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【必読推薦):(1)なぜEek変異株は見過ごされたのか? そして統計からわかる日本の第4波傾向が示すリスク 2021.04.09 牧田寛 

2021年04月11日 07時26分07秒 | 感染症

なぜEek変異株は見過ごされたのか? そして統計からわかる日本の第4波傾向が示すリスク

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見過ごされたE484K変異株

 筆者はこれまでにあくまで統計をもとに世界と本邦のCOVID-19パンデミックの状況について論じてきました。筆者が本連載で第四波エピデミックに言及したのは、2021/02/01公開記事となりますが、残念ながら3月末までに英国株(B.1.1.7)などの変異株がドミナント(支配的地位)となり、第四波エピデミックとなる予測は的中してしまいました。
 現在本邦では、西日本、北海道、新潟県ではB.1.1.7がドミナントであると考えられますが、東日本では変異株があまり見つかっていません。これは国立感染症研究所(感染研)指定による都道府県など自治体での変異株スクリーニングがN501Y変異のみを対象としており、他の変異は見落とされる体制となっているためです。そのため、SNSなどで鍵アカウントを利用しコッソリ実情をつぶやいている担当者による、「◎◎県では、日本一の体制で調査しているが変異株は個発持ち込みの一例だけ、変異株は居ない」という発言などが流れていましたが、これはN501Y変異だけに絞ってしまうと言う極めて非科学的な厚生労働省(厚労省)、感染研(厚労省傘下)の指示によるためで、完全に誤りです*。
結果としてこの県では東北最悪の状況を引き起こしているであろうウィルスが、E484Kをもつ変異株であることを発見する事が大きく遅れたことになります**。
 
〈*この人物は、今週に入りE484K変異が蔓延しているとSNSで発信し始めているが、結局1カ月程度発見が遅れたこととなった。厚労省の指示に盲従した結果、時間を無駄にしたことになる。最近まで医局勤めでこの体たらくであるが、本邦医学界の宿痾であり風土病と考えられる。但し測定者としては測定事実をねじ曲げておらずその点は信頼できる〉
 
 実際には、本連載2021/03/17公開記事で速報したようにE484K変異を持つ合衆国由来の可能性がある変異株が関東・東日本ではドミナントを占めている可能性が高い状況です*。これは厚労省・感染研指定の変異株スクリーニングでは発見できません。スクリーニングにかかれば、感染研で必ず本格的に解析しますので詳細が分かりますが、なぜかスクリーニングが変異株を見つけないように指定されているのです**。
〈**感染研へは陽性者検体の無作為抽出で一部送られているという話もあるが、未確認である。実はこういう重要なことですら研究者の間には情報が共有されていない。厚労省と感染研が関わる情報は透明性が極めて低い〉
 厚労省・感染研による相変わらずの非科学的で非論理的なPCRスクリーニングへの指示は、B.1.1.7(英国株)、B.1.351(南ア株)、P.1(ブラジル株)といった現在問題となっている変異株に共通するN501Y変異だけを見つければ良いという「効率化」の考えに依りますが、これが過去15ヶ月間で本邦をジャパンオリジナル・国策エセ科学・エセ医療デマゴギーによって東部アジア・大洋州ワースト4にしてしまった元凶であるPCR検査抑制論の一貫と言えます。厚労省による小手先芸の根本的に誤った効率化方針は、事態を極度に悪化させています。
 実際に、東日本でE484K変異を持つ何らかの株がドミナントになっている可能性があり、感染研・厚労省は、それを見逃してしまったことになります。E484K変異を持つ変異株には、免疫・抗体回避特性があり、ワクチンと抗体薬の効果が下がることが知られています*。一方でE484K変異単独では、優先的に感染力が強化されるか否かは不明で感染力が普通ならばその点では脅威度はやや下がります。ウィルスの変異は常に起こりますし、E484Kと他の変異が組み合わさることでどのような脅威になるか否かは、その組み合わせが多いために現時点では既知の一部を除きわかっていません。
〈*例えば、B.1.351(南ア株)に対してアストラゼネカ製ワクチンは、事実上無効であることが報告されている。他のワクチンも有効性が下がり、三回接種化などの有効性維持のための対策が考えられている。Efficacy of the ChAdOx1 nCoV-19 Covid-19 Vaccine against the B.1.351 Variant 2021/03/16 NEJM
 
 従って、厚労省・感染研は、またしてもジャパンオリジナル検査資源抑制論に基づき、根拠のない希望的観測による変異株スクリーニング検査限定をおこなった結果、東日本を海外から侵入した変異株のオリンピック会場としつつあると言えます。厚労省と感染研のおかげで変異株ウィルスご一行は、大盛況です。厚労省と感染研は、アスリートや市民よりも新型コロナウィルスの方が大切なのでしょう。どんどん新手が繁殖して行きます。

日本を追い詰める「ジャパン・オリジナル検査資源抑制論」

 
 
