米副大統領発言が波紋=欧州反発、新たな火種に―ミュンヘン安保会議
時事通信 2/16
【ミュンヘン時事】バンス米副大統領がミュンヘン安全保障会議で欧州の同盟国を激しく非難したことが、波紋を呼んでいる。ドイツのショルツ首相は15日、「われわれの民主主義と選挙への介入は受け入れられない」と反発。トランプ米政権発足後、亀裂が深まる米国と欧州の新たな火種となる恐れがある。
バンス氏は14日の演説で、欧州における偽情報やヘイトスピーチ(憎悪表現)などの規制を「言論の自由の弾圧」と非難。さらに23日の独総選挙を前に、移民排斥を掲げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への実質的な支持も表明した。
これに対し、ショルツ氏は戦前にナチス台頭を許した反省に触れ、「ファシズムも人種差別も侵略戦争も、決して繰り返さない」と強調。ナチスが犯した罪をAfDが矮小(わいしょう)化しているとして、「『決して繰り返さない』という誓いとAfDへの支持は両立しない」と語った。
支持率トップの保守野党キリスト教民主同盟(CDU)のメルツ党首もバンス氏を批判し、「われわれは特定のメディアを記者会見から排除しない」と述べた。メキシコ湾を「アメリカ湾」と表記しなかったとして、米AP通信を記者会見から排除したトランプ政権をやゆした形だ。
欧州連合(EU)のカラス外交安全保障上級代表(外相)は「われわれに戦いを挑もうとしているようだ」と指摘。フランスのバロ外相も「誰にもわれわれのやり方を押しつけないが、誰もわれわれにやり方を押し付けることはできない」と嫌悪感をあらわにした。
欧州メディアも発言を大きく報じた。仏紙ルモンド(電子版)はバンス氏の発言を「欧州に対する政治思想上の宣戦布告」と伝えた。
マクロン仏大統領、ウクライナ問題で緊急欧州首脳会議を招集
John Irish 2/17
[ミュンヘン 16日 ロイター] - フランスのマクロン大統領は17日、英国の首相を含む欧州首脳を招き、ウクライナ紛争に関する緊急首脳会議を開催する。
仏大統領府によると、マクロン氏は16日に「協議」を呼びかけた。ウクライナに対する米国のアプローチの激変と、それに伴う欧州大陸の安全保障へのリスクについて話し合う。
首脳会議には他に、ドイツのショルツ首相、ポーランドのトゥスク首相、北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長、イタリアのメローニ首相、欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員会委員長、コスタ欧州理事会議長(大統領)が出席する。
トランプ米大統領は先週、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、ウクライナでの戦争終結に向けた交渉を直ちに開始することで合意。事前の相談がなかったことから、欧州では衝撃が広がった。
さらに、トランプ政権のウクライナ担当特使ケロッグ氏は15日、欧州諸国がウクライナ和平交渉のテーブルにつくことはないと発言した。欧州は和平交渉から締め出されることは受け入れられないと反発している。
【ワシントン共同】米ブルームバーグ通信は16日、トランプ政権が欧州側にロシアとウクライナの「停戦」を4月20日の復活祭までに実現したいとの考えを伝えたと報じた。米側交渉団の一人、ウィットコフ中東担当特使は16日のFOXニュースのインタビューで、戦争終結に向け、サウジアラビアでロシア政府高官との和平交渉を始めると明らかにした。
ウィットコフ氏はウォルツ大統領補佐官と共に現地時間17日中にサウジに入る。ルビオ国務長官も訪問先のイスラエルからサウジへ向かう。
ウィットコフ氏はロシア側との初回協議について「信頼の構築」を主眼に置くと強調し「良い進展を得たい」と述べた。
ウィットコフ氏
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は11日、トランプ大統領が、長年の友人で中東担当特使のスティーブ・ウィットコフ氏に対し、ロシアとウクライナの停戦に向けた役割を与えたと報じた。ウィットコフ氏はパレスチナ自治区ガザ地区の停戦合意に貢献したとされ、トランプ氏は「素晴らしい交渉人」などと称賛してきた。
