東芝、上場廃止へ 74年の株式取引に幕
大井真理子、ビジネス記者
日本で最も歴史があり、最も大きな企業の一つである東芝が、株式市場での74年間の歴史に幕を下ろすことになった。非上場化を目指す投資家グループが、同社株式の大半を買い付けた。
同連合は株式の3分の2以上を保有したことで、2兆円を投じて東芝を上場廃止にすることが可能となった。
東芝のルーツは1875年にさかのぼる。当初は時計やからくり人形を製造していた。
今回の買い付け成立により、東芝の株式は早ければ年内にも株式市場から消える見通し。
東芝の島田太郎社長兼最高経営責任者(CEO)は、「新しい株主の下、新たな未来に向かって大きな一歩を踏み出す」との声明を発表した。
東芝は、日本が第2次世界大戦の戦禍から脱却し、東京証券取引所が再開した1949年5月に株式の取引を開始した。
同社の事業は家電製品から原子力発電まで幅広く、戦後の数十年間、日本の経済復興とハイテク産業を象徴する企業だった。
しかし、東芝は近年、数々の大きな失敗に直面した。
ビジネスコンサルティング会社ユーロテクノロジー・ジャパンの ゲルハルト・ファーソルCEOは、「東芝の大惨事は、トップにおける不適切なコーポレート・ガバナンス(企業統治)の結果だ」とBBCに話した。
東芝は2015年、6年間で1500億円以上の利益を過大計上していたとし、73億7000万円の課徴金を支払った。課徴金としては当時、過去最高額だった。
その2年後には、傘下の米原子力事業会社ウェスチングハウスが7000億円という大きな損失を出した。
東芝は倒産を回避するため、2018年に半導体事業を売却した。同事業は東芝にとって「虎の子」の資産だった。
以来、東芝は何回か買収をもちかけられた。2021年には英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズによる提案を拒否した。
同年、東芝は日本政府とともに、海外投資家に不当な圧力をかけたことが発覚した。
前出のファーソル氏は、「多くの日本人、そして特に政府にとっては、東芝は国の宝と見られている。それが問題の一部になっている」と話した。
東芝はその後、会社を3分割する案を発表。しかしこの計画は数カ月のうちに変更され、2分割すると取締役会が発表した。
この分割案が実行される前に、同社の取締役会はJIPからの非上場化の提案を検討していると明らかにした。