 現時点で、厚労省発表の変異株に関する情報を見る限り、西日本、新潟、北海道ではB.1.1.7(英国変異株)が、関東・東北を中心とする東日本とおそらく沖縄県では、E484K変異を持つ日本特有の変異株が蔓延しています。そして、関東では、関西や宮城県に対して約二週間感染拡大が遅れています。関東一円でのエピデミックの遅延は、単純に緊急事態宣言解除が遅かっただけという理由と考えられます。
 このように、B.1.1.7, B.1.351, P.1などN501Y変異を持つ特定の変異株以外を検知できないという効率重視を騙るジャパンオリジナル・検査抑制がここに来ても最悪の結果となっています。既に国外ではNHK報道*のロイター配信を元に「日本におけるE484K変異株(Eek:イーク)」として広く報じられています**。これは、場合によっては”Japan Travel BAN”(対日人的交流封鎖)***という最悪の事態にもつながりかねないことです。
〈*異なるタイプの変異ウイルス 東京の病院で3分の1から検出 2021/04/02 NHK
〈**Troubling “Eek” variant found in most Tokyo hospital COVID cases – NHK 2021/04/04 Reuters〉 〈***昨年12月から英国がTravel BANとなった。参照:HBOL
 
 現在本邦では、西日本と東日本で異なる変異株をドミナントとした非季節性第四波エピデミックSurgeが立ち上がっており、たいへんに厳しい状況にあります。筆者は、統計を観察してきましたが、西日本の第四波エピデミックSurgeに対し、東日本の第四波エピデミックSurgeは、特に関東において関西に対して二週間遅れています。このため関東では、緊急事態宣言の解除、年度初め、学校などの始業が、エピデミックSurgeを加速するという最悪の時期となっており、四月中旬のエピデミックの状態が懸念されます。
 
 本邦は、第三波エピデミックSurgeへの対応の大失敗が災いし、謎々効果*影響国である東部アジア・大洋州諸国で事実上のワースト4**となっています。そのうえで更に変異株スクリーニングへのジャパンオリジナル・国策エセ科学・エセ医療デマゴギーに基づく「効率的な」「抑制」によって取り返しの付かないことになっています。
 
〈*モンゴル、中国、ミャンマー以東の東部アジア、大洋州ではCOVID-19パンデミックによる百万人あたりの日毎新規感染者数が米欧と南米に比して1/10〜1/1000である。またアフガニスタン以東でも百万人あたりの日毎新規感染者数が米欧と南米に比して1/10程度である。 筆者は、2020/03以降この事実を「謎々効果」(謎々ボーナスタイム)と名付けている。全く同じ現象を後に”Factor X”と呼称している人たちもいる。致命率(CFR)は、謎々効果があっても米欧他と大きな差はない。モンゴルは、昨年11月以降の状態がたいへんに悪く、このままでは謎々効果が消滅する可能性がある。謎々効果は、アフリカ大陸でもほぼ全域で見られている〉
 
〈**統計上はシンガポールをワースト2とするワースト5だが、シンガポールは、昨年9月には収束国となっているため除外している。なお本邦には、ワースト5のモンゴルが肉薄している〉
東部アジア・大洋州諸国での百万人あたりの累計感染者数の推移 (ppm線形) 2020/01/22〜2021/04/06

東部アジア・大洋州諸国での百万人あたりの累計感染者数の推移 (ppm線形) 2020/01/22〜2021/04/06/OWID

 また、謎々効果影響国であるモンゴルで、初の謎々効果崩壊の可能性があり、筆者は注視しています。現在情報が殆ど無いのですが、モンゴル共和国は、建国来、旧ソ連邦、ロシア共和国との関係が深く、現在エピデミックの状態が悪くしかも情報の透明性が極めて低いロシアから感染力が強力な変異株などが侵入したのではないかと筆者は疑っています。
モンゴルにおける百万人当たり日毎新規感染者数の推移(ppm Raw DATA線形)

モンゴルにおける百万人当たり日毎新規感染者数の推移(ppm Raw DATA線形)/OWID

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4/6時点での日本、韓国、台湾
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 ここからは、継続的に観察してきているCOVID-19エピデミックの統計を見て行きます。日本、韓国、台湾の2021/04/06現在の統計を比較して行きましょう。
日本、韓国、台湾、アジア全体における百万人あたりの日毎新規感染者数の推移(ppm, 線形, 7日移動平均)2020/09/01-2021/04/06

日本、韓国、台湾、アジア全体における百万人あたりの日毎新規感染者数の推移(ppm, 線形, 7日移動平均)2020/09/01-2021/04/06/OWID

日本と韓国、台湾における100万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm, Raw Data, 線形)2020/09/01-2021/04/06

日本と韓国、台湾における100万人あたり日毎新規感染者数の推移(ppm, Raw Data, 線形)2020/09/01-2021/04/06/OWID

 アジア全域*は、既に指数関数的増加を示しており、COVID-19パンデミックが過去最悪の状態にあります。しかしそれでも米欧南米に比べると謎々効果のために1/4程度となっています。懸念されるのは、元々アジアは米欧の1/20程度の百万人当たり新規感染者数であったのが現在はその差が小さくなっていることです。
〈*OWIDでアジアとは、トルコ、紅海以東を指し、ロシアは欧州に入る〉
 