ウィットコフ氏は不動産事業に長年携わり、トランプ氏の信頼が厚い。1月19日に発効したガザの停戦合意を巡っては、ウィットコフ氏が停戦に消極的だとみられていたイスラエルのネタニヤフ首相から交渉で譲歩を引き出したとされる…
ゼレンスキー氏、欧州軍の創設提言 米支援疑問視される中
【2月16日 AFP】ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は15日、ドイツ・ミュンヘンで開催中の安全保障会議で演説し、欧州軍の創設を呼び掛けた。また、ドナルド・トランプ米大統領がロシアとの停戦交渉に意欲を見せる中、交渉ではウクライナと、欧州の支援国の意見が聞き入れられるべきだと訴えた。
ゼレンスキー氏は、トランプ氏がホワイトハウスに復帰したことで、欧州はもはや米国に常に頼ることはできなくなったと指摘。「今や、欧州に脅威を与える問題で米国が欧州にノーと言う可能性を排除できなくなった」「その時が来たと確信している。欧州軍を創設しなければならない」と述べた。
欧州統合軍を創設する構想は何年も前から提案されているが、これまで進展はない。ゼレンスキー氏の提唱で、状況が変化する可能性は低いとみられる。
トランプ氏は今週、停戦交渉を開始するためにロシアのウラジーミル・プーチン大統領と近く会談する可能性が高いとの見方を示した。
ウクライナにとっての短期的な優先事項は、ロシアを含むいかなる和平交渉においても自国の声が聞き入れられるようにし、不利な「ディール(取引)」を回避することにある。
ゼレンスキー氏は演説で、「ウクライナの関与なしにわれわれのいない所で行われた取引は決して受け入れない」「ウクライナ抜きでウクライナに関する決定はあり得ない。欧州抜きで欧州に関する決定はあり得ない」と語った。(c)AFP
[ワシントン 16日 ロイター] - ルビオ米国務長官は16日、ロシア・ウクライナ戦争の終結に向けた「真の交渉」にはウクライナと欧州も参加すると述べ、今週行われる米国とロシアの会談が、和平に関するロシアのプーチン大統領の真剣さを見極める機会になることを示唆した。
米国とロシアは数日中にサウジアラビアでウクライナ戦争の終結に向けた協議を開始する。
ルビオ氏はCBSのインタビューで、交渉プロセスはまだ本格的に始まっておらず、協議が進めばウクライナや他の欧州諸国も参加することになるだろうと語った。
欧州諸国の間では欧州が和平交渉のテーブルにつくことはないというトランプ米政権のウクライナ担当特使ケロッグ氏の発言を受け、交渉から締め出される懸念が出ていた。
ルビオ氏は、プーチン氏が先週のトランプ大統領との会談で和平への関心を示したとし、「それを行動に移す必要があり、今後数日、数週間で、本気かどうかが分かるだろう」と語った。
「最終的には真の交渉であれば、ある時点でウクライナが関与することになるだろう。侵攻された側だからだ。欧州もプーチン氏とロシアに制裁を科しているため、関与が必要になるだろう。まだそこに至っていないだけだ」と述べた。
デイヴィッド・マーサー、BBCニュース
イギリスのサー・キア・スターマー首相は16日、和平合意の一環としてウクライナの安全保障を保証するため、イギリス軍をウクライナに派遣する「用意と意思がある」と表明した。
スターマー首相は英紙デイリー・テレグラフに寄稿し、ウクライナの永続的な平和を確保することは「プーチンが将来的にさらに侵略を開始するのを、我々が抑止するために不可欠だ」と述べた。
首相は、17日にパリで開かれる欧州各国首脳との緊急会談に先駆けて、イギリスとして「必要ならばこの国の軍隊を地上に派遣する」ことで、ウクライナの安全保障の確保に貢献する用意があると表明した。
「このようなことを軽々しく言っているのではない」と首相は書き、「イギリスの軍人を危険にさらす可能性があることについて、それに伴う責任を深く感じている」とも述べた。
その上で首相は、「しかし、ウクライナの安全を保証するためのあらゆる支援は、我々の大陸の安全、そしてこの国の安全を保証するための支援となる」と続けた。
また、ロシアとウクライナの戦争がいつか終わったとしても、「それはプーチンが再び攻撃する前の単なる一時休止になってはならない」と強調した。
イギリス軍は、ウクライナとロシアがそれぞれ掌握する地域の間の国境沿いに、他の欧州諸国の兵士と共に配備される可能性があるという。
