AERA 2021年10月11日号