 本邦では、都道府県によるエピデミック状況の差が大きいのですが、既に指数関数的増加を示しています。本邦の日毎新規感染者は、4/6時点で21ppm*であり、2020/12/16の水準に相当します。 〈*ppmとはParts Per Million (百万分率)を示し、百万分の1である。「ピーピーエム」と読む〉
 
 韓国は、徐々にベースラインを上げつつもK防疫によって平衡状態を維持してきましたが、先週から今週にかけて本邦に4週間遅れで増加に転じています。
 台湾では、2月来域内感染者はほぼ見られず、空港検疫などで入境者から新規感染者を発見するに留まっており、現時点ではエピデミックは生じていません

日本の第四波非季節性エピデミックSurgeは、大規模介入必須の状況

 
 
 次に日毎新規感染者数の一週間・二週間変化率実効再生産数の推移を見ましょう。筆者は、本邦ではよく使われる実効再生産数よりも一週間・二週間変化率を好んで使います。どちらも一長一短ありますので使い分けが大切です。OWIDが、実効再生産数も扱い始めましたので今回から実効再生産数の推移も取り扱います。
日本、韓国における日毎新規感染者数の一週間変化率推移(%)2020/09/01-2021/04/06

日本、韓国における日毎新規感染者数の一週間変化率推移(%)2020/09/01-2021/04/06/+で増加、O%で変化無し、―で減少/OWID

日本、韓国における日毎新規感染者数の二週間変化率推移(%)2020/09/01-2021/04/06

日本、韓国における日毎新規感染者数の二週間変化率推移(%)2020/09/01-2021/04/06/+で増加、O%で変化無し、―で減少/OWID

日本、韓国、台湾、モンゴルにおける実効再生産数(R)の推移2020/09/01-2021/04/06

日本、韓国、台湾、モンゴルにおける実効再生産数(R)の推移2020/09/01-2021/04/06/R>1.0で増加、R=1.0で増減無し、ROWID

 本邦では、日毎新規感染者数の一週間変化率、二週間変化率ともに強い増加を示しています。倍加時間*は19日前後であり、これは第三波での2020/11/09頃の状態です。2021/04/06時点で倍加時間が1カ月を割っており本邦は、たいへんに危険な状態です。但し、一週間変化率が減少に転じていますので、新規感染者数の増加圧力は一旦ピークアウトしており、増加の勢いは減ずることになります。これは増加が終わるという意味ではありません。日毎新規感染者数の微分係数が減少に転じているという事です。
〈*倍加時間とはウィルス=感染者の数が二倍になるのにかかる時間〉
 
 現在本邦では、主に西日本で二週間先行するB.1.1.7によるエピデミックSurgeと主に東日本で見られるE484K(Eek)を持つ別の変異株によるエピデミックSurgeに分かれています。特に関東を中心とする東日本では、エピデミックSurgeが勢いを増すと考えられる4月上・中旬と新年度開始、新学期が重なっており、これに先行した3/21緊急事態宣言解除の影響が現れる時期も重なるという最悪のタイミングですので、今後大きな増加圧に晒される可能性が懸念されます。
 
 厚労省と感染研によるジャパンオリジナル・国策エセ科学・エセ医療デマゴギーに立脚した「効率追求の(自称)かしこい」検査抑制策が最悪の元凶となり、特に関東を中心とする東日本ではエピデミックの実態が極めて不透明です。
 
 現在、宮城県に見られるようにエピデミック制御に失敗した結果として県独自の緊急事態宣言を発している自治体もあり、その結果は4/4頃には統計に表れるのですが、宮城県では県独自の緊急事態宣言の効果が予想通りの時期に現れています。しかし、一部の県による介入のみで今回のエピデミックを制圧できるかは分かりません。
宮城県における日毎新規陽性者数の推移(人Raw DATA+7日移動平均 線形)2021/01/17〜2021/04/06

宮城県における日毎新規陽性者数の推移(人Raw DATA+7日移動平均 線形)2021/01/17〜2021/04/06/東洋経済オンライン「新型コロナウイルス 国内感染の状況

 韓国では、増加率が徐々に増加して危険域に近づいています。このままですとK防疫体制の強化、社会的距離の要求段階の0.5段階引き上げは不可避と考えられます。  台湾でも実効再生産数の上昇などが見られますが、これは空港検疫などの海外からの持ち込みが水際防衛されたもので、国内は新規感染者数0の日が殆どです。完璧と言えるでしょう。
 
 モンゴルは、東部アジアにおける謎々効果国ですが、非常に悪い状態です。筆者は、初の謎々効果崩壊事例になる可能性を考え観察中です。
 
 本邦では政府と「専門家」、「自称専門家」が巧言令色や詭弁、嘘を用いて事態の過小評価や、大失敗の糊塗に勤しんでいますが、数字は正直です。本邦の第四波非季節性エピデミックSurgeは、大規模介入必須の状況にあります。
 次に死亡関連統計を見ましょう。
 
 

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