(CNN) ウクライナのゼレンスキー大統領は15日、ドイツで開催されているミュンヘン安全保障会議での演説で、米国が欧州への軍事支援を保証する時代は終わったと警告し、「欧州統一軍」の創設を呼び掛けた。
ウクライナでは、トランプ米大統領とプーチン・ロシア大統領による先日の電話協議を受け、和平交渉の場から除外されるとの懸念が強まっている。
ゼレンスキー氏は演説で「トランプ氏から数日前、プーチン氏とのやり取りを聞いた。トランプ氏はその中で、交渉の場に欧州が必要だとは一度も言わなかった。これが多くを物語っている」と語り、「米国が昔から欧州を支援してきたというだけの理由で、支援を続ける時代はもう終わった」と主張した。
同氏はまた、ウクライナでの戦争終結を掲げるトランプ氏が自身より先にプーチン氏と電話で協議したことに「不満」を表明し、トランプ氏との会談もプーチン氏に先を越された場合は「さらに危険」なことになると警告した。
さらに、14日に同会議で演説した米国のバンス副大統領が欧州の同盟諸国に対する批判に終始し、ウクライナ和平にはほとんど言及しなかったことを指摘。「過去数十年にわたった欧米間の関係が終わろうとしていることを、バンス氏が明確に示した。欧州は変化に対応しなければならない」「欧州を脅かす問題で、米国がノーと言う可能性を否定できない」として、欧州統一軍の創設を提案した。
「ウクライナは自国の関与なしで頭越しに成立した交渉を断じて受け入れない。同じルールが欧州全体にも適用されるべきだ」とも主張し、「ウクライナ抜きでウクライナのことを決めてはならない。欧州抜きで欧州のことを決めてはならない」と強調した。
(ブルームバーグ): バンス米副大統領は14日、ミュンヘン安全保障会議でのスピーチで、欧州の指導者らが民主主義の価値観を損ねていると非難した。
トランプ米大統領と側近が欧州連合(EU)に対して抱いている敵意を露わにした、激しい攻撃だった。トランプ氏らはEUを、米企業を抑制する「大きな政府」の象徴と見なしている。
バンス氏の演説は、欧州の目を覚まさせた。エストニアのツァフクナ外相は「存亡に関わる問題だ」と、ミュンヘンでインタビューに答えて述べた。フランスのマクロン大統領は、対応策を練るために欧州の首脳による緊急会議のを招集しようとしている。
バンス氏は、第2次世界大戦から1990年代のバルカン紛争まで、米国は必要とあればいつでも介入してくれるという欧州の幻想を打ち砕いた。
バンス氏は「現在の欧州を見ると、冷戦の勝者たちの一部には何が起きたのかよく分からない」と述べた。ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の党首に会うために退席し、欧州の主流派政治家を軽視する姿勢を見せつけた。
既にロシアとの交渉に入ろうとしているトランプ氏とプーチン氏の間で合意が成立した場合に備え、欧州はウクライナの安全保障計画について合意するための駆け引きを繰り広げている。トランプ氏は早ければ今月中にもロシアのプーチン大統領と会談する予定だ。
今年のミュンヘン会議に集まった欧州政府関係者の多くが懸念しているのは、トランプ氏がウクライナへの支援を後退させることで、北大西洋条約機構(NATO)の東部国境防衛の意思をプーチン氏に探らせようとしているのではないかという点だ。
欧州では長年、共通の防衛戦略の必要性について多くの議論がなされてきた。マクロン氏は欧州の能力強化の必要性を最も強く訴えていたが、進展することはなかった。
バンス氏が演説した翌日の15日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、戦争終結計画についてトランプ氏と話し合った際に「トランプ氏は一度も、協議のテーブルに欧州が必要だとは言わなかった」と語った。
「これは多くのことを物語っている。常にそうしてきたからというだけの理由で米国が欧州を支える時代は終わったのだ」と述べた。
ゼレンスキー氏とトランプ陣営の両方から話を聞いた欧州の関係者は、ウクライナを巡る決着は数カ月以内に訪れる可能性があると言う。
ロシアは既に一流の交渉人たちを招集し、待ち構えている。欧州は、米国が既に譲歩し過ぎており、問題は解決済みと宣言して、そのしわ寄せを欧州に押しつけようとしているのではないかと懸念している。
原題:Trump Is Rushing Toward a Deal With Putin as Europe Left in Dust(抜粋)
--取材協力:Daryna Krasnolutska、Andrea Palasciano、Patrick Donahue.
More stories like this are available on bloomberg.com
©2025 Bloomberg L.P.
[ミュンヘン 15日 ロイター] - トランプ米政権のウクライナ担当特使ケロッグ氏は15日、欧州諸国がウクライナ和平交渉のテーブルにつくことはないと発言した。
ドイツで開催されたミュンヘン安全保障会議で語った。
ケロッグ氏は、ウクライナとロシアの協議では米国が仲介役を務めると発言。欧州諸国が交渉に参加することはあるかとの質問に「私は現実主義者だ。それはないと思う」と述べた。
同氏はその後のイベントで「欧州の利益が考慮されず、活用されず、開発されない」ことを意味するものではないとし、欧州への配慮を示したが、欧州諸国は和平交渉から締め出されることは受け入れられないと反発している。
フィンランドのストゥブ大統領はミュンヘンで記者団に「ウクライナやウクライナの将来、欧州の安全保障体制について、欧州抜きで議論や交渉を行うことはあり得ない」とし「これは欧州が行動を共にする必要があることを意味する。欧州は言葉よりも行動が必要だ」と述べた。
欧州のある外交官によると、米政府は事前に欧州諸国に質問状を送り、どの程度の兵力を配備する用意があるか尋ねていたという。
フランス大統領府の関係者は15日、この問題を巡って欧州諸国の非公式会合を開催する可能性を同盟国と協議していることを明らかにした。
北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長も、欧州がともに行動する必要があると訴えた。