インターネットでベンチャーを始めようと思っている方は、沢山いらっしゃるかと思います。でも、ご存知でしたか?インターネットの世界に、着々と法の手が伸びてきていることを。
これから250ページほどの、この本をどこまで読めるかわかりませんが、とりあえず、「はしがき」を引用しておきます。
....................(引用開始) .................................
「はしがき」
インターネットが普及し始めてから約10年が経過した。この間、インターネットは、コンピュータ技術とネットワーク・通信技術の進歩により、急速に普及していった。さらに、通信コストの低廉化とブロードバンド化により、今ではどの職場や家庭にもパソコンがあり、多くの人がインターネットを利用している。総務省統計では、すでに、わが国のインターネット世帯普及率は85%を超えている。いまや、インターネットは、水道、電気、ガスといった生活インフラと同じように、情報のインフラとしての地位を確立しつつあると言えよう。
しかし、インターネットの普及とともに、トラブルも急増している。たとえば、最近では、スパイウェアの問題が深刻である。ホームページを閲覧しているだけで、スパイウェアがパソコンに侵入し、本人が知らない間に個人の情報が盗まれてしまう。ネットバンキングで、自宅のパソコンからパスワードを入力すると、そのパスワードさえも盗んでしまい、あっという間に、銀行から多額のお金が引き出されてしまう事件が後を絶たない。
本書は「インターネット法」と銘打ったものの、実は、インターネット法という法律はどこの六法全書を見てもない。残念ながら、まだインターネットに関する体系的な法律は整備されていないのが現状である。インターネットの先進国であるアメリカでは、「インターネット法」というよりも、むしろ「サイバースペース法」という呼び方の法が一般的である。
インターネットに関する法律は多岐にわたる。たとえば、ブログに書き込んだ名誉毀損的な表現は憲法、および刑法問題であり、ネットショッピングに関するトラブルは、主に民法問題である。また、詐欺的行為が発生するとそれは刑法問題、コンテンツの不正コピーは著作権問題、外国とのトラブルは国際私法の問題と、あらゆる法律が関わってくる。本書では、できるだけ幅広く、インターネットに関わる法律問題を取り上げた。
もともと、インターネットは規制を好まない世界である。インターネットの利用者をアメリカでは、サイベリアン(Cyberian)とかネチズン(Netizen)と呼ぶこともある。これらの人びとは、インターネット上で形成されるコミュニティに対して帰属意識を持ち、主体的に関わろうとする人々である。初期のインターネットの世界では、一定のエチケットやマナー(これをネチケットという。)を守り、ネット市民としての自由を謳歌していた。
しかし、インターネットの普及とともに、詐欺・悪質商法的行為やトラブルが急増していった。あたかも、自由で平和な桃源郷(ユートピア)に、急に多くの人びとが入り込み、その結果、喧嘩があちらこちらで起こり、また悪人どもがはびこっていったような状況に似ている。実際に、インターネット上での犯罪(サイバー犯罪)の検挙数では、2006年上半期で見ると、不正アクセスが前年度より34%増加し、ネットワーク詐欺が9%、児童ポルノが18%増加している。
このように犯罪やトラブルが急増すると、インターネットの世界を規制する議論が高まる。しかし、スタンフォード大学のローレンス・レッシング教授は、その著『CODE』の中で、インターネットの規制は法律だけではなく、コード(ソフトウェア)による規制が強力であり、コードによる規制が行き過ぎないように規制すべきであると説く。これは、従来の「規制」か「自由」かという一元的な議論に警鐘をならすものであろう。
インターネットの持つ自由・利便性に支えられて、インターネットは全世界規模で爆発的に普及した。わが国では、規制緩和政策が追い風になったことは疑う余地もない。しかし、規制のない無秩序な世界のままでいると、危険な世界として急激に利用者が離れる可能性もある。逆に、規制を強くし過ぎると、窮屈な小さな世界となり、人間が本来持つ創造性や独創性を失い、インターネットが持つ大きな可能性を損なうことにもなりかねない。
すでに、画一的なものを尊重する時代から多様性の時代に入り、社会も個人の多様性を容認する時代へと変わりつつある。インターネットの世界も、いかに秩序を維持しながら、この人間の持つ多様性を価値あるものに変えていくかが、今後の大きな課題であろう。インターネットが普及しだして10年経った今、そのための法規制とはいかなるものであるか、社会のルールとしての法はどうあるべきであるか、を考えるよい機会であると思う。
本書は、単に「規制」か「自由」かという議論ではなく、インターネットが利用者にとって、安心して自由に、また簡便に使えるためには、どのような法秩序またはルールが必要であるかを終始念頭において書いた。読者も本書を読みながら、一緒に考えていただければ幸いである。
なお、本書は筆者の大学での講義ノートをまとめたものである。全体を15章に分け、大学の半期の授業の教科書や副読本として使えるように整理した。また、実例をできるだけ多く取り入れ、大学・大学院生のみならず、ITビジネスに関わる一般社会人にも、読みやすいものに工夫したつもりである。
(後略)
2007年2月
高田 寛
...................(引用おわり).................................
P243 巻末の「参考資料・インターネットによる法律情報の入手」(要約)
最近は、インターネット経由の法律情報データベースを使っての法律情報の入手が盛んに行われている。が、多くは有料だ。無料のものは少ない。
が、このなかでも国際法比較法データシステム(International Comparative Law
DetabeseSystem/ICLDS) http//www.iclds.com というものがあり、無料で公開されており、法学系大学院図書文献支援システム、および外国人情報支援システムという3つの目的で開発され、名前は国際法比較法データベースとなっているが、あらゆる分野の法律情報を採用している。
これから250ページほどの、この本をどこまで読めるかわかりませんが、とりあえず、「はしがき」を引用しておきます。
....................(引用開始) .................................
「はしがき」
インターネットが普及し始めてから約10年が経過した。この間、インターネットは、コンピュータ技術とネットワーク・通信技術の進歩により、急速に普及していった。さらに、通信コストの低廉化とブロードバンド化により、今ではどの職場や家庭にもパソコンがあり、多くの人がインターネットを利用している。総務省統計では、すでに、わが国のインターネット世帯普及率は85%を超えている。いまや、インターネットは、水道、電気、ガスといった生活インフラと同じように、情報のインフラとしての地位を確立しつつあると言えよう。
しかし、インターネットの普及とともに、トラブルも急増している。たとえば、最近では、スパイウェアの問題が深刻である。ホームページを閲覧しているだけで、スパイウェアがパソコンに侵入し、本人が知らない間に個人の情報が盗まれてしまう。ネットバンキングで、自宅のパソコンからパスワードを入力すると、そのパスワードさえも盗んでしまい、あっという間に、銀行から多額のお金が引き出されてしまう事件が後を絶たない。
本書は「インターネット法」と銘打ったものの、実は、インターネット法という法律はどこの六法全書を見てもない。残念ながら、まだインターネットに関する体系的な法律は整備されていないのが現状である。インターネットの先進国であるアメリカでは、「インターネット法」というよりも、むしろ「サイバースペース法」という呼び方の法が一般的である。
インターネットに関する法律は多岐にわたる。たとえば、ブログに書き込んだ名誉毀損的な表現は憲法、および刑法問題であり、ネットショッピングに関するトラブルは、主に民法問題である。また、詐欺的行為が発生するとそれは刑法問題、コンテンツの不正コピーは著作権問題、外国とのトラブルは国際私法の問題と、あらゆる法律が関わってくる。本書では、できるだけ幅広く、インターネットに関わる法律問題を取り上げた。
もともと、インターネットは規制を好まない世界である。インターネットの利用者をアメリカでは、サイベリアン(Cyberian)とかネチズン(Netizen)と呼ぶこともある。これらの人びとは、インターネット上で形成されるコミュニティに対して帰属意識を持ち、主体的に関わろうとする人々である。初期のインターネットの世界では、一定のエチケットやマナー(これをネチケットという。)を守り、ネット市民としての自由を謳歌していた。
しかし、インターネットの普及とともに、詐欺・悪質商法的行為やトラブルが急増していった。あたかも、自由で平和な桃源郷(ユートピア)に、急に多くの人びとが入り込み、その結果、喧嘩があちらこちらで起こり、また悪人どもがはびこっていったような状況に似ている。実際に、インターネット上での犯罪(サイバー犯罪)の検挙数では、2006年上半期で見ると、不正アクセスが前年度より34%増加し、ネットワーク詐欺が9%、児童ポルノが18%増加している。
このように犯罪やトラブルが急増すると、インターネットの世界を規制する議論が高まる。しかし、スタンフォード大学のローレンス・レッシング教授は、その著『CODE』の中で、インターネットの規制は法律だけではなく、コード(ソフトウェア)による規制が強力であり、コードによる規制が行き過ぎないように規制すべきであると説く。これは、従来の「規制」か「自由」かという一元的な議論に警鐘をならすものであろう。
インターネットの持つ自由・利便性に支えられて、インターネットは全世界規模で爆発的に普及した。わが国では、規制緩和政策が追い風になったことは疑う余地もない。しかし、規制のない無秩序な世界のままでいると、危険な世界として急激に利用者が離れる可能性もある。逆に、規制を強くし過ぎると、窮屈な小さな世界となり、人間が本来持つ創造性や独創性を失い、インターネットが持つ大きな可能性を損なうことにもなりかねない。
すでに、画一的なものを尊重する時代から多様性の時代に入り、社会も個人の多様性を容認する時代へと変わりつつある。インターネットの世界も、いかに秩序を維持しながら、この人間の持つ多様性を価値あるものに変えていくかが、今後の大きな課題であろう。インターネットが普及しだして10年経った今、そのための法規制とはいかなるものであるか、社会のルールとしての法はどうあるべきであるか、を考えるよい機会であると思う。
本書は、単に「規制」か「自由」かという議論ではなく、インターネットが利用者にとって、安心して自由に、また簡便に使えるためには、どのような法秩序またはルールが必要であるかを終始念頭において書いた。読者も本書を読みながら、一緒に考えていただければ幸いである。
なお、本書は筆者の大学での講義ノートをまとめたものである。全体を15章に分け、大学の半期の授業の教科書や副読本として使えるように整理した。また、実例をできるだけ多く取り入れ、大学・大学院生のみならず、ITビジネスに関わる一般社会人にも、読みやすいものに工夫したつもりである。
(後略)
2007年2月
高田 寛
...................(引用おわり).................................
P243 巻末の「参考資料・インターネットによる法律情報の入手」(要約)
最近は、インターネット経由の法律情報データベースを使っての法律情報の入手が盛んに行われている。が、多くは有料だ。無料のものは少ない。
が、このなかでも国際法比較法データシステム(International Comparative Law
DetabeseSystem/ICLDS) http//www.iclds.com というものがあり、無料で公開されており、法学系大学院図書文献支援システム、および外国人情報支援システムという3つの目的で開発され、名前は国際法比較法データベースとなっているが、あらゆる分野の法律情報を採用している。