スターマー首相の発表の前には、元イギリス陸軍司令官のダナット卿がBBCに対し、イギリス軍は「あまりに疲弊している」ため、今後ウクライナでどのような平和維持活の先頭に立つこともあり得ないと話していた。
首相はこれまで、停戦後のウクライナでその防衛にイギリス軍が関与する可能性はあると、ほのめかすにとどめていた。
首相は今月下旬に米首都ワシントンを訪れ、ドナルド・トランプ米大統領と会談する予定。スターマー氏はアメリカの関与については、「アメリカによるウクライナ安全保障の保証は、永続的な平和にとって不可欠だ。なぜなら、プーチンが再び攻撃するのを抑止できるのは、アメリカだけだからだ」と書いた。
欧州諸国の間では、アメリカが欧州抜きでロシアと和平協議を進めるのではないかと懸念が広がっている。そうした中でスターマー首相は17日の欧州首脳会議に臨む。
アメリカ政府関係者によると、マルコ・ルビオ米国務長官は、ウクライナ戦争の終結を目指した協議のため、数日中にもサウジアラビアでロシア当局者と会談する予定という。
アメリカのウクライナ担当特使キース・ケロッグ氏は15日、アメリカとロシアの協議に欧州首脳はいっさい参加しないと発言。米ロとしては、欧州の意見を参照するにとどめると述べた。
ウクライナ政府幹部は16日、ウクライナ戦争終結を目指す米ロ会談にウクライナ政府は招かれていないとBBCに明らかにした。
トランプ米大統領は12日、ロシアのプーチン大統領と長時間の会談を行ったと発表し、ウクライナでの「ばかげた戦争」を止めるための交渉が「直ちに」始まると表明。トランプ氏がゼレンスキー氏にこのことを「伝えた」のは、その後のことだった。
トランプ大統領は16日には、ゼレンスキー大統領が協議に参加するだろうと述べた。また、欧州諸国がウクライナ向けにアメリカ製の武器を購入することを認めるとも話した。
和平交渉が実を結び戦闘が終結するのはいつ頃だと思うかとBBCが質問すると、トランプ氏は「その実現に向けて取り組んでいる」と答えるにとどまった。また、ウクライナでの戦争の責任はジョー・バイデン前政権のウクライナ政策にあると批判した。
スターマー首相はテレグラフ紙への寄稿で、「和平のためならどのような代償を払ってもいいというわけではない」と書き、「ウクライナは交渉のテーブルに着かなくてはならない。そうでなければ、ウクライナは真の国家ではないというプーチンの言い分を認めることになってしまう」と指摘した。
「アメリカがタリバンと直接交渉し、アフガニスタン政府を排除したアフガニスタンのような状況を、再び引き起こすわけにはいかない」とも首相は書き、 「トランプ大統領もこれを避けたいと願っているはずだ」と述べた。
スターマー首相が指摘するアフガニスタンの状況は、トランプ政権の第一期目にアメリカが交渉した取り決めで、バイデン政権がそれを実施した。
スターマー首相は、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟する道は「不可逆」なもので、欧州諸国は「防衛費を増やし、同盟において従来より大きな役割を担う必要がある」とも書いた。
イギリスは現在、国内総生産(GDP)の約2.3%を防衛費に費やしており、これを2.5%に増やすと約束しているが、期限は示していない。
トランプ大統領はNATO加盟国に対し、GDPの5%を防衛費に充てるよう求めている。NATOのマルク・ルッテ事務総長は、加盟諸国はGDP比3%以上を防衛に充てるべきだという考えを示している。
2006年から2009年にかけて英陸軍トップだったダナット卿はBBCに対し、ウクライナの平和維持活動には最大4万人のイギリス軍兵士が必要になるものの、「そのような人員はまったく確保できていない」と話した。
ダナット卿は、平和維持部隊には計約10万人の兵士が必要となり、イギリスは「そのかなりの割合を提供しなくてはならないが、そんなことは本当にまったく無理だ」と述べた。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領が開催を呼びかけたパリでの欧州首脳緊急会合には、スターマー首相のほか、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペイン、オランダ、デンマークの首脳ら、欧州理事会議長、欧州委員会委員長、ルッテ事務総長らが出席する予定。
スターマー首相;画像はネットから借用