
写真=『週刊朝日』(2月20日号)の「正社員切り」特集で相談センターがコメント
2008年の労働相談の統計まとめ
私たちNPO法人労働相談センターが昨年(2008年)中に受けた労働相談の統計をまとめましたので以下にお知らせいたします。
1.相談件数
08年1年間の相談(メール、電話、来所、ファックスなど)件数は4085件でした。前年(07年)の2914件と比べると増加しています。ただ、それ以前の年を見ると06年の4840件、05年の5646件、04年の5189件、03年の4670件と推移しています。ここから07年の件数がとくに激減し、08年もその傾向が若干続いていることがわかります。
これは大半の相談者が検索サイトを通して当センターのホームページにたどりついている現状から考えると、06年12月に当センターが使用していたプロバイダーの事業閉鎖=「検索サイトからのホームページ消滅」と「アクセス数の激減」が影響しているものと思われます。
2.相談の傾向
(1)非正規労働者からの相談増加
「パート」(4%)、「アルバイト」(6%)、「派遣」(10%)、「契約社員」(5%)、など非正規労働者からの相談が全体の26%を占めました。07年は23%、06年は22%、05年は19%と右肩上がりの傾向です。これは「派遣切り」「期間工切り」をはじめ非正規労働者が置かれている劣悪な雇用環境が背景にあります。
ちなみに正社員からの昨年の相談は全体の58%でした。正社員への解雇・退職強要など「正社員切り」も広がっています。
メール相談では雇用形態がほとんどわからないので「不明」が多くなっています。
(2)電話相談の増大
相談の形態はここ10年間、メールと電話がおおむね半々でしたが、昨年は電話が55%、メールが41%でメールと比べて電話での相談が大きく上回りました。
メール相談の場合に返答まで早くても数日かかるため、即応の回答が得られる電話相談に流れたものと分析しています。これは労働者が現在抱えている相談内容の緊急性と切実さを現しているものと考えています。
3.相談内容の特徴
(1)概要
08年の相談内容は「賃金」が第1位(23%)、「解雇・会社都合の退職」が第2位(16%)です。この順位はこの10年間で変わっていません。
(2)解雇・会社都合の退職の相談増加
「解雇・会社都合の退職」の相談は656件で、全体の16%を占めました。07年は406件で14%、06年は665件で14%です。率で見ると増加の動きを示しています。
これは昨年9月に米国のリーマンブラザーズ証券が破たんしたことに端を発する世界的な経済危機を受けて、日本で「派遣切り」「期間工切り」など非正規労働者の契約途中での解約・雇い止め、正社員への解雇・退職勧奨が相次いだことが影響していると考えられます。また、同じく昨年相次いだ大学生らに対する採用内定の取り消しもここに含まれています。
(3)いじめ・いやがらせの相談急増
「いじめ・いやがらせ」が過去最高の476件(12%)にのぼりました。07年の285件(10%)、06年の327件(7%)から見ても件数、率ともに急激に増加しています。「セクハラ」の相談も08年は61件、07年は42件、06年は58件と多くの件数が寄せられています。また、統計ではありませんが、「精神疾患(メンタルヘルス)」を抱えている労働者からの相談が目立っています。
これらはいずれも職場環境の悪化が急激に進んでいることを示しています。労働組合の弱体化(組織率の低下や「御用組合」化など)により経営者や上司の力が相対的に強くなりすぎていること、雇用形態の多様化(非正規雇用の増加)や成果主義の導入、過剰な売上ノルマなどにより労働者の間で競争・分断が起きていること、職場にストレスが充満していること、弱い立場の労働者にしわ寄せが集中していることなどを背景にあげることができます。
(4)サービス残業と有給休暇の相談が高位定着
昨年を含めて労働条件の基本的なバロメーターである「サービス残業」させられているという相談と「有給休暇・休日」の取得ができないという相談がいずれも高位に定着しています。
サービス残業の相談は08年が497件(12%)、07年が332件(11%)、06年が598件(12%)、05年616件(11%)、04年が422件(8%)です。
有給休暇・休日の相談は08年が392件(10%)、07年が252件(9%)、06年が581件(12%)、05年が548件(10%)、04年が454件(9%)です。
サービス残業や有給休暇を与えないのは言うまでもなく労働基準法違反です。こうした相談がいっこうに減らないのは、いかに職場で違法行為が横行し労働者が無権利状態に置かれているのかを明らかにしています。
なお、社会問題となった「名ばかり管理職」については統計上、昨年2月からですが113件(3%)の相談が寄せられたのもひとつの特徴です。
世間一般に知らせる為にも、是非とも口コミが必要だと思います。
新聞などのマスメディア以外に、コミュニティラジオや地域掲示板の活用での草の根活動も必要かも知れません。
以前、大学院の時代にボランティアで労働相談の活動をさせていただいた中井です。
労働相談の数が、大分増えてるようですね。
私も、仕事を始めてからは、なかなかお手伝いができていないのですが、これからは、時間があるときにはなるべくお手伝いをしたいと考えております。
働いてみて分かることは、職場では労働条件などの話を相談する所がない、ということです。
そんな「物言えぬ職場」の環境を少しでも改善できたらな、と思っています。
よろしくお願いします。