URUK NEWS イラク情勢ニュース (転送・紹介歓迎)
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2008/06/08 (日)
[飛耳長目録 today's news list]
☆今日の掲示板投稿から 幾つかの疑問
・イラク自由会議/市民レジスタンスに関して
・イラク労働者共産党に関して
--------
これはイラク情勢ニュースのサイト訪問者のための掲示板<放電盤>に投稿し
たものです。DVD『イラク・レジスタンスからのメッセージ』を作製する途上で、
市民レジスタンスとかイラク自由会議について、どう考えるか質問されたことが
ありました。その時は、記憶と印象にもとづいて、「***だと思う」という印
象レベルの話をしていましたが、このたびイラク自由会議のwebサイトなどを見て
、疑問点を<放電盤>に書いてみました。
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☆★イラク自由会議/市民レジスタンスに関して
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昨晩は「バスラの労組」について、ちょっとした引っかかりを紹介しました。
そこで今度は、イラク平和テレビ局の開設呼びかけもしてきた「イラク市民レ
ジスタンス連帯委員会」(日本)のサイトにも、イラク側の主たる連帯相手とし
て登場している「イラク労働者共産党」と「イラク自由会議」への疑問を少々。
まず、「イラク自由会議」(IFC)について、感じたところを書いてみます
。こちらはイラク労働者共産党よりは幅広い人々を対象に活動しているようです
が、「我々はなぜ、占領を終わらせ自由で民主的なイラク社会建設のために市民
レジスタンスに確信を持っているのか?」(サミール・アディル議長の声明 2006
年5月23日)についての疑問を少々。
この文書には、なぜ武装レジスタンスではなく「市民レジスタンス」を選んだ
かの理由を書いていますが、説得力のあるものではありません。
曰く、「イスラム主義者と民族主義者のグループは暴力によって自らの目的を
追求してきたが、2003年4月9日以来、2400人のアメリカ兵士と15万
人以上のイラク人の死をもたらした。このことは、アメリカ兵士の死体1体につ
き62人のイラク人の犠牲者を出すということを意味している。従って、基本的
な計算では現在イラクにいる16万8000人のアメリカ軍のためにイラクの全
人口を抹殺して終わることになるのだ!!!」
なぜかIFCはイラク・レジスタンスという表現を使いません(米軍のマネで
はないと思いますが、理由は不明)。前後の文脈から、この段落では、武装レジ
スタンスをイスラム主義者と民族主義グループに置き換えていると思われます。
これ自体が誤認であり、イラク・レジスタンスのイメージを歪めています。
また、次の点として、武装レジスタンスが与えた米兵への犠牲と、米軍がイラ
ク人に与えた犠牲を天秤にかける論法のインチキです。米軍がイラク人を殺傷し
た(する)のは、武装レジスタンスのせいでしょうか? 2006年に書かれた
文書とはいえ、これは無茶な論理です。レジスタンスの活動のないところでも、
当時もその後もイラク人は殺傷されてきました。
また、このあとの段落では、武装グループという表現で、ほとんど意図的に武
装レジスタンスとテロ集団をごっちゃにした表現になっています。これも米国流
でなければ幸いですが、どうなんでしょう。なかには、最近、モスルの例でも実
証され、覚醒会議の正体について触れたときにも指摘したことがありますが、「
レジスタンス」を自称して米軍や傀儡政府に都合のよいテロや市民殺傷を行うグ
ループがあります。そのようなグループとレジスタンス組織との区別もされてま
せん。
イラク・レジスタンスの活動方針や綱領的な文書・認識をイラク情勢ニュース
では紹介してきましたが、そこからみると、明らかにそのようなレジスタンス運
動の存在を無視したがっているように見えます。そしてテロまがいの犯罪をおか
している、あるいは挑発的なグループを「武装グループ」といって非難すること
で、「武装レジスタンス」を選択しない根拠としています。これは中傷の類です
。
また、「その一方で、たとえば石油部門でゼネラル・ストライキを打てば、米
軍車両に対する攻撃で1人の兵士を殺すのに何十人ものイラク市民を道連れにす
るよりも、米国政府に対する衝撃は大きいだろう。そういう理由から、我々は石
油労働者の組合指導者が我々の側にいてIFCの執行部の40%以上が組合指導
者であると言うことは、我々が成功するために重要であり偉大な財産である。」
という件(くだり)。
私も組織された労働者がストライキでたたかう意義は認めます。そのうえで、
相手は十数万の軍隊を派遣してイラクを占領しているアメリカです。ストライキ
には積極的意義もありますが、万能ではありません。さらに、現在アメリカでも
イラク撤退の世論が広く高まっていますが、その理由として「イラクで労働者が
ストで占領に対抗したからだ」と指摘されたことを、私は聞いたことがありませ
ん。他方、「米軍兵士にこれだけの犠牲を払わせる価値のある戦争だと思うか?
」という質問項目は、少なくない世論調査に登場し、「それだけの価値がない」
と答える人々は半数を超えたりしています。
まさに「イラク・レジスタンス」の武装を含む活動は、アメリカ政府とアメリ
カ国民に「大きな衝撃」を与えているのではないでしょうか。
このようなことを考えると、イラク自由会議の文書・発言は、たいへん耳にや
さしい奇麗な言葉が使われていますが、本当に占領と向きあっているのかと疑い
たくなります。それに彼らは確かに、文辞としては占領に反対するとか終わらせ
るとか言っていますが、どのようなプロセスを通じて実現しようとしているのか
、いろいろ読んでみましたが、見えてきません。
武装レジスタンスを選択せず市民レジスタンスを選択したのは、「アメリカ軍
を恐れているからでもない」と断言していますが、これが指摘される前の予防線
でないことを願いたいところです。
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☆★イラク労働者共産党に関して
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たてつづけに済みません。
実は、DVD『イラク・レジスタンスからのメッセージ』の作成過程で、イラ
ク平和テレビ局やイラク自由会議について、別の方から質問されていましたので
、この機会を借りて長々と書いています。******さんの投稿に対する反論という
意味は、まったくないことをお断りしておきます。
次にイラク労働者共産党。これは以前よりもずっと、わかり易くなりましたね
。
彼らのウェブサイトに綱領的文書として掲載されているものを以前も見ました
が、労働者の立場はわかります。しかそれ以外、例えばイラクで大都市以外の地
域に住む人々、その社会に対する分析がほとんどないのは特徴です。部族社会や
宗教的な紐帯が重きをなす地域社会において、誰と団結するのか、団結の基盤は
なにかといった分析がないのは、将来的にであれ一つの国を運営しようという立
場にないのでしょう。
上に「わかり易く」と書いたのは皮肉を込めてですが、もっとも分かり易い例
として、最近、つまり今年のメーデーにむけての彼らの声明です。こういう声明
では、その組織の目指すもの、運動目標が簡潔に記されるのが通例ですが、冒頭
の一段落をコピーすると、こうです。
On this day, the workers and toilers chant: “no to oppression and
exploitation!
”; “no to capitalist wars!”; “no to wage labor slavery” and “a better
world is both possible and obtainable!
”
はぁ~、っ。 「イラクのことなんですか、これは」、と思いました。外国軍
隊に侵略され占領されていて、そのもとでさまざまな苦難が国民に強いられてい
るのに、抑圧も搾取も資本主義の戦争も、そんな一般的なことではなく、占領の
もとで具体的におこなわれているのに、冒頭に出てこないのですよ、そのことが
。本当にアメリカの占領に反対しているのか、疑問を持って当然だと思います。
一つの文書で決めつけるのも何ですから、他の文書もざっと目を通しましたが
、アメリカがなぜイラクを侵略し占領しているのか、その世界戦略はどうなって
いるのか、どのように占領を強めようとしているのか、イラクでそれに協力する
傀儡勢力をどのように操っているのか・・・といったことへの分析は、イラク・
レジスタンスからのメッセージの方が、よほど現実に即していて、説得力もあり
ます。
イラク労働者共産党を高く評価する人が他にもいることを私は知らないわけで
はありませんが、これほどお粗末なものだったのかという点では、このたび認識
を新たにしました。
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☆★DVD: イラク・レジスタンスからのメッセージ
※ 注文は次のページからもできます
http://www.geocities.jp/uruknewsjapan/2008_resistance_dvd.html
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※URUK NEWS イラク情勢ニュース (webサイト)
http://www.geocities.jp/uruknewsjapan/index.html
メーリング・リストへの参加・退会手続きはここでもできます
※イラク・レジスタンス・レポート
http://www.geocities.jp/uruknewsjapan/Iraqi_resistance.html
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2008/06/08 (日)
[飛耳長目録 today's news list]
☆今日の掲示板投稿から 幾つかの疑問
・イラク自由会議/市民レジスタンスに関して
・イラク労働者共産党に関して
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これはイラク情勢ニュースのサイト訪問者のための掲示板<放電盤>に投稿し
たものです。DVD『イラク・レジスタンスからのメッセージ』を作製する途上で、
市民レジスタンスとかイラク自由会議について、どう考えるか質問されたことが
ありました。その時は、記憶と印象にもとづいて、「***だと思う」という印
象レベルの話をしていましたが、このたびイラク自由会議のwebサイトなどを見て
、疑問点を<放電盤>に書いてみました。
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☆★イラク自由会議/市民レジスタンスに関して
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昨晩は「バスラの労組」について、ちょっとした引っかかりを紹介しました。
そこで今度は、イラク平和テレビ局の開設呼びかけもしてきた「イラク市民レ
ジスタンス連帯委員会」(日本)のサイトにも、イラク側の主たる連帯相手とし
て登場している「イラク労働者共産党」と「イラク自由会議」への疑問を少々。
まず、「イラク自由会議」(IFC)について、感じたところを書いてみます
。こちらはイラク労働者共産党よりは幅広い人々を対象に活動しているようです
が、「我々はなぜ、占領を終わらせ自由で民主的なイラク社会建設のために市民
レジスタンスに確信を持っているのか?」(サミール・アディル議長の声明 2006
年5月23日)についての疑問を少々。
この文書には、なぜ武装レジスタンスではなく「市民レジスタンス」を選んだ
かの理由を書いていますが、説得力のあるものではありません。
曰く、「イスラム主義者と民族主義者のグループは暴力によって自らの目的を
追求してきたが、2003年4月9日以来、2400人のアメリカ兵士と15万
人以上のイラク人の死をもたらした。このことは、アメリカ兵士の死体1体につ
き62人のイラク人の犠牲者を出すということを意味している。従って、基本的
な計算では現在イラクにいる16万8000人のアメリカ軍のためにイラクの全
人口を抹殺して終わることになるのだ!!!」
なぜかIFCはイラク・レジスタンスという表現を使いません(米軍のマネで
はないと思いますが、理由は不明)。前後の文脈から、この段落では、武装レジ
スタンスをイスラム主義者と民族主義グループに置き換えていると思われます。
これ自体が誤認であり、イラク・レジスタンスのイメージを歪めています。
また、次の点として、武装レジスタンスが与えた米兵への犠牲と、米軍がイラ
ク人に与えた犠牲を天秤にかける論法のインチキです。米軍がイラク人を殺傷し
た(する)のは、武装レジスタンスのせいでしょうか? 2006年に書かれた
文書とはいえ、これは無茶な論理です。レジスタンスの活動のないところでも、
当時もその後もイラク人は殺傷されてきました。
また、このあとの段落では、武装グループという表現で、ほとんど意図的に武
装レジスタンスとテロ集団をごっちゃにした表現になっています。これも米国流
でなければ幸いですが、どうなんでしょう。なかには、最近、モスルの例でも実
証され、覚醒会議の正体について触れたときにも指摘したことがありますが、「
レジスタンス」を自称して米軍や傀儡政府に都合のよいテロや市民殺傷を行うグ
ループがあります。そのようなグループとレジスタンス組織との区別もされてま
せん。
イラク・レジスタンスの活動方針や綱領的な文書・認識をイラク情勢ニュース
では紹介してきましたが、そこからみると、明らかにそのようなレジスタンス運
動の存在を無視したがっているように見えます。そしてテロまがいの犯罪をおか
している、あるいは挑発的なグループを「武装グループ」といって非難すること
で、「武装レジスタンス」を選択しない根拠としています。これは中傷の類です
。
また、「その一方で、たとえば石油部門でゼネラル・ストライキを打てば、米
軍車両に対する攻撃で1人の兵士を殺すのに何十人ものイラク市民を道連れにす
るよりも、米国政府に対する衝撃は大きいだろう。そういう理由から、我々は石
油労働者の組合指導者が我々の側にいてIFCの執行部の40%以上が組合指導
者であると言うことは、我々が成功するために重要であり偉大な財産である。」
という件(くだり)。
私も組織された労働者がストライキでたたかう意義は認めます。そのうえで、
相手は十数万の軍隊を派遣してイラクを占領しているアメリカです。ストライキ
には積極的意義もありますが、万能ではありません。さらに、現在アメリカでも
イラク撤退の世論が広く高まっていますが、その理由として「イラクで労働者が
ストで占領に対抗したからだ」と指摘されたことを、私は聞いたことがありませ
ん。他方、「米軍兵士にこれだけの犠牲を払わせる価値のある戦争だと思うか?
」という質問項目は、少なくない世論調査に登場し、「それだけの価値がない」
と答える人々は半数を超えたりしています。
まさに「イラク・レジスタンス」の武装を含む活動は、アメリカ政府とアメリ
カ国民に「大きな衝撃」を与えているのではないでしょうか。
このようなことを考えると、イラク自由会議の文書・発言は、たいへん耳にや
さしい奇麗な言葉が使われていますが、本当に占領と向きあっているのかと疑い
たくなります。それに彼らは確かに、文辞としては占領に反対するとか終わらせ
るとか言っていますが、どのようなプロセスを通じて実現しようとしているのか
、いろいろ読んでみましたが、見えてきません。
武装レジスタンスを選択せず市民レジスタンスを選択したのは、「アメリカ軍
を恐れているからでもない」と断言していますが、これが指摘される前の予防線
でないことを願いたいところです。
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☆★イラク労働者共産党に関して
-----------------------------------------------------------------------
たてつづけに済みません。
実は、DVD『イラク・レジスタンスからのメッセージ』の作成過程で、イラ
ク平和テレビ局やイラク自由会議について、別の方から質問されていましたので
、この機会を借りて長々と書いています。******さんの投稿に対する反論という
意味は、まったくないことをお断りしておきます。
次にイラク労働者共産党。これは以前よりもずっと、わかり易くなりましたね
。
彼らのウェブサイトに綱領的文書として掲載されているものを以前も見ました
が、労働者の立場はわかります。しかそれ以外、例えばイラクで大都市以外の地
域に住む人々、その社会に対する分析がほとんどないのは特徴です。部族社会や
宗教的な紐帯が重きをなす地域社会において、誰と団結するのか、団結の基盤は
なにかといった分析がないのは、将来的にであれ一つの国を運営しようという立
場にないのでしょう。
上に「わかり易く」と書いたのは皮肉を込めてですが、もっとも分かり易い例
として、最近、つまり今年のメーデーにむけての彼らの声明です。こういう声明
では、その組織の目指すもの、運動目標が簡潔に記されるのが通例ですが、冒頭
の一段落をコピーすると、こうです。
On this day, the workers and toilers chant: “no to oppression and
exploitation!
”; “no to capitalist wars!”; “no to wage labor slavery” and “a better
world is both possible and obtainable!
”
はぁ~、っ。 「イラクのことなんですか、これは」、と思いました。外国軍
隊に侵略され占領されていて、そのもとでさまざまな苦難が国民に強いられてい
るのに、抑圧も搾取も資本主義の戦争も、そんな一般的なことではなく、占領の
もとで具体的におこなわれているのに、冒頭に出てこないのですよ、そのことが
。本当にアメリカの占領に反対しているのか、疑問を持って当然だと思います。
一つの文書で決めつけるのも何ですから、他の文書もざっと目を通しましたが
、アメリカがなぜイラクを侵略し占領しているのか、その世界戦略はどうなって
いるのか、どのように占領を強めようとしているのか、イラクでそれに協力する
傀儡勢力をどのように操っているのか・・・といったことへの分析は、イラク・
レジスタンスからのメッセージの方が、よほど現実に即していて、説得力もあり
ます。
イラク労働者共産党を高く評価する人が他にもいることを私は知らないわけで
はありませんが、これほどお粗末なものだったのかという点では、このたび認識
を新たにしました。
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☆★DVD: イラク・レジスタンスからのメッセージ
※ 注文は次のページからもできます
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メーリング・リストへの参加・退会手続きはここでもできます
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