日程の最後で正体を見せた今度のトランプ国賓訪日の本当の目的
ゴルフから始まって、大相撲観戦、炉端焼き夕食など、まるで観光に来たのではないかと野党は批判する。
もちろん、そうではない。
トランプが観光だけで日本に来るはずがない。
令和になってはじめての国賓として新天皇に謁見し、そして日米首脳会談を行うことが目的だ。
しかし、象徴天皇への謁見は儀礼的なものであり、安倍首相との会談も、すべて参院選後に先送りすることを合意しただけの中身の無いものだった。
今度のトランプ大統領の訪日の本当の目的は一体何だったのだろう。
その事を、最後の最後で見事に教えてくれた。
日本を離れる直前にトランプ大統領が訪れた場所はどこか。
それは、やがて空母に改修される自衛隊の護衛艦「かが」の艦上であり、米軍強襲揚陸艦「ワスプ」の艦上である。
いずれも安倍首相を従えている。
そして、そこでトランプ大統領は自衛隊や米兵の前でこう演説をぶった。
いまや日米同盟は最強であり、米国からのF35機の大量購入は、日米の安全保障をさらに強めるものだと。
安倍首相を脇に立たせてそう演説したトランプ大統領の姿を見て、これこそが今度のトランプ国賓訪日の隠された本当の目的だったと確信した。
もはや日本は引き返す事が出来ないほど米軍に支配されようとしている。
日本の自衛隊は米軍の指揮下に置かれ、自衛隊は使いこなせん高額な装備をどんどんと米国に買わされ、そして末永く米国と中国の覇権争いの最先端に立たされることになる。
そして、誰一人、その深刻さに気づくことなく、日米同盟強化の方向に流されていく。
いや、知っていても、もうどうにもならないと、あきらめているのだ。
事態は深刻である。
はたして国民はどこまでそのことに気づいているだろう。
誰かがその流れを変えなくてはいけない。
いまこそオリーブの木を成功させてこの国の政治の中に、憲法9条を国是とすべきだと訴える政党、政治家を輩出しなければいけないのである(了)
田中宇の国際問題解説
◆先進諸国は国民の知能を下げている? 【2019年5月28日】 90年代から、先進諸国の経済構造は、産業主導から消費主導に転換した。世界は米英中心の債券化による金融システムの大膨張・バブル化の30年間を経験し、人々の高いIQが望ましい製造業など産業の利潤による経済発展でなく、世界的な金融バブルの分配を受けた消費の増加が経済成長を支えるようになった。消費者は、高いIQを必要としない。宣伝に乗せられて消費を増やす低能な人が多いほど、消費社会が繁栄する。90年代以降、先進国の支配層にとって、国民のIQは高くない方が良いものになった。だからIQが低下傾向になったのでないか
2019年6月 9日号
牧太郎の青い空白い雲/720
イラン戦争は起きるのか? 新聞、テレビは殆(ほとん)ど触れていないから「まさか?」とは思うが......油断はできない。戦争は偶発的な出来事で始まるものだ。 ことの始まりは「核合意」。2015年に締結された「イラン核合意」はイランの核開発を制限する"見返り"に経済制裁を解除するというもの。アメリカとイラン、それにイギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国も参加した。 ところが、トランプ政権は「イランが中東のイスラム武装組織を支援している!」と文句をつけ、昨年5月「核合意」から離脱した。以降、原油をはじめ、イランからの禁輸措置が強化された。一方、イランは対抗して、ホルムズ海峡を封鎖する!とほのめかす。 海上輸送される「世界の原油の約3分の1」がホルムズ海峡を通過する。アメリカもイランも、ホルムズ海峡を「最重要の戦略的要衝」と位置付け、にらみ合いを続けている。 イランの精鋭部隊「革命防衛隊」のトップは「アメリカとの軍事衝突が迫っている」と警鐘を鳴らし、アメリカは空母エイブラハム・リンカーンと「核搭載可能な戦略爆撃機による部隊」を中東に派遣。今年5月15日にはイランの隣国イラクからも「緊急要員以外の大使館職員の退避」を命じた。 アメリカとイラン、どちらも「戦争は避けたい!」と言ってはいるが、戦争の準備は着々と進んでいる。これは"開戦前夜"ではあるまいか?
アメリカは「戦争大好き」である。「大量破壊兵器を保有している」という証拠を捏造(ねつぞう)してまで、イラク戦争を始めた。泥沼のベトナム戦争はまさに"狂気の沙汰"だった。
多くの日本人は米中経済戦争に注目しているが、イランに対する武装攻撃の方が深刻ではないのか?
× × × 日本は「イラン戦争」に無関心でいられるのか?微妙である。トランプ・安倍の蜜月ぶりを見ていると、日本は(憲法違反を承知の上で)自衛隊をイラン戦争の現場に送り込むことだってあり得る。
というのも、日米には「戦争になったら、自衛隊は米軍の指揮下に入る」という「密約」が存在したからである。占領終結直後の1952年7月23日と、54年2月8日の2回、当時の吉田茂首相は極東米軍の司令官と会談。口頭で「米軍の指揮下に入る」と約束した。
朝鮮戦争(50年)で、苦境に立たされた米軍が日本に戦争協力を求め、それに応えたのだろう。「日米軍事協力」は今でも「横田空域」(新潟県から東京西部、伊豆半島、長野県までの1万2000フィートから最高2万3000フィートの高度の空域)では、米軍が管制業務を行っている。
この「密約」は、すでに法的な力を持たないと思うが、2017年11月5日、トランプが大統領として初めて来日した時、大統領専用機で、米軍横田基地に到着すると、米軍だけでなく、自衛隊関係者を前に「私が大統領である限り、敵に対抗し、勝利に必要な(軍事的)資源を持てるようにする。常に、常に(米国は)勝利する」と訴えた。
自衛隊を「我が兵隊」と言わんばかりの大演説。自衛隊は米軍の指揮下にある!と言いたかったのではないか?
いずれにしても、イラン戦争になれば、自衛隊は米軍を武力支援するだろう。
× × × 日本は「戦争大嫌い」な国だ。それでも、北方四島ビザなし交流の訪問団の一員として国後(くなしり)島を訪問した日本維新の会の丸山穂高衆院議員は「(戦争をしないと北方領土を)取り返せない」などと言い放った。
口にこそしないが「戦争好き」の政治家は彼以外にもかなり存在する。
もし、日本がイラン戦争に足を踏み込み、不幸にも自衛隊に犠牲者が出たりしたら、どうだろう?
入隊者は激減するだろう。そうなれば「戦争好き」が"徴兵制の復活"まで言いだすかもしれない。イラン戦争は「米中経済戦争」より、日本にとって「重たい選択」を強いることになるのではあるまいか?