蔵書目録

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「全国民・全軍将士刮目して視よ!!」 (1936.2)

2011年09月17日 | 二・二六事件 2 怪文書

 「核心号外」とあり、奥付には、「昭和十一年 〔一九三六年〕二月三日発行 直心道場内 発行所 核心社」などともある。両面刷り1枚、23センチ。発禁処分:二月二日。

 全国民・全軍将士刮目して見よ!! 

     相沢事件公判劈頭 満井中佐の重大提言

  皇軍未曾有の不祥事と陸軍当局より宣伝せられ全国民、全軍の注視の的たりし、永田軍務局長斬殺事件被告相澤三郎中佐の第一回公判は、去る一月二十八日午前十時より、東京赤坂第一師団軍法会議法廷に於いて開始された。新聞紙所報の如く、開廷劈頭、特別弁護人満井中佐より重大なる提言を致します。

 第一 本件予審調書並公訴状を見るに本事件の被告が果して何人なるや極めて曖昧不明瞭である。抑々皇軍の本質上将校がその公人たるの資格に於て為したる行為と、私的個人としての為せる行為とは厳然として之を区別して取扱はれるべきものである。
〔以下省略〕

 第二 本事件の原因動機たるや、元老重臣、財閥、政党、官僚等軍部以外の不純なる支配勢力によりて皇軍本然の統帥が撹乱左右せられ、遂に統帥権の干犯をも惹起するに至りたるため、皇軍を此の危機より救出擁護すべく已むを得ざるに出でたるものである。
〔以下省略〕

 第三 本件の公訴に於ては被告のなしたる行為に関し誠に重大なる疑惑を有する。
〔以下省略〕

 (以上)

 誠に重大至極の提言である。然るに判士杉原法務官は、そのまゝ公判を続行すべきことを判士長に内申したるものの如く、判士長佐藤少将は、直ちに公判の続行を宣し、検察官島田法務官をして公訴事実の説明を開始せしめたのである。依つて満井中佐は再度起立し、『極めて重大なる事柄なるにより更に判士各位一同にて慎重審議せらるべき』旨を提言した。判士長は漸く『検察官の公訴事実の説明後、休憩中に審議すべき』を告げて検察官をして公訴事実の説明を続行せしめた。二十分の休憩後意外にも判士長は『公判を続行する』と宣したのであつた。
〔以下省略〕

 教育総監更迭に際する統帥権干犯嫌疑の要点

一、「省部関係業務担任規定」は統帥権の確立保全のために、大正二年八月勅定を経たるものであり、明に軍令がある。
 註。軍令ニ関スル件(明治四十年九月十二日軍令第一号)
  第一條 陸海軍ノ統帥ニ関シ勅定ヲ経タル規定ハ之ヲ軍令トス
〔以下省略〕



 雑誌『核心』

 ○ 第二巻 第十一号   昭和十年 〔一九三五年〕 十一月一日発行。22.1センチ、68頁。発禁:十一月五日。
 
   下は、内容の一部である。

 ・国体明徴と粛軍徹底への要望‥‥高山益人
 ・物心両面の一大整理‥‥東山達〔歩五末松太平〕
 ・対支政策と北支問題‥‥杉田省吾〔独守六後藤四郎〕
 ・一青年将校の言‥‥木村晃〔歩二五片岡俊郎〕

 ※上の〔〕内の人名は、「陸軍一部将校ノ動静概況」其十三(『二・二六事件研究資料Ⅲ』所収)のある情報による。村中孝次が投稿者に迷惑をかけないことを条件として投稿させたものであるという。

 ○ 第三巻 第一号 一二月合併号  昭和十一年 〔一九三六年〕 二月一日発行。22.1センチ、68頁。発禁:同日。

   顧問には、頭山満・内田良平等4人、核心社同人には、大森一声・渋川善助・杉山省吾等18人の名が見える。
 
 下は、「巻頭言」の一部。

 皇国の運命の懸れる年と言はれたる昭和十一年は、外は海軍々縮会議の決裂、対支問題、内は議会の解散、相沢中佐の公判を以てその幕を切って落とされ、新春早くも前途に孕まれたる危機の容易ならざるものを予想せしめる

 下は、その内容の一部。

 ・維新決定への妙機‥‥大森一声
 ・内外情勢と相沢中佐公判の維新的意義‥‥武内一鷹
 ・時局寸観‥‥竜落子
 ・相沢中佐の片影‥‥翠谷山人 〔33-41頁まで9頁〕
   一.辱知一後輩の所感
   二.後輩令弟の手紙
   三.後輩令兄の手紙
   四.辱知一青年の手紙
   五.今泉看護婦の手紙
   六.在福山一老人の手紙

雑誌『皇魂』

 ○ 第二巻第九号(通巻十六号)(臨時増刊)  昭和十年 〔一九三五年〕 八月五日発行 70頁。

  一、一体『むすび』への契機‥‥巻頭
  二、創刊一周年に際し維新運動に於ける本誌の新たなる使命を宣明す
  三、後藤内閣の具備すべき資質
  四、皇国政治の原理に関する一考察、
  五、天皇親政の体様と維新原則綱領問題
  六、『国体明徴』問題の発展と軍部の動向、
  七、山崎慶大教授の「天皇機関説の憲法学的批判」を読む
  八、所謂『七・一六異変』教育総監更迭と三長官制
  九、国体明徴、
  十、神国。神軍。神将。神兵。
  十一、対ソ連問題管見
  十二、共匪と対ソ問題
  十三、維新先覚者の心構、
  十四、皇魂現役二将校の免官と林陸相の所謂軍の統制
 
  附録の「軍首脳部一般の政治的態度と皇魂軍人の任務」は、中村義明が昭和九年六月に特志の方に贈呈した非売小冊子『軍首脳部の政治的態度と中堅少壮軍人の任務』に若干の補訂を加えたものであるという。

 ○ 第二巻第十五号(通巻二十二号) 昭和十年〔一九三五年〕十二月二十日発行 40頁。

  一、唯。寸断
  二、問題の北守南攻論
  三、みこと、いともかしこし。-将校の本務
  四、皇国精神の十全徹底発揮に直進せよ!
  五、所謂「国防」の真意義
  六、御統帥のXXX相沢三郎中佐
  七、故梅鉢藤田両君を偲
  八、時事短評

  上の「御統帥のXXX相沢三郎中佐」は、「北満第一線に在る皇軍将校有志の署名になる一文を転載せるもの」である。

 ○ 第三巻第二号(通巻二十三号)【臨時増刊】 昭和十一年〔一九三六年〕一月二十三日発行 発禁:二十五日 20頁。

  一、人の和‥‥巻頭
  二、相沢中佐の最も憂慮せる事
  三、相沢中佐を打診するもの
  四、相沢中佐の公判と注意すべき政治的策動
  五、相沢中佐の公判は斯く指導するを要す
  六、後藤内相に呈す、七、一木ー岡田ー若槻三氏の対議会観

  また、裏表紙の裏にある「相沢中佐の減刑運動に対する新日本国民同盟の態度の本質」には、「ロボット山科敏の名を以て刊行せる某々氏等の筆に成る「軍門派閥の抗争」をデマつた「皇軍一体論」並びにその続編「怪文書清算論」なる怪書のそれと同一のものであり、」などとある。


『粛軍ニ関スル意見書』 (1935.7)

2011年08月17日 | 二・二六事件 2 怪文書

 

 昭和十年七月十一日    (以印刷代筆写)
    肅軍ニ關スル意見書
         陸軍歩兵大尉 村中孝次 陸軍一等主計 磯部淺一

     肅軍ニ関スル意見 〔下は、その一部〕

實ニ皇軍最近ノ亂脈ハ所謂三月事件、十月事件ナル逆臣行動ヲ僞瞞隠蔽セルヲ動因トシテ軍内外ノ攪乱其極ニ達セリ 然モ其ノ思想ニ於テ其ノ行動ニ於テ一點ノ看過斟酌ヲ許スヘカラサル大逆不逞ノモノナリシハ世間周知ノ事實ニシテ附録第五 「○○少佐ノ手記」 ニヨリテ其ノ大體ヲ察シ得ヘシ 而シテ 上ハ時ノ陸軍大臣ヲ首班トシ中央部幕僚群ヲ網羅セル此ノ二大陰謀事件ヲ皇軍ノ威信保持ニ藉口シテ掩覆不問ニ附スルハ其ノ事自體、 上軍御親率ノ 至尊ヲ欺瞞シ奉ル大不忠ニシテ建軍五十年未曾有ノ此ノ二大不祥事件ヲ公正嚴肅ニ處置スルコトヲ敢テセサリシハ實ニ大權ノ無視、「天機關説」 ノ現實ト謂フヘク斷シテ臣下ノ道股肱ノ分ヲ踏ミ行ヘルモノニ非ス 軍内攪乱ノ因ハ正ニ三月、十月ノ兩事件ニアリ而シテ實ニ今日伏魔殿視サルヽ軍不統制ノ果ヲ結ヘルモノト謂ハサルヘカラス 之レヲ剔抉處斷シ以テ懲罰ノ適正ヲ期スルハ軍肅清ノ爲メ採ルヘキ第一ノ策ナリト信ス
爾餘ノ些事ハ是レヲ省畧ス
 作冬以来問題トナリシ所謂十一月廿日事件ニ對スル措置ニ至ツテハ最モ公正ヲ缼クモノト云ハサルヘカラス最近ニ於ケル訓示、諭告ハ總テヲ靑年将校ノ妄動ニ歸スト雖モ統制破壊ノ本源ハ實ニ自ラ別個ニ存在セリ
 以下十一月事件ニ關シ歪曲セラレ陰蔽セラレアル經緯ヲ明カニシ以テ御高鑑ニ資セントス
別紙添附セル左記附錄ニ就キ眞相御究明ヲ冀望ス
 一、附錄第一 陸軍大臣及第一師團軍法會議長官宛上申書
 二、附錄第二 片倉少佐、辻大尉ニ關スル告訴状中告訴理由
 三、附錄第三 片倉少佐、辻大尉ニ對スル告訴追加(以上村中大尉)
 四、附錄第四 告訴狀竝陳述要旨(磯部主計)
以上ヲ以テ事件推移ノ眞相梗概ヲ明カニシ得ヘシ 實ニ十一月廿日事件ニ關スル限リ軍司法權ノ運用ニ於テ懲罰ノ適用ニ於テ共ニ公明適正ヲ缼キ將又公的地位ヲ擁シテ擅權自恣ノ策謀妄動スルモノアリ軍内攪乱ノ本源ハ實ニ中央部内軍當局者ノ間ニ伏在スルモノト斷言スルモ敢テ過言ニアラサルヲ信ス
切言ス 皇軍現下ノ紛亂ハ三月件、十月事件ノ剔抉處斷ト兩事件ノ思想行動ヲ今ニ改悛自悔スルコトナクシテ陰謀ヲ是レ事トスル徒ノ艾除トヲ断行スルニ非スンハ遂ニ底止収拾スル所ヲ知ラサルヘシ 

 (附録第一) 上申書 陸軍歩兵大尉 村中孝次
 (附録第三) 片倉少佐 辻大尉 ニ對スル告訴狀中告訴理由 昭和十年二月七日獄中ヨリ呈出 同 二月十九日受理 村中大尉
 (附録第三) 昭和十年四月二十四日 片倉少佐 辻大尉 ニ對スル告訴追加 村中大尉
 (附録第四) 告訴状及陳述要旨 磯部主計
 (附録第五」 昭和七年一月 ○○少佐手記 所謂十月事件ニ關スル手記

 また、『昭和十年以降頒布セラレタル不穏文書調』の「一、真崎教育総監事件ニ関スルモノ」に、次の記載がある。

  番号 題名 納本又ハ届出ノ有無 発行責任者ノ住所氏名記載ノ有無 印刷形式 内容ノ概略

  23、粛軍ニ関スル意見書 ナシ ナシ 村中孝次 磯部浅一 パンフレット 活版

   所謂軍部内発生ノ三月事件十月事件並ニ十一月事件ノ内容ナルモノヲ暴露的ニ記述シ全般的ニ軍部内ニ派閥ノ存在アリテ対立抗争セルコトヲ捏造的ニ詳述セルモノ

 発禁処分は、昭和十年八月十六日。
 
 なお、この怪文書について、『二・二六事件研究資料Ⅲ』に、「七月二十三日頃更に前記意見書ヲ二千五百部活版印刷ノ上全国同志宛郵送ス」とある。