イスラエルは8日、パレスチナ自治区ガザ地区南部の街ラファの一部地域を砲撃した。アメリカは適切な計画がないままラファに軍事攻撃を仕掛ければ「大惨事」になると、イスラエルに警告した。
米ホワイトハウスは8日、ラファにいる避難民への配慮のない、いかなる大規模作戦の計画も支持しないと表明した。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は7日、ラファでの「活動準備」をイスラエル国防軍(IDF)に指示したとし、イスラエルのハマスに対する「完全勝利」は数カ月後に迫っていると述べていた。
現在、ガザ地区の人口の半数以上が、エジプトと国境を接するラファで暮らしている。
悲惨な人道状況の中で生き延びようとしているパレスチナ人は約150万人に上る
イスラエルのラファ攻撃
イスラエルは8日朝、ラファの一部地域を攻撃した。IDFの戦車も砲撃したと報じられている。
6歳の子供がいるエマドさん(55)は、自宅を逃れてラファに身を寄せている。エマドさんはどこにも逃げ場がないまま地上攻撃を受けることを最も恐れていると、ロイター通信に語った。
「私たちの後ろは(ガザ地区の境界にある)フェンスで、前方は地中海だ」とエマドさんは述べた。「どこへ行けというのか」。
昨年10月7日にイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が始まって以降、ガザ地区北部と中部の大部分は、イスラエルによる継続的な砲撃によって廃墟と化している。
イスラエルの攻撃めぐるアメリカの立場は
ジョー・バイデン米大統領は8日夕、ガザ地区におけるイスラエルの行動は「度を越している」と述べた。ラファへの言及はなかった。
米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官は先に、IDFには「ガザ地区あるいはほかのどの場所であっても、罪のない市民の生活を守ることを考慮に入れるという特別な義務がある」と述べた。
「まさにいま軍事作戦を行えば、(ガザ地区の)人々にとって大惨事となる。それは、我々が支持できるようなことではない」と、カービー氏は述べた。
そして、イスラエルがラファでの大規模作戦をいまにも開始しそうだと示唆するものは、アメリカは確認していないと付け加えた。
米国務省のヴェダント・パテル副報道官も、「我々(アメリカ)は真剣かつ信頼できる計画なしに、このようなことは支持しない」と述べ、カービー氏に同調した。
作戦が実施された場合、ラファの避難民はどこへ行くべきなのかとのBBCの質問に対し、これは「イスラエル側が回答すべき、もっともな質問だ」とパテル氏は答えた。
アントニー・ブリンケン米国務長官は訪問先のイスラエル・テルアヴィヴで、「イスラエルが行う軍事作戦は何よりもまず、民間人を優先する必要がある。(中略)ラファの場合は特にそうだ」と述べた。
イスラエルの重要な友好国で、軍事的支援を行うアメリカが、ガザ地区におけるイスラエルの軍事攻撃で今後起こり得る段階について言及するのはまれだ。
米政府はイスラエルに対し毎年約38億ドル(約5700億円)規模の軍事援助を行っており、イスラエルにとって世界最大の援助国となっている。
ガザの状況は
イスラエル当局によると、ハマスのイスラエル南部への奇襲では民間人を中心に約1300人が殺害され、240人以上が人質に取られた。
ハマスが運営するガザ地区の保健省は、イスラエルの報復攻撃でこれまでに2万7800人以上のパレスチナ人が殺害され、少なくとも6万7000人が負傷したとしている。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は8日、ガザ地区の状況について厳しい評価を示した。
「彼ら(ガザ市民)は人々が密集しているその場しのぎのシェルターで、不衛生な環境の中、水道も電気も十分な食料供給もなく暮らしている」
「我々はハマスの恐ろしい行為を明確に非難した。ガザ地区における国際人道法に反する行為も明確に非